街も「世界標準」へ=あふれる外国語表示、灰皿は撤去-東京五輪500日切る

街も「世界標準」へ=あふれる外国語表示、灰皿は撤去-東京五輪500日切る


https://trafficnews.jp/post/84644


2019.03.24 時事通信


 東京からTOKYOへ。世界中から観戦客が訪れる五輪・パラリンピックの開幕が近づき、街の風景が変わり始めた。訪日客に不便を感じさせないようにと、外国語の案内やキャッシュレス決済が急ピッチで拡大。受動喫煙防止という国際世論の風にたばこの煙は隅へと追いやられ、東京は「世界標準」の都市に変貌を遂げつつある。


 ◇AIが4カ国語で案内


 街を彩るデジタルサイネージ(電子看板)。ポスターと違って自動で画面が切り替わり、動画も流せるため「人目を引きやすい」(西武鉄道)と駅構内や商業施設で広がりを見せる。画面に触れれば外国語に替わるタイプも登場。三越銀座店は化粧品売り場に4カ国語で表示するフロア案内を2台設置した。


 JR東日本は五輪前の本格導入を目指し、人工知能(AI)を使ったデジタルサイネージの実験中。東京駅では画面上のAI「さくらさん」が観光客の質問に笑顔で答える。語学堪能なさくらさんは乗り換えや飲食店などの情報を日本語のほか英語、中国語、韓国語で音声案内してくれる。


 訪日客が母国で使うスマートフォン決済の導入も相次ぐ。百貨店やコンビニエンスストアなどで先行していたが、ここに来て公共交通機関や観光名所が追随。東京メトロは2月21日から主要駅で、1~3日間乗り放題の訪日客向け乗車券を「アリペイ」で買える仕組みを取り入れた。


 国際オリンピック委員会(IOC)が「たばこのない五輪」を掲げており、国は健康増進法で、東京都は独自の条例で五輪開幕までに屋内での喫煙を制限する。大手ファミリーレストランのサイゼリヤが9月までに全店で禁煙にするなど、灰皿は徐々に姿を消し始めている。


 コンビニではセブン-イレブン・ジャパンが昨年、店頭に灰皿を置いていた都内の加盟店約1000店に撤去を要請した。撤去済みや予告の張り紙を掲示した店、撤去に前向きな店を合わせると約7割に上る。


 一方、これから禁煙化を進める外食店は、売り上げへの影響を懸念する。居酒屋チェーンの幹部は「ファミリー層が増えて売り上げがアップするのか、喫煙客が減るのか分からない」と、全面禁煙の時期を決めあぐねている。


 また、大手コンビニは今夏までにほぼ全店で成人誌の販売をとりやめる。五輪開催はこれまでの日本基準を見つめ直す契機になっている。 


【了】

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認知症は予防も治療もダメ?白衣を着ない医師「認知症になってからも人生は続きます」

認知症は予防も治療もダメ?白衣を着ない医師「認知症になってからも人生は続きます」


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190325-00010000-nakamaaru-hlth&p=1


 


3/25(月) 7:20配信


認知症訪問診療の第一人者であり、現在は「のぞみメモリークリニック」(東京都三鷹市、いまは外来のみ)の院長を務める木之下徹さんへのインタビュー3回目。認知症に対して、治療も予防も明確な成果が出せていない現状で、いま医療にできることは何か。木之下さんが見いだした一筋の光とは?(聞き手・なかまぁる編集長 冨岡史穂)

冨岡 「なかまぁる」は、認知症当事者とともにつくるウェブメディアというコンセプトです。じゃあ、当事者とはだれか、というと、認知症のご本人であり、家族であり、医療や介護といった仕事やボランティア活動を通して支える人たちでもある。さらには、個人的なつながりや関心を通じて、当事者意識を持つ人たちもいる。 この輪のなかに、私たちメディアからの情報発信を通じて、もっと多くの人が入ってこられるようにしたい。それが、社会全体として、「認知症を自分事ととらえる」ということなのではないかと考えています。

木之下 何を基盤にして、人々に支持されるメディアになっていくか。収益性も求められるし、難しい判断を迫られることもあるかもしれない。商売なんだから、金儲けはきちんとやるべきだと僕は思っている。そのときにメディアとして、自分たちが大事にしていること、望ましいと思うことをきちんと明らかにしておくことが重要だよね。

ハッタリやうそに塗り固められた心地いい話とか。確かに短絡的にはうけるよね、そういう話。なんとかの油、とか。脳のトレーニングと称したりさあ。わかりやすいもんね。でも、そんなことを流布することがメディアの本来の仕事ではないと思う。 あっ、メタボ対策はいいらしいですね。血圧の管理も大切。高血糖、過体重、たばこ、引きこもり、社会的孤立。こういうのはダメらしい。でも、そんな話、認知症に限らず、心臓や腎臓にもそうでしょう。適切な運動。適切な食事。これは大事。なににって?カラダに対してです。脳もカラダの一部ですね。僕には耳が痛い。そうできない自分がいる。

でね、認知症に特別なものは今はない。体に悪くて認知症にいいものもない。体にいいことは脳にもいいんですよ、きっと。人間はそういうツクリになっている。普通に考えればいいんです。

そんなことではなくて、今は、認知症になってからも「よりよく生きる」ための情報提供をしてほしい。物理的/化学的/生物的な環境のみならず、文化あるいは人と人との関係といった社会的環境が、認知症になってからも生きやすくするものとなってほしい。そういうコンテキストにおいて、メディアには強大な力があると思います。

僕は、やっぱり「人」。人が生きていくうえで役に立つかどうかだと思う。そういう意味で、支持される「新たな文脈」というか、コンセプトメイキングができたらいいね。それでしっかり、大もうけしたら、そのコンセプトはもっと多くの人に信じてもらえる。あっ、いまハードル上げちゃったかな。


サイエンスが研究するべきことは

冨岡 (笑)がんばります。もう一つ、白状しますと、私自身が「いつか認知症になるだろう」と思っていて、そのときに、あるいは、いま認知症になったとしても、「大丈夫だ」と思えるような社会を早くつくりたい。ある意味、自分のためにやっている、という部分もあるんです。

木之下 医者っぽいことを言わせてもらえば、二つある。一つはサイエンスとしての切り口。メタボ対策以外の予防法については、僕は悲観的です。そうではなくて、さきほど、認知症はもの忘れではないと話しました。例えば記憶しづらいのが不便だとして、じゃあ、どういうソリューションがあるのか。これもサイエンスの仕事です。

さらに、記憶力の変化だけでなく、認知症は認識のあり方に様々に影響します。「漢字がばらけるようで、読めなくなる」などと教えてくれた認知症の人もいます。それはどういう体験なのか。下りようとする階段が蛇腹のように見えるとか、衣文掛けの洋服は着られるけど手渡された服は着られないとか。

あるいはレビー小体型のように、幻視に悩む人もいる。たぶん意識レベルの低下が引き起こす現象なんだろうけれど、はっきりしたメカニズムはつかめていない。記憶はどうか、注意はどうか、視空間認知はどうか。僕らは、そういった個人の感覚を他者から見てどう点数化するかなどの他覚的評価になじんでいるけれど、それをさらに人に伝えて工夫を凝らす、そういう問題解決策にまで至るような素材はまだ足りない。そういう五感に生じる変化に対して、つまり体験ですね。サイエンスが研究するべきことはもっとあるし、まだまだ不足している。

このクリニックの診療室の壁は、実は、パレイドリア(対象が実際とは違って知覚されること)が起こりづらいものを選んだし、カレンダーも置いていない。それは、青い字、赤い字が目に飛び込んできていやだという本人の声があったからです。自分じゃ気づけなかった。

もう一つは、社会学的なアプローチで、医療業界としては一番苦手な領域だと思います。たとえば診察の場面において、人としての医者はどう振る舞うべきか。これはなかなか難しい問題がある。以前に比べれば、殴ったり蹴ったりする認知症の本人に対し、簡単に薬を出すのではなく、まずは向き合い方を考えるという方向に、全体として向かいつつある。もっと、そういう方向に伸ばしていかなければならない。それを邪魔する要因もいっぱいあるけどね。


認知症の本人にも「偏見」

冨岡 先生はよく、認知症の苦しさは、認知症そのものの不自由さプラス「視線の病」だとおっしゃっています。周囲の偏見や……

木之下 周囲だけでなく、認知症の本人のなかにも「スティグマ(偏見)」があるんです。うちでも、診断を受けて泣く人がいる。僕は言うんですよ、「泣いてる場合じゃない、人生は続くぞ。認知症になったからって、不自由かもしれないけれど、不幸でもないし、ましてや人間が壊れるわけじゃないぞ」と。「えっ!」という反応が多いです。

一般的に医療は、予防、回復、維持、この三つで成り立つんじゃないかと僕は思っています。でも認知症では、これが全部だめなわけです。じゃあ、4番目はなんだと。ないな……と思っていたんだけど、最近の僕なりの答えは、等身大のその人の姿を伝えるということ。それから予後、これは、未来の等身大の自分を予測すること。

認知症そのものは痛くもかゆくもない。ましては不幸の始まりでもない。あっ、「認知症になったらわからなくなるから幸せよね」と聞いたこともあるけれど、そんなはずもない。あと「もうずいぶん年取っているから、ボケてもいいんだよ」など。人間って、年取れば感じ方が鈍くなるのか? 多分、それもうそでしょうね。年取れば、自分の生物学的な老いも体験するし、近しい人々の死別もあるしね。 認知症になってからも人生は続きます。だから過大でも過小でもない、自分自身をまず見つめたらどうだろう。診察によって、よりよく生きるヒントが見えてくれば至高の喜びですね。

冨岡 本人にしてみれば、自分にいま、何が起きているのかを、医学の視点から教えてもらえる。

木之下 そうそうそう、知りたいでしょ。それに知っておいた方がいいこともある。ココナツオイルを飲み過ぎれば、認知症にもなって、ついで僕みたいなメタボにもなるかもしれませんとかね(笑)

冨岡 よかった、医療の敗北ではないんですね。

木之下 医療にできるとしたらそれだよね。本人が、人生の「主体者」として生きていくためのお手伝いをする、かなぁ。まだ「かなぁ」という段階だけど。これはある意味、医療の本来あるべき姿だと思うんです。そんな大それた目標設定はしている。でもどこまでできているかは、自分自身についても反省しかない。

冨岡 そういえば、お話の冒頭で、「医療を本来の姿に戻すべきだ」とおっしゃっていました。

木之下 そういうこと。でもさあ、このインタビュー、だいぶあちこち話が飛んだぞ。どうやってまとめるの? インタビューされる側、する側に新たな、かけがえのない関係性が生まれていれば、僕はそれでいいんだけど。さ、二次会行こうぜ。


プロフィール

木之下徹(きのした・とおる)さん
1962年生まれ。86年東京大医学部保健学科卒、96年山梨医科大卒業。2001年から東京都品川区で認知症の在宅医療に取り組む。14年、認知症や軽度認知障害が気になる人の外来クリニックとして、のぞみメモリ―クリニック(MRIあり)を開院した。 白衣は着ない。少し……ぽっちゃりしている。

冨岡史穂(とみおか・しほ)プロフィール
なかまぁる編集長。1974年生まれ。99年朝日新聞社入社。宇都宮、長野での記者「修行」を経て、04年から主に基礎科学、医療分野を取材。朝刊連載「患者を生きる」などを担当した。気がつけばヒマラヤ山脈、なぜか炎天の離島と、体力系の取材経験もわりと多い。

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その「害」は確実にある──「加熱式タバコ」を専門家に詳しく聞いてみた

その「害」は確実にある──「加熱式タバコ」を専門家に詳しく聞いてみた


https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20190325-00119399/


石田雅彦 | ライター、編集者 3/25(月) 8:00


 


 アイコス(IQOS)などの加熱式タバコについて、「害がない」「禁煙に役立つ」といった情報を耳にするようになってきた。従来の紙巻きタバコからこれらの「新型タバコ」へ切り替えたり、併用したりする喫煙者も多い。実際のところ、加熱式タバコの影響はどんなところにどんなふうに出てくるのだろうか。新型タバコに関する著作(『新型タバコの本当のリスク』)もある専門家に聞いてみた。


いつの間にか広まりつつある加熱式


 国の法改正として改正健康増進法に受動喫煙防止が加えられ、東京都や大阪府、千葉市など各自治体でも国の規制より厳しい内容を盛り込んだ受動喫煙防止条例が施行されつつある。喫煙環境が狭められる中、加熱式タバコが話題になり、メディアなどでも多く取り上げられるようになってきた。


 タバコを吸わない人はあまり知らないかもしれないが、加熱式タバコは、電気で加熱するデバイス部分、そしてタバコ葉を巻いたり充填したりしてフィルターを付けるなどしたスティック部分に分かれる。デバイスは3社から9種類も出ていて、それらに使用する専用タバコ(タバコ葉を使ったスティック部分)は、それぞれ2~3ブランド、味付けなどでさらに数種類ずつが販売されている(2019年3月)。


 デバイスの中にはすでに流通から排除されて入手が難しいものもあるが、9種類のデバイスはどれも専用タバコを差し込めば今でも吸うことが可能だ。加熱式タバコにこれほど多くの種類が出ていることに驚かされるが、喫煙者にとっては多種多様な製品群の中から自由に選ぶことのできる環境が整い始めていることになる。


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フィリップ・モリス・インターナショナル、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ、JT(日本たばこ産業)3社から発売されている加熱式タバコのデバイス(上段)と専用タバコのブランド名と価格。専用タバコには味付けごとにさらに数種類がある。表組み筆者作成(2019年3月)



 加熱式タバコは、確かに紙巻きタバコより煙も匂いも少ない。逆にいえば、それだけ「ステルス性」の高い製品ということで、気付かないうちに本来ならタバコを吸うことができない場所へ入り込んでいるのかもしれない。こんな状況について、いつの間にか地球外生物に侵略されていたというSFをイメージするのは筆者だけだろうか。


 新型のタバコについては、タバコ対策を研究している公衆衛生学の専門家の多くが危惧を抱いている。禁煙外来で治療をする医師も、患者から加熱式タバコについて質問され、明確に回答できないこともあるようだ。


加熱式タバコに受動喫煙の「害」はある


 タバコ問題や健康格差について多くの論文を国際的な医学雑誌に発表している田淵貴大医師は、タバコ対策の専門家として豊かな見識と深い洞察力を持っている研究者だ。


 最近、加熱式を含む新型タバコについて解説した「世界初」の一般書籍『新型タバコの本当のリスク』(内外出版社)を上梓したが、その中では、加熱式タバコがなぜ日本だけで広がったのか、その有害性や社会的影響、使っている人や使おうとしている人、周囲の人への対処法の指南まで明確に述べている。そんな田淵医師に加熱式を含む新型タバコについて聞いた。


──新型タバコ、特にアイコスのような加熱式タバコを吸う人を多く見かけるようになってきましたが、なぜこんなに広まったのでしょうか?


田淵「日本人のガジェット好きが原因の一つだと指摘されています。アイコスは2016年4月にテレビバラエティ番組の『アメトーーク!』で紹介されて、劇的に認知されるようになりました。私も『アメトーーク!』に影響されて電化製品や漫画本を買ったりしていますので、『アメトーーク!』の影響力はすごいと改めて実感しました。さらには、ニコチン入りのリキッドを使う電子タバコが法律で禁止されていることで、加熱式タバコの競合製品である電子タバコが日本では売られていないことも加熱式タバコが日本でブレークした一つの原因だと思います」


──日本の喫煙率はおおむね下がってきていますが、女性と20代男性、高齢者が引き下げていて中年男性の喫煙率はあまり下がってきていないようです。加熱式タバコはこの傾向にどのような影響を与えていると考えられますか?


田淵「加熱式タバコに手を出してしまうと、禁煙しにくくなってしまう可能性があるんです。インターネット調査プロジェクトJASTIS研究によると、今、タバコを吸っている人が禁煙したいと思ったときに、禁煙する方法で最も多かったのが『加熱式タバコに替える』というものでした。しかし、加熱式タバコに替えても、結局は紙巻タバコとの併用になってしまって止められないという人が多くいるようなんです。もちろん、詳しく調査して分析してみなければわかりませんが、加熱式タバコが日本人の喫煙率の動向に影響しているのは間違いないと思います」


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田淵医師は、アンケート調査などで「タバコを吸っていますか」と聞くだけでは実態が分からなくなったと指摘する。加熱式タバコはタバコではないと認識している人がいるからだ。喫煙率の低下傾向がある中、こうした喫煙者の認識や加熱式タバコの普及の影響、タバコを吸っているとは答えにくい状況などを全て考慮しないと喫煙率を正確に知ることができない。写真提供:田淵貴大



──加熱式タバコには受動喫煙の被害がないという誤った考え方が表れ始めているようですが、受動喫煙の害の危険性が極めて低ければ、受忍できるものでしょうか?


田淵「確かに、加熱式タバコからは副流煙(吸わない時もタバコの先端から出る煙)が出ませんから、受動喫煙の程度は低いかもしれません。ただし、これは紙巻タバコによる受動喫煙と比較した場合は、という"条件付き“です。加熱式タバコからも紙巻タバコと同様に多くの種類の有害物質が出ていますから、受動喫煙の害はあるかないかでいえば確実に“ある”です。今まで禁煙だったのに、加熱式タバコならOKとはできません。ただし、紙巻タバコの煙が充満していた環境が、いったん加熱式タバコに切り替わるのなら、経過措置としてはマシだと言えるかもしれません。いずれにせよ、ゆくゆくは加熱式タバコも屋内で使ってはダメですよとするべきですね。有害物質はソファーなどに付着して何年も蓄積するとわかっていますから」


──いわゆるハーム・リダクションに加熱式タバコを利用することに対し、お考えをお聞かせください。


田淵「ハーム・リダクションとは、簡単に言うと、大きな害のある行動をそれよりも小さな害の行動に置き換えることによって、害は完全にはなくせないが、害を少なくさせることです。タバコ問題の場合のハーム・リダクション戦略として、どうしてもタバコを止められない人に対して、タバコの代わりに害の少ないタバコを吸ってもらったら、有害物質への曝露を減らせるのではないか、というわけです。しかし私は、これまでの客観的・科学的な知見に基づき、加熱式タバコによる本人への健康被害は紙巻タバコとほとんど変わらないのではないかと予測しています。一方で、加熱式タバコでは吸引することとなる有害化学物質が紙巻タバコよりも少ない、という点に着目して、“ハーム・リダクション(害の低減)”として加熱式タバコが活用できるのではないかと訴えている医師もいます。ただ私は、このハーム・リダクション戦略がうまくいくとは考えていません。なぜなら、ハーム・リダクションとなるためのそもそもの前提事項である『加熱式タバコは紙巻タバコよりも害が少ない』ということが間違いではないかと考えているからです。米国の専門家の多くも、私と同じ意見のようです」


ラインナップはどんどん増えるだろう


──現在、加熱式タバコはタバコ3社から出ていますが、種類も増えてきているようです。今後、タバコ会社が進めていく戦略として、加熱式タバコのラインナップはどのようになっていくと考えられますか?


田淵「加熱式タバコだけでなく、電子タバコも含めた新型タバコのラインナップがどんどん増えていくものと予想されます。すでにフィリップモリス社は、“アイコス”ブランドから加熱式タバコだけでなく、電子タバコをリリースするとの情報が入ってきています。従来からタバコ会社は“タバコが何かわかりにくくする”という戦略をとってきており、“アイコス”とだけいっても、それはどのタバコなのかはっきりしなくなってしまうという未来が来ます。タバコや新型タバコの使用状況に関する実態把握が今後さらに困難になると考えられます」


──タバコ会社の中には紙巻きタバコの事業から将来的に撤退する、と明言しているところもありますが、世界的に喫煙率が下がり続け、健康への害も広く周知され、こうした状況でタバコ会社は遠い将来にはなくなるのでしょうか?


田淵「なくなって欲しいですね。本来なら、タバコ製品の有害性が実証され確認された1960年代の時点で、なくなるべきでした。タバコは紙巻タバコの大量生産技術の発展とともに1900年頃から広く普及しましたが、タバコの有害性が証明された1960年頃の時点で利権構造が巨大すぎて、タバコは有害だとわかったのに禁止できませんでした。それから50年以上たった今でも利権構造は維持され、残念ながら、すぐにはタバコを禁止できそうにありません。タバコの人への大きな害は十分に実証され、こんなに有害物質を含んでいると明らかになっているにも関わらず、合法的に社会に出回っている唯一のものがタバコです。人を大切にする社会を作っていくために、その第一歩として、まずタバコのない社会を目指していきたいと思っています」


 田淵医師の発言をまとめれば以下のようになる。



  • アイコスが広まったのはテレビ番組「アメトーーク!」のせいだった

  • ニコチン入り電子タバコが規制されているから加熱式タバコの競合がなかった

  • 紙巻きタバコとの併用となることが多く、加熱式タバコでの禁煙は難しい

  • 喫煙率の調査が難しくなるなど、タバコ対策に影響が出ている

  • 受動喫煙の「害」は確実に「ある」ので、将来的に加熱式タバコも全面的に禁止すべき

  • 加熱式も紙巻きタバコも同じ危険性がある以上、ハーム・リダクションは認められない

  • タバコ会社はタバコの定義をわかりにくくし、実態把握をしにくくする戦略を採っている

  • タバコ利権は有害性がわかっても長く残存したが、今後はタバコのない社会を目指すべき


 ところで、総務省消防庁は火災予防の観点から、タバコ3社に対してオブザーバー参加を要請し、加熱式タバコによる発火試験などのデータを提供させている。筆者の意見としては、電気製品である加熱式タバコのデバイスに対し、消費者庁などの官庁が有害物質の発生機器として厳しく規制し、製造メーカーに対して専用タバコ部分から発生する物質の安全性の証明義務を負わせるべきだと思う。


 タバコ会社は加熱式タバコについて、従来の紙巻きタバコとは違うとPRしている。であれば、同じように、たばこ事業法と財務省の管轄とは違う解釈で加熱式タバコのデバイスを規制するべきではないだろうか。


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田淵貴大(たぶち・たかひろ)


医師・医学博士。専門は、公衆衛生学(社会医学)・タバコ対策。1976年生まれ。2001年3月、岡山大学医学部卒。血液内科臨床医として勤務の後、大阪大学大学院にて公衆衛生学を学ぶ(2011年、医学博士取得)。2011年4月から大阪国際がんセンターがん対策センター勤務。現在、同がん対策センター疫学統計部の副部長。大阪大学や大阪市立大学の招聘教員。著者としてタバコ問題に関する論文を多数出版。一般書籍として2019年3月に『新型タバコの本当のリスク』(内外出版社)を上梓。日本公衆衛生学会、日本癌学会など多くの学会で、タバコ対策専門員会の委員を務める。2016年、日本公衆衛生学会奨励賞受賞。2018年、後藤喜代子・ポールブルダリ科学賞受賞。現在、主にタバコ対策および健康格差の研究に従事。写真提供:田淵貴大


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受動喫煙防止へ小学生に尿検査 4年の希望者対象 君津市

受動喫煙防止へ小学生に尿検査 4年の希望者対象 君津市
2019/03/23 05:00千葉日報オンライン

 家庭内での受動喫煙防止に向け、君津市は新年度から、希望する小学4年生を対象に、被害状況が分かるコチニン濃度を測る尿検査を導入する。市は、高い値が出た家庭への指導などを検討しており、「タバコの被害を減らしたい」としている。
 市学校教育課によると、県内の自治体では初の取り組みとみられる。コチニンは、タバコの煙に含まれるニコチンが体内に取り込まれてできる物質。尿検査などで濃度を測ることで、受動喫煙の有無が分かる。
 市は、生活習慣病の健診がある小学4年生の希望者に対し、今秋にもこの尿検査を行う方針。通常の健診とは別に実施し、一人約4千円の検査費を市が負担する。市は今後、高い値が出た際の指導方法などを医師会と検討したいとしている。市内の小学4年生は約550人で、市は予算約250万円を確保した。
 市議会が昨年9月、検査実施を求める決議を全会一致で可決していた。他県では、埼玉県熊谷市が2007年度から同様の検査を導入。高い値が出た家庭には小児科を受診するよう文書で通知し、効果を上げているという。全国的にも珍しい取り組みという。

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「禁煙」とは「ニコチン依存」からの脱却である

「禁煙」とは「ニコチン依存」からの脱却である
石田雅彦 | ライター、編集者
2/9(土) 12:34

 電子タバコを使った禁煙治療に効果があるという研究論文が、権威ある医学雑誌に掲載され、タバコ関係の研究者の間でちょっとした話題になっている。欧米では電子タバコが広く吸われているが、禁煙治療を含むそのハームリダクション(harm reduction)効果が議論になってきたからだ。だが、ニコチンに依存している限り、本当の意味で禁煙したとはいえない。

「まだまし」という考え方

 ハームリダクションとは、害毒・危害(harm)を軽減する(reduction)考え方だ。「まだまし」という意味で、害のより少ない代替策や代替品で害を避け、例えば薬物中毒などの害を少しでも避けるために採られる多種多様な手段ということになる。

 タバコの例で言えば、タバコに含まれる有害物質をより少ない量に軽減し、害の少ない使用法に転換するようなこと、さらにそうした方法によって禁煙につなげるための手段をいう。

 加熱式タバコを製造販売している海外のタバコ会社は、アイコス(IQOS)やグロー(glo)について「禁煙のための製品」とし、ハームリダクションの考え方からマーケティング戦略を練ってきた。ちなみに、プルーム・テックを出しているJTは、同製品を禁煙補助製品と明確にうたってはいない。

 日本では薬機法(旧薬事法)で規制され、国内販売ができないニコチンを添加した電子タバコについても、英国ではハームリダクションの考え方から医師などによる適正に管理された禁煙治療法を前提にして禁煙のために利用することが進められている。例えば、イングランドの公衆衛生当局であるPublic Health England(PHE)は2018年12月に、電子タバコは紙巻きタバコよりも95%有害ではないとし、禁煙のために電子タバコを推奨した(※1)。

 ニコチンが添加された電子タバコが若年層の間で流行し、大きな社会問題になっている米国やカナダは、英国と態度がかなり異なる。両国の研究者の多くは、電子タバコは若年層を中心にした喫煙への「ゲートウェイ」、紙巻きタバコの本格的な喫煙へ誘導するのではないかと懐疑的だ。

 米国のミシガン大学の研究者による調査では、電子タバコを吸った高校生は、電子タバコを経験しなかった者より翌年に紙巻きタバコを吸う割合が4倍多いことがわかった(※2)。また、カナダのウォータールー大学の研究者が、7歳から12歳の生徒を対象にして調査したところ、電子タバコの経験者が紙巻きタバコに移行する割合は、そうでない者より2.16倍高かったという(※3)。

 こうした懸念は英国の研究者からも出始めている。

 英国コベントリー大学などの研究グループが、11~16歳の英国の生徒について調べたところ、電子タバコの喫煙者の52.6%が紙巻きタバコは未経験だったが、電子タバコにニコチンが添加されていることを知っていたのは39.9%、ニコチンに中毒性や依存性(Addiction)があることを知っていたのは29.8%だったという(※4)。研究グループは、このことから電子タバコを吸った生徒がニコチン依存になり、紙巻きタバコの喫煙者になるのではないかと危惧している。

電子タバコの禁煙治療効果

 このように研究者の間でも、電子タバコが禁煙補助にどれくらい役立つのか、ハームリダクションとして利用できるのかについて議論が分かれてきた。

 そんな中、権威ある米国の医学雑誌『The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE』に、ニコチンを添加した電子タバコとニコチンパッチやニコチンガムといったニコチン置換療法(Nicotine Replacement Therapy、NRT)の禁煙治療効果を比較した論文が掲載された(※5)。これは英国のクイーン・メアリー・ロンドン大学などの研究グループによるランダム化比較試験で、1年(52週)後の禁煙継続率が、電子タバコ(439人)で18%、ニコチン置換療法(447人)で9.9%と、倍近い差が出たとし、結論として電子タバコによる禁煙治療はより長い効果を持続できたとする。

 過去にも電子タバコを使った禁煙治療についての論文は多いが、今回は権威ある医学雑誌に掲載されたこともあり、電子タバコのハームリダクション効果の議論に大きな影響を与えるのではないかと考えられる。

 ただ、この論文で使用された電子タバコは市販されており、リキッドも互換性のある他社製品の喫煙が可能だ。つまり、リキッドにはニコチン以外にも多くの化学物質が含まれている危険性があり、その健康影響については考慮されていない。仮に禁煙治療に効果があったとしても、電子タバコの喫煙を長期間継続することで、ニコチンを含む有害物質を摂取するリスクが生じる。

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禁煙治療で使用された電子タバコの一種「aspire starter kit」。1ミリリットルのリキッドに18ミリグラムのニコチンが入っている。比較試験研究では、このほかに「Innokin One Kit 2016」も使用した。Via:aspireのHP

ニコチン依存からの脱却

 従来の紙巻きタバコのようにタバコ葉を使わず、リキッドなどの形でニコチンを供給するデバイス、またタバコ葉を使っても電気的にニコチンを吸わせる加熱式タバコのようなデバイスをニコチン・デリバリー・システムという。

 ニコチンは依存性が強く、有毒なアルカロイドだ。ニコチンには、血管収縮や血圧上昇、脈拍の増加などを引き起こすことにより心血管疾患などのリスクを高め、肺がんを悪化させることがわかっている。また、ニコチンは、インスリン抵抗性を生じさせることもあるため、糖尿病になりやすくする。

 ニコチンを添加した電子タバコや加熱式タバコを含むタバコ製品は、ニコチンの持つ依存性により喫煙者をつなぎとめ、習慣的に長期間、タバコを吸わせるために開発されている。つまり、なぜ喫煙者がタバコ製品を毎日のように高い金を出して何十年も買い続けるのかといえば、それはニコチンの依存性のせいだ。

 その結果、朝起きてから寝るまで、こうしたニコチン・デリバリー・システムを何十年も吸うことになりかねず、いくら害が低減されているとはいえ、ニコチンを含む有害物質を定期的に長期間、身体に入れることになる。その健康影響は現在では不明だが、有害物質の長期暴露がどんな病気を引き起こすか、そのリスクは明らかだろう。

 ニコチン・デリバリー・システムの使用は、米国の若年層で増えている。ミシガン大学などの研究グループの調査によれば、2017年から2018年にかけ、米国の12年生(日本の高校3年生)のニコチン・デリバリー・システムの使用は23.7%から28.9%へ増えていた(※6)。

 欧米の電子タバコや日本の加熱式タバコには、紙巻きタバコに匹敵するニコチンが入っている。ハームリダクション効果を期待するあまり、ニコチン依存から脱却できず、長期にわたって定期的に薬物を摂取するような生活を許容してもいいのだろうか。

 それは結局、自らの健康と引き替えに電子タバコ・メーカーやタバコ会社だけを儲けさせることだけになる。禁煙というのは、電子タバコや加熱式タバコに切り替えるのではなく、最終的にはニコチン依存から脱却することにほかならないのだ。

記事ではニコチンの害について紹介していますが、禁煙外来などで処方されるニコチンパッチやニコチンガム、ニコチン代替薬には免疫系など健康への悪影響がないことがわかっています(※7)。ある物質は毒にも薬にもなります。医師の適切な指示に従って処方されるなら、ニコチンは禁煙にとって重要な薬物となりますが、タバコ製品と一緒に摂取するとタバコ製品の有害物質も同時に吸収することになります。

※1:Public Health England, "PHE Health Harms campaign encourages smokers to quit." 28 December, 2018

※2:Richard Miech, Megan E Patrick, Patrick M O'Malley, Lloyd D Johnston, "E-cigarette use as a predictor of cigarette smoking: results from a 1-year follow-up of a national sample of 12th grade students." BMJ journals, Tobacco Control, 2017

※3:Sunday Azagba, Neill Bruce Baskerville, Kristie Foley, "Susceptibility to cigarette smoking among middle and high school e-cigarette users in Canada." Preventive Medicine, Vol.103, 2017

※4:E Fulton, et al., "More than half of adolescent E-Cigarette users had never smoked a cigarette: findings from a study of school children in the UK." Public Health, Vol.161, 33-35, 2018

※5:Peter Hajek, et al., "A Randomized Trial of E-Cigarettes versus Nicotine-Replacement Therapy." The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE, DOI: 10.1056/NEJMoa1808779, 2019

※6:Richard Miech, et al., "Adolescent Vaping and Nicotine Use in 2017-2018─U.S. National Estimates." The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE, Vol.380, 192-193, 2019

※7:Kate Cahill, et al., "Nicotine receptor partial agonists for smoking cessation." Cochran Database of Systematic Reviews, 2008

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