タバコ原因?で憩いの池の金魚ほぼ死滅 関係者落胆も復活の動き

タバコ原因?で憩いの池の金魚ほぼ死滅 関係者落胆も復活の動き

https://news.biglobe.ne.jp/topics/domestic/0819/68022.html

2019/8/19 07:30 (JST)

 JR加古川駅(兵庫県加古川市)南側の「ベルデモール商店街」に40匹以上の金魚が泳いでいた池がある。子どもたちがのぞき込むなど憩いの場所として親しまれてきたが、今月上旬、ほとんどが死滅してしまった。原因ははっきりせず、世話を続けてきた商店主の男性(78)は落胆するが、「復活させたい」との願いに応えて金魚を持ってきてくれる人もおり、少しずつ以前の光景が戻ってきている。(小森有喜)

 池は横約3メートル、縦約2メートル。商店街が改装された1989年に設置され、池の前で履物店を営む男性が金魚の飼育を始めた。水草を植えてニシキゴイも放し、餌やりも欠かさなかった。多い時は70匹以上が泳ぎ回り、買い物客や子どもたちがのぞきこんで見守る、そんな地域の憩いの場だった。

 異変は今月初旬。男性が午前9時ごろに店を開けようとして、2匹を残してほかの魚が浮かんでいるのに気付いた。水は地下水を使い、循環させているため水温は低めに保たれているという。男性は「去年の夏も無事だった。暑さが原因とは考えられない。大事に育ててきたから本当にショック」と肩を落とした。

 ただ、池の中や周りにはタバコの吸い殻が散乱していた。原因かどうかはわからないが、男性は「タバコ・クスリなど入れたのはどこのだれだ」と書いた張り紙を池のオブジェに貼り付けた。すると池周辺のごみは激減。13日には協力に感謝する内容に書き換えた。

 騒動後、自宅から金魚やニシキゴイを持って来てくれる人もおり、今は成魚十数匹が泳いでいる。長男(2)と池の様子を見に来た女性(29)=同市=は「子どもも楽しみにしているから、また魚がたくさん泳ぐ池に戻ってほしい」。

 男性はさらに魚を増やすことを考えており、水草も植え替えるという。「魚を持ってきてくれる人には感謝の気持ちでいっぱい。大切に育てていきたい」と語った。

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「ポイ捨てタバコ」から出る「ニコチン」の凶悪さ

「ポイ捨てタバコ」から出る「ニコチン」の凶悪さ

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20190813-00138181/

石田雅彦 | ライター、編集者
8/13(火) 9:18

 受動喫煙対策が厳しくなれば屋外で喫煙するケースが増え、ポイ捨てタバコも増えていく危険性がある。加熱式を含めたポイ捨てタバコは、環境中で長く残り、そこから出る有害物質が環境を汚染する。

ポイ捨てタバコが引き起こす問題

 先日、海外メディアにショッキングな映像が掲載された。米国フロリダのビーチで、クロハサミアジサシという海鳥の親がヒナにタバコの吸い殻を与えているというものだ。また、兵庫県の商店街で池に飼っていた金魚などが、ほぼ全滅するというニュースが話題になった。この被害の原因は特定できていないが、この金魚はポイ捨てタバコを防ぐ目的で飼われていたという。

 毎年、世界で約6兆個のタバコの吸い殻が生まれ、そのうちの4兆5000億個がポイ捨てされ、タバコの吸い殻やタバコ由来の廃棄物は世界の海岸で清掃された総廃棄物の19~38%と見積もられている(※1)。1年のタバコ生産量の3/4が吸い殻としてポイ捨てされると換算すれば、日本の場合は年間約1091億本(2017年の販売数量1455億本)がポイ捨てされていることになる。

 加熱式タバコの多くを含むタバコの吸い殻は、主にタバコ葉の部分とフィルター部分に分けられる。ポイ捨てされると、雨水で濡れたり河川へ流される間にタバコ葉の部分は拡散し、フィルター部分だけが切り離されて残る。このタバコ・フィルターはそのままの形で環境中に存在し続け、2年経っても38%ほどしか分解されず、完全に分解されるまでには2.3~13年ほどかかるという研究がある(※2)。

 軽くて小さなタバコの吸い殻は、ポイ捨てされると雨水で流されたり風で吹き寄せられるなどして排水溝のスリットから下水へ流れ込み、河川へ流れていく。そして海へいたり離岸流で沖合へ漂流していったり海岸へ打ち上げられる。つまり、我々が海岸で見かける吸い殻のほとんどは、街でポイ捨てられ、下水から河川を通ってやってきたものだ。

 タバコ自体に健康への害があるように、廃棄物である吸い殻には当然だがニコチンのほか、ヒ素、鉛、銅、クロム、カドミウム、発がん性物質を含む多環芳香族炭化水素などのひじょうに毒性の高い物質が濃縮されている。

ニコチンの高い毒性

 ニコチンといえばタバコにつきものの依存性薬物だが、殺虫剤に使われるように毒性も強い。ヒトの大人の経口致死量は40~60mgであり、環境中に大量に存在すれば生態系に大きな悪影響を及ぼす。

 ニコチンの生物への影響を調べた研究(※3)によれば、1リットル当たり10~100μgの濃度でオオミジンコ(Daphnia magna)の繁殖や生育に影響を及ぼし、性決定などに作用する内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)であることがわかったという。

 ニコチンは揮発性が低く水中で安定的なため、そのほとんどは水中に存在する。いくつかの研究では、1リットル当たり0.6~32μgのニコチンが環境中に存在すると見積もられている(※4)。また、ニコチンは喫煙者や受動喫煙者の体内で代謝されるとコチニンや3-ヒドロキシコチニンなどに変わり、こうした物質も尿などから環境中へ大量に放出されていると考えられる。

 ドイツのベルリンでタバコの吸い殻を採取し、ニコチンの濃度と毒性を調べた研究(※5)によれば、降雨による水たまりにタバコの吸い殻をポイ捨てするとニコチンが27分で半分の量という具合に急速に溶出し、1リットル当たり2.5mgの濃度となったという。これは生態系への影響がないとされる濃度(予測無影響濃度、Predicted No Effect Concentration、PNEC)を超える値だ。つまり、たった1本のタバコの吸い殻でも1000リットルの水を危険な数値まで汚染するということになる。

 日本でもポイ捨てタバコから出る有害物質を調べた研究がある。これは信州大学の研究グループによる調査(※6)で、大学周辺の道路(3.2kmの周回)を歩き、ポイ捨てゴミの分布地図を作成して1ヶ月間の1km当たりに採取されたポイ捨てタバコのゴミから何mgの汚染物質が検出されるかを調べた。

 すると、ヒ素、ニコチン、重金属類、多環芳香族炭化水素といった有害物質が検出された。中でもヒ素が出たことが重要で、環境基準(1リットル当たり0.01mg以下であること)以上の1リットル当たり0.041mgという量のヒ素が出ている。また、重金属類の含有量としては、1ヶ月間の1km当たりカドミウム0.02mg、銅1.7mg、鉛0.59mg、クロム0.15mgが検出されたという。

タバコ会社の責任

 そもそも、タバコのフィルター自体にも毒性があるようだ。米国のサンディエゴ州立大学などの研究グループが、タバコを吸っていないフィルター単独、タバコを吸った後のフィルター単独、タバコを吸った後のタバコ葉とフィルターで魚に対する毒性を調べてみたところ(※7)、いずれでも毒性が表れ、1リットル当たりの吸い殻の数が増えるほど生存率が悪くなり、未使用のフィルターでも毒性があった。

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神奈川県鎌倉市の海岸で拾ったタバコの吸い殻。加熱式タバコのものが混じっているが、左の黒いプラスチックはプルーム・テックのカプセルだ:写真撮影筆者

 最近は加熱式タバコのポイ捨てが増えているが、その悪影響も無視できなくなっている。加熱式タバコからも、ニコチン、アクロレイン、ホルムアルデヒド、アセナフテンといった発がん性を含む有害物質が検出されているからだ。また、加熱式タバコの中には、プルーム・テックなどプラスチック製のカプセルを使うものもあり、海岸でゴミ拾いをしていると特徴的な黒いカプセルをよく見かけるようになった。

 タバコ会社やタバコ販売組合などは街の環境美化の名目でポイ捨てタバコを拾ったりポイ捨てを防ぐ運動をすることもあるが、タバコ会社の拡販PRに利用されている側面が大きい。環境汚染物質を製造販売している企業がポイ捨ての責任を喫煙者に転嫁し、あたかも社会貢献活動をしているかのように振る舞う欺まん性は昔からのものだ。

 やはり、タバコ会社に対し、使い捨てフィルターが付いたタバコ製品の製造販売を規制し、環境汚染の責任を取らせるために環境税のような名目でタバコの価格に負荷をかける必要がありそうだ。

※1:Thomas E. Novotny, et al., "Tobacco Product Waste: An Environmental Approach to Reduce Tobacco Consumption." Current Environmental Health Reports, Vol.1, Issue3, 208-216, 2014

※2-1:Giuliano Bonanomi, et al., "Cigarette Butt Decomposition and Associated Chemical Changes Assessed by 13C CPMAS NMR." PLOS ONE, doi.org/10.1371/journal.pone.0117393, 2015

※2-2:Francois-Xavier Joly, et al., "Comparison of cellulose vs. plastic cigarette filter decomposition under distinct disposal environments." Waste Management, Vol.72, 349-353, 2018

※3:Ana Lourdes Oropesa, et al., "Toxic potential of the emerging contaminant nicotine to the aquatic ecosystem." Environmental Science and Pollution Research, Vol.24, Issue20, 16605-16616, 2017

※4-1:Marianne Stuart, et al., "Review of risk from potential emerging contaminants in UK groundwater." Science of The Total Environment, Vol.416, 1-21, 2012

※4-2:Ivan Senta, et al., "Wastewater analysis to monitor use of caffeine and nicotine and evaluation of their metabolites as biomarkers for population size assessment." Water Research, Vol.74, 23-33, 2015

※5:Amy L. Roder Green, et al., "Littered cigarette butts as a source of nicotine in urban waters." Journal of Hydrology, Vol.519, 3466-3474, 2014

※6:Hiroshi Moriwaki, et al., "Waste on the roadside, ‘poi-sute’ waste: Its distribution and elution potential of pollutants into environment." Waste Management, Vol.29, Issue3, 1192-1197, 2009

※7:Elli Slaughter, et al., "Toxicity of cigarette butts, and their chemical components, to marine and freshwater fish." Tobacco Control, Vol.20, Suppl1, i25-i29, 2011

 

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ルノアールにサイゼリヤまで…外食チェーン「完全禁煙化」最前線

ルノアールにサイゼリヤまで…外食チェーン「完全禁煙化」最前線

https://wezz-y.com/archives/68486

2019.08.17

 受動喫煙対策の強化にむけて、喫煙に関するルールを厳格化する改正健康増進法が、2020年4月に全面施行される。それに先駆けて、多くの外食チェーンが完全禁煙化へと舵を切り始めている。

 串カツ専門チェーンである「串カツ田中」は、2018年6月にほとんどの店舗を全席禁煙とした。喫煙利用者も多い居酒屋としては、非常に珍しい取り組みであり、大きな話題を呼んだことを記憶している方も多いだろう。
 
 今年6月1日からは、人気ファミレスチェーン「サイゼリヤ」も全店舗の全席禁煙化を実施。さらには、「喫茶室ルノアール」を運営する銀座ルノアールも、2020年4月から紙巻きタバコの喫煙を禁止すると発表している。これまで喫煙者から愛されてきた喫茶チェーンだっただけに、その衝撃は相当なものだった。

 タバコを規制・禁止する方向へと傾く時代の流れは、加速しているように見える。外食チェーンに広まる禁煙化の波とその実態について、フードアナリスト協会所属のフードアナリスト・重盛高雄氏に聞いた。

重盛 高雄(しげもり・たかお)/フードアナリスト
ファストフード、外食産業に精通したフードアナリスト。ニュース番組、雑誌などに多数出演。2017年には「The Economist」誌(英国)から、日本のファストフード業界についてのインタビューを受けるなど、活躍の場を世界に広げている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社

禁煙化が飲食店に与えるメリットは大きい

 数々の外食チェーンが禁煙化に踏み切っているが、飲食店としては禁煙によってどんなメリットがあるのだろうか。

「タバコを吸わなければ空気が汚れないので、客にとっても従業員にとっても、店内環境がよくなるということは、もちろんあります。そのうえで強調したいのは、掃除など清潔環境維持の手間が大幅に省けるというメリットもあることです。喫煙者の多い店舗だと、例えばカーテンにたばこのニオイがついてしまったり、ソファーが焦がされてしまったり、掃除が大変な状態になってしまうことも多い。一方で、禁煙の店舗は、短時間できれいにすることができます。清掃にかかるコストは、喫煙か禁煙かで大きく変わるものなんです。

 また、飲食店へ子どもを連れていくことを考えた場合に、タバコを吸える環境だと好ましくないですよね。親としては、子どもにきれいな空気のなかで美味しいご飯を食べてもらえるというメリットは大きいでしょう」(重盛氏)

 こうしたメリットの大きさからか、意外な外食チェーンも禁煙化に乗り出しているようだ。

「大手コーヒーチェーンの『ドトール』が、禁煙店舗にトライアルしていることは驚きです。これまで、ドトールは駅近などの好立地でタバコが吸えるということが強みでした。ところが、その戦略を少し変えてきているのかな、と感じます。禁煙店舗では、従来の店舗よりも女性客が多いという印象を受けます。今後の禁煙化については、企業として女性客の増加をどう評価するのかによって、変わってくるのではないかと思います。

 また、同じコーヒーチェーンの『サンマルク』も、タバコを吸える席、吸えない席と分煙化することによって、非喫煙者の取り込みを図っています。ただし、積極的な一手ではなく、売上が思うように上がらないなかで時代の流れを汲み、苦肉の策として講じているという見方もできるでしょう」(重盛氏)

「タバコを吸えること」だけをウリにしては本末転倒

 重盛氏は、これまで多くの外食チェーン店が喫煙をウリにしてきたことについて、問題点を指摘する。

「これまでは、『タバコが吸いたい』という利用者の声に応えて、喫煙できる環境を競って作ってきたという側面がありました。しかし、ファミレスや居酒屋、喫茶店という飲食店が、『タバコを吸えること』自体を店の持ち味、その店の価値にしてしまっていると、少し困ったことになるのではないかと考えています。

 やはり居酒屋ならば、美味しい食べ物と美味しいお酒を味わえて、楽しく過ごせる場所であることによって、より客が来るというような図式にすべきでしょう。実際に、居酒屋業界のトレンドも、そのように変わってきているなと感じます」(重盛氏)

 タバコ離れが進むなかで、飲食店では美味しい食事を楽しみたいという層が増えてきているとのこと。意外なことに、その傾向はコンビニのコーヒーに表れていたという。

「喫煙のできるコーヒーチェーンでは、いくら美味しいコーヒーを淹れていたとしても、店内に漂うタバコの煙でその香りや味がスポイルされていた部分がありました。そう考えると、コンビニのコーヒーがあれほど流行った理由のひとつには、イートインでタバコが吸えないことにあったとも言えるのではないでしょうか。つまり、タバコの煙のない環境で、そこそこの値段で美味しいコーヒーを楽しみたいという人が、徐々に増えてきているわけですね。

 コーヒーチェーンにしても、居酒屋にしても、提供する料理ではなく「タバコが吸えること」をウリにしている店が、まだまだ多いのは実状です。タバコが吸えることが唯一の付加価値となっているようでは、飲食店として本末転倒ですし、そうでもしないと売上が上がらないのならば、危機的な状態だと言わざるを得ません。料理の味を客に認めてもらって、来店してもらうという、本来の在り方に戻していかないといけないでしょう。

 フードアナリストとしては、その店が本来ウリとすべき料理の味や価格といった要素で他店と競ってもらい、利用者側から価値を見出してもらうことによって、来店客や売上が増えていくという構図になっていくことを強く願っています」(重盛氏)
 
 今後、飲食店の禁煙化はさらに進んでいくだろう。ものを食べる場所としては、正しい在り方といえる。しかし一方で、愛煙家の要望に応える場所をまた別に用意していくことも、必要なのかもしれないが……。

(文・取材=後藤拓也[A4studio])

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全面禁煙“一時停止” 熊本県免許センターが喫煙所を復活 ポイ捨て、後絶たず

全面禁煙“一時停止” 熊本県免許センターが喫煙所を復活 ポイ捨て、後絶たず

https://this.kiji.is/534182722537702497?c=92619697908483575

2019/8/14 10:30 (JST)

 健康増進法改正を受け、熊本県警は7月から敷地内を全面禁煙とした県運転免許センター(菊陽町)について、15日から来月15日まで一時的に、屋外の喫煙スペースを復活させる。駐車場などで喫煙する来庁者や吸い殻のポイ捨てが後を絶たず、改善したい考えだ。

 県警運転免許課によると、免許センターは3月から屋内を、改正健康増進法が施行された7月からは屋外に1カ所あった喫煙スペースも廃止し全面禁煙とした。しかし、屋外で喫煙し、吸い殻を植え込みや芝生に捨てる来庁者が目立ち、火災の危険性があるという。

 また、来庁者から「講習時間が長く、喫煙できないのはつらい」との意見が多数寄せられたほか、喫煙場所の問い合わせが7月だけで約320件に上っている。そのため廃止した屋外の喫煙スペースの再設置に踏み切る。

 同法は敷地内禁煙の対象施設でも、受動喫煙防止措置がとられた屋外の喫煙所であれば認めている。復活スペースは通常、人が立ち入れない場所なので、受動喫煙の心配はないという。同課は「1カ月間の状況を検証し、今後の方針を決めたい」としている。(丸山宗一郎)

(2019年8月14日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

 

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禁煙法の制定はあり得る? 高まる禁煙ムードと“国営”企業JTの思惑

禁煙法の制定はあり得る? 高まる禁煙ムードと“国営”企業JTの思惑

https://wezz-y.com/archives/68344

2019.08.10

 東京オリンピック開催前の2020年4月、改正健康増進法が全面施行される。

 今年7月1日から一部で施行されており、すでに学校、病院、行政機関の敷地内が原則禁煙となった。そして来年4月の全面施行によって、飲食店、オフィス、鉄道施設、ホテルのロビーなどの多くの人が利用する施設は、原則的に屋内禁煙となる。受動喫煙対策が強化されており、悪質な違反者には罰則が科せられる厳罰化された内容が話題となっている。

 こうした流れを受けてか、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険は、今年の4月から全社員に就業時間内の禁煙を求めているうえ、2020年の春入社の社員は喫煙者を採用しないと発表したことが物議を醸した。

 喫煙者にとっては、気軽にタバコを吸えない、就職もできない……という非常に世知辛い世の中になりつつあるが、今後タバコをめぐる社会事情はどのように変化していくのだろうか?
国立がん研究センターに所属し、著書『本当のたばこの話をしよう 毒なのか薬なのか』(日本評論社)も上梓している片野田耕太氏に解説してもらった。

片野田 耕太(かたのだ・こうた)
東京大学法学部を卒業後、同大学院医学系研究科に進学、脳科学の研究を行う。2005年より国立がん研究センター(旧国立がんセンター)研究員となり、たばこの健康影響とがんの統計の分野の研究活動に携わる。2017年より、がん統計・総合解析研究部長として、たばこ対策、がんの統計、がん教育など幅広い分野での研究活動を行っている。著書に『本当のたばこの話をしよう 毒なのか薬なのか』(日本評論社)などがある。
国立がん研究センター

かつては日本男性の80%がタバコを吸っていた

 まずは、過去と現在の喫煙率の変化について。

「JT(日本たばこ産業)全国喫煙者率調査によると、日本で喫煙率が一番高かったのは1965年で、男性の約80%が喫煙していたという報告があります。また、国民一人当たりの消費本数が一番高かったのは、総務省統計局の労働力調査のデータを見ると、1970年代後半の“年間約3500本”がピーク。そこから喫煙率は下がり続けています。

 ですが、60年代後半から70年代にかけては、喫煙率がピークであるのと同時に、明確に喫煙が健康被害を引き起こしている、と公表されてきた時代でもありました。1964年にアメリカの政府機関の公衆衛生総監(Surgeon General)が、たばこの健康リスクをまとめた報告書『喫煙と健康』を発表。これは政府関係機関が公にたばこと肺がんの因果関係を認めた事例で、喫煙者たちへの健康意識に大きな影響を及ぼしました」(片野田氏)

 こうした時代以前は、タバコの健康被害の意識はなかったのか?

「あるにはありましたが、タバコを売る側の戦略として“健康被害は明確ではなく、反対意見もある論争状態だ”という風潮を維持してきたことと、タバコ業界がスポンサーとなって、映画やテレビで“喫煙は大人の階段”的イメージを流布したことも、禁煙意識の低さの要因だったと思います。

 日本でも欧米諸国同様、テレビの影響もあり、70年代を中心に不良が大人ぶる道具としてたばこがもてはやされました。ですが、2003年に施行された健康増進法の影響で、学校で防煙教育をするようになり、“タバコを吸うのはよくないこと”という意識が広まり、喫煙率は下がってきたのです」(片野田氏)

 そもそも、喫煙は健康にどのようなリスクをもたらすものなのだろう。

「肺、食道、胃、肝臓、膵臓、膀胱がん、さらに心臓病や脳卒中にも悪影響があります。がん以外でみなさんにあまり周知されてないリスクを挙げるとすると、糖尿病を患う可能性も高めているんです。これだけ多岐に渡る健康被害がある原因は、たばこが何か一つの成分を抽出しているのではなく、何千種類もの化学物質の集合体を燃やしているからなのです。さらに、ある種自己責任である喫煙者本人だけではなく、“受動喫煙”にも肺がん、虚血性心疾患、脳卒中のリスクがあります」(片野田氏)

禁煙先進国オーストラリアでも非喫煙率は約90%、日本は約70%

 禁煙の気運が高まるなかで、さまざまな政策や措置が取られている。

「禁煙措置の流れが加速してきたのは、WHOによって2005年に発効された『たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約』に日本も参加したことが大きいです。値上げ、公共の場所の禁煙、たばこのパッケージに禁煙を促す注意文を入れるなど、その条約内容はさまざま。日本ではまだですが、広告やスポンサーシップの規制も条約に含まれています。日本ではいまだにコンビニでたばこの販売促進が堂々と行われているなど、国際基準には及ばないですが、こうした条約の制定が日本での禁煙指向への大きな流れを作ったと言ってよいでしょう。

 また、2020年の改正健康増進法で罰則が設けられることになったのも大きいです。さらに東京都では、働く人の健康リスクを考慮し、“従業員を雇っている飲食店は原則禁煙にしなければならない”という条例も作りました。これにより東京はほとんどの店が禁煙になる可能性があります。例外的にカフェチェーン店の喫煙ルームなどは残してもいいそうですが、そこも以前のような飲食は不可となり、立って吸う“喫煙スペース”的なものになるとのこと。禁煙姿勢は徹底的です」(片野田氏)

 規制を進めていく先には、“喫煙禁止法”の制定もあり得るのだろうか?

「実は世界でもたばこの非合法化はブータンくらいで、禁煙先進国であるオーストラリアやスウェーデンでも非喫煙率は90%ほど。世界的な禁煙ブームとなっているものの、ほとんどの国が“禁止”までは踏み切っていないのです。先進国の中では禁煙後進国と言える日本では、非喫煙率は約70%。そんな状況で急に完全禁煙にしてしまえば、おそらくは密輸や裏取引が蔓延し、反社会勢力の資金源になってしまう恐れも大いにあるでしょう。

 また、別の視点から言えば、たばこ税による年間の税収は約2兆円もあることが、政府がタバコを全面禁止にできない理由となっています。さらに現・財務大臣の麻生太郎氏はJT株の約3分の1も保有する大株主で、その配当金は年に約1000億円にものぼると言われています。そうした思惑が絡み合い、国はタバコ産業を手放せないのでしょう。これには昭和59年に制定された『たばこ事業法』という法律も関係しています。この法では、“たばこ産業の健全な発展・たばこ税の安定的な確保”が挙げられているため、タバコ産業の育成があくまで法に基づいた活動という大義名分があるのです」(片野田氏)

実質的“国営”のJTだが…実は、民間的な自由経営を望んでいる?

 そもそも、日本のたばこ業界と切っても切り離せないJT (日本たばこ産業)とは、どういう存在なのか?

「JTとは、1985年に日本専売公社が民営化してできた日本たばこ産業株式会社のことです。JTには国産葉タバコの全量買い取りが義務づけられており、さらに国内で唯一タバコ製造の独占が認められています。民営化したとはいえ、財務官僚の天下り先にもなっていると言われており、実質的には“国営の会社”といっても過言ではないでしょう。

 とは言え、実はJT側はこうした体制から脱却して、自由な経営を望んでいる可能性もあります。現在は国内で生産したタバコの葉をすべてJTが買い取らざるを得ず、高い国内産を買い続けることが重荷になっているためです。タバコ農家は楽に栽培ができるうえ、JTの買い取り制度があるので安定した収入が得られますが、JTからすれば喫煙率が下がっている昨今、この買い取り制度はキツいでしょうね。国営時代に国が産業を支えることで、安定した税収を得ようとした名残と言えるでしょう」(片野田氏)

 最後に、今後のタバコ業界について予想していただいた。

「業界としては世界シェアの90%以上が日本であるアイコスや、プルーム・テック、グローといった加熱式タバコの普及により力を入れていくはずです。禁煙化の流れについては、改正健康増進法の施行も控えており、喫煙率の減少は今後も続くでしょう」(片野田氏)

 愛煙家にとっては厳しい未来予想となってしまったが、片野田氏は「禁煙政策はたばこを止めたい人の支援とセットにしないと、単なる喫煙者いじめになってしまうため、楽に禁煙できるサポートの充実もあわせて進めていくべき」とも語ってくれた。 “個々の禁煙努力”に任せず、禁煙サポートやケアをしてこそ、日本が禁煙後進国から脱却する日が近づくといえるだろう。

(文・取材=TND幽介[A4studio])

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