喫煙科学研究財団の解散を勧告します
NPO法人 日本禁煙学会
理事長 作田 学
喫煙科学研究財団の解散を勧告します
原文 http://www.nosmoke55.jp/action/0808kituenkagakuzaidan.pdf
喫煙科学研究財団は国民の健康と福祉の増進に反する存在であるから解散すべき
私たちNPO法人日本禁煙学会は、喫煙科学研究財団の役員・評議員など喫煙科学研究財団に関係している全ての科学者・医学者に辞職を呼びかけ、喫煙科学研究財団の解散を勧告します。
1.喫煙による健康被害の圧倒的な科学的根拠
タバコがタバコの使用者のみならず周囲の人々に対しても癌、循環器疾患、呼吸器疾患などの様々な疾患を起こすことは数多くの科学的研究によって明白に証明されています。またニコチンが麻薬と同様の依存性薬物であり、タバコの使用を容易に中止し難いことも周知の事実です。
2.おびただしいタバコの犠牲者
タバコによる犠牲者は世界で毎年540万人、日本で11万人以上と推定されています。WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008によれば、今後10年間で世界のタバコによる死亡の80%以上が発展途上国において発生すること、今すぐ対策を講じなければ21世紀には10億人がタバコによって殺されると警告しています1)。
3.世界と日本のタバコ規制
WHOの国際条約であるタバコ規制枠組み条約(FCTC)は2005年2月に発効しましたが、先日ロシアも条約を批准し、批准国は2008年7月現在157か国となりました。批准した諸国は発効5年後の2010年2月を目標にそれぞれの国でタバコ規制対策を着々と実行しつつあります。
日本でも2003年、受動喫煙防止を定めた健康増進法が制定され、2005年10月には喫煙関連疾患9学会による禁煙ガイドラインが発表され、喫煙は「病気」として保険治療の対象となりました。また本年3月には日本学術会議が「脱タバコ社会の実現に向けて」をまとめ、タバコの害から国民の健康を守り、その環境汚染から地球を守るために7つの提言を行っています2)。
4.タバコ規制に反対し続ける日本たばこ産業(JT)
しかるに、日本たばこ産業(JT)は依然として喫煙による健康被害とニコチンの依存性を否定、矮小化しており、最近でも一貫してタバコ規制に反対する行動を取り続けています3)。またギャラハーを買収するなどロシアや発展途上国へのタバコ輸出を画策しています。
5.タバコ産業に関係する科学者の利害相反
近年、科学研究においても利害(利益)相反が重要な問題になっています。特にタバコ産業と関係する科学者の利害相反は世界中で問題を惹き起こしています。昨年秋、世界医師会はタバコ製品の有害性に関する世界医師会声明を出し、その中でタバコ産業からいかなる資金も教育的物資も受け取らないよう勧告しました4)。世界医師会声明に呼応して日本禁煙学会は「タバコ産業からいかなる資金も受け取るべきではない」という声明を出し、2008年2月の通常総会で倫理指針を採択しました5)。
6.喫煙科学研究財団はJTと表裏一体
喫煙科学研究財団はJTの株式の50%を保有する財務省管轄の団体であり、JTからの寄付により助成を行なっているJTとは表裏一体の組織です。喫煙科学研究財団の助成による研究は重大な利害相反を引き起こす恐れがあるだけではありません。喫煙科学研究財団と関わることは、人々の健康を脅かし病気を引き起こしているタバコという危険な商品を売り続けているJTの行為に加担することになります。
実際に93年3月の内部文書のなかで、大河喜彦氏(当時・日本たばこ産業株式会社 科学情報部長、現・たばこ塩博物館館長)は「われわれは受動喫煙の研究を日本で我々自身によってと喫煙科学研究財団を通しておこなっている。」と明言しています6)。
7.JTと決別し喫煙科学研究財団の解散を
世界医師会声明でも述べられているとおり、仮に喫煙を奨励する研究でなくても、タバコ産業から助成を受けること自体が、タバコ産業に信用と存在意義を与えることになります。もしタバコによる健康被害という事実を認めるのなら、タバコ使用を拡大しようとするタバコ産業に関わること自体が自己矛盾です。一方、もし仮にタバコによる健康被害を認めないという立場なら、科学としての医学と医学的成果を自ら否定することになります。
私たちは、科学者・医学者としての理性と倫理に訴えます。喫煙科学研究財団と関係のある全ての科学者・医学者は可及的速やかに喫煙科学研究財団の役員・評議員などの職を辞し、今後一切の関係を絶たれるように呼びかけます。そして危険な商品を売り続けているJTを補完する存在となっており、国民の健康と福祉の増進に反する喫煙科学研究財団の解散を要求します7)。
医学は一企業の利益のために奉仕すべきではなく、人類の健康と幸福のためにこそ奉仕すべきです。関係各位が英断を下されることを衷心よりお願いします。
注釈:
1) WHO Report on the Global Tobacco Epidemic, 2008
http://www.who.int/tobacco/mpower/en/
2) 日本学術会議が「脱タバコ社会の実現に向けて」(2008年3月4日)
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t51-4.pdf
3)JTは、禁煙治療の保険適用の制度導入時に、中医協のパブリックコメントで、これに強く反対しました。(2006年1月、 http://www.jti.co.jp/JTI/attention/20060123.html )
2006年8月からの「健康日本21中間評価」における喫煙率低減目標の設定においても、JTはこれに強く反対し( http://www.jti.co.jp/JTI/attention/about_measure.html )このため厚生労働省はこの低減目標を断念せざるを得ませんでした。
また2007年5月からの「がん対策推進基本計画」における喫煙率半減・低減目標設定においても、同様にJTはこれに強く反対し(リンク先:同上)、このため国はこの半減・低減目標を断念しました。
JTは若者や若い女性(思春期児童や妊産婦も含む)をターゲットにしてタバコ商品を販売し、販拡を続けるなど、国民(とりわけ若い世代)の健康をタバコの危害から守る動きに冷水を浴びせ、タバコによる健康危害を生み出し続けています。
4) タバコ製品の有害性に関する世界医師会声明(勧告)
http://www.nosmoke55.jp/data/0712wma.html
その中で、タバコ産業からの資金について次のように述べています。
「タバコ産業とその関連団体は、長年にわたってタバコと健康に関するさまざまな観点の研究と報告書作成に資金を出してきた。そのようなタバコ産業の活動に参加した研究者個人あるいは研究機関は、タバコ産業が彼らの出した研究データを、タバコの売込みのために直接活用できないような場合においても、タバコ産業の見かけ上の社会的信頼性を高める役割を果たしてきた。また、このような活動に関与することは、健康増進という医学医療の目標と相容れない重大な利害相反をもたらしている。」
として、
「タバコ産業からいかなる資金も教育的物資ももらわないこと。そして医学校、研究施設、研究者個人に対しても、同様のことを要請する。これは、タバコ産業にいかなる社会的信頼性も与えないためである。」と勧告しています。
5) 日本禁煙学会の声明「タバコ産業からいかなる資金も受け取るべきではない」
http://www.nosmoke55.jp/action/0712dirtymoney.html
また、2月17日に開催された通常総会で下記の倫理指針を採択いたしました。
【日本禁煙学会及び会員は、タバコマネーとはいっさい関わらない倫理指針】
(1)タバコ製品の有害性に関する世界医師会声明(勧告、2007.10)及び日本禁煙学会の声明(2007.12.10)「タバコ産業からいかなる資金も受け取るべきではない」を踏まえ、日本禁煙学会及び会員は、タバコ会社及びその関係団体・関係者から、直接的または間接的な資金
や物資提供・便宜供与を受けない。またこれらが主催あるいは後援・協賛するイベント・催し等には協力しない。
【タバコマネーとは関わっていない旨の投稿・学術総会発表規程、及び細則】
(1)日本禁煙学会雑誌に投稿し、あるいは日本禁煙学会学術総会で発表する研究は、国内外のタバコ産業及び関連団体から研究助成を受けていないことを要件とする。
(2)投稿論文および学術総会発表内容に、他機関から研究助成・補助、及び利益・利害相反がある場合は、その内容を明記すること。
6)タバコ産業の内部文書番号87802730
また内部文書はいかに多くの喫煙科学研究財団関係者がタバコ産業と深く関わっているかを示しています。これは1992年12月28日の大河氏あてJohn Ruppからの手紙にあるように「より協力的な、コンサルタントを日本で集める」ことと関連しているように思います。そしてたとえば福間誠吾千葉県がんセンター名誉所長(喫煙科学研究財団審議会委員)などの名がコンサルタントとして上がっています。
7)公益法人制度改革によって、今年(2008年)12月1日からは、剰余金の分配を目的としない社団及び財団は、その行う事業の公益性の有無にかかわらず、準則主義(登記)により簡便に法人格を取得することができる「一般社団法人」及び「一般財団法人」となることになります。
そして、「一般社団法人」及び「一般財団法人」のうち、公益性が認定された法人については、「公益社団法人」、「公益財団法人」として税制上の優遇措置が講じられ(現行公益法人から新制度での法人への移行期間は5年間)、 この間に、現行公益法人は、12月1日の時点で、自動的に「特例民法法人」となり、その後、公益認定等委員会の意見に基づく行政庁の認可又は認定を受け、一般社団法人・一般財団法人に移行するか、新たな公益社団法人・公益財団法人に移行するかを選択する必要があり、移行期間中に移行しなかった法人は解散したものとみなされることになっています。(内閣府公益認定等委員会事務局:「民による公益の増進を目指して」
http://www.cao.go.jp/picc/seisaku/panflet/panflet.html )
喫煙科学研究財団は本文に指摘したように、「公益性」を有するとはとうてい言えないことから、公益性が認定された「公益財団法人」に移行選択するのは不可能なように思料いたしますし、本会も公益認定等委員会にこの申し立てを行う所存です。「一般財団法人」に移行することも喫煙科学研究財団の反公共性と公益性から許されることではありません。
公益法人制度改革にあわせ、この期に、「解散」こそが選択されるべき唯一の賢明な方法かと考えます。
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