2歳の男児が喫煙する「たばこ天国」 規制は無駄か? インドネシアの試み
2歳の男児が喫煙する「たばこ天国」 規制は無駄か? インドネシアの試み
「ライト」や「マイルド」といった表現は商品名に使えない。
18歳未満や妊婦への販売も禁止。世界有数の「たばこ天国」インドネシアで、たばこをめぐるそんな規制を含む法律が発効した。同国では数年前、2歳の男児が喫煙する映像をメディアが伝え、世界中の話題になった。若年層の禁煙策としてようやく規制に乗り出した格好だが、罰則規定などが甘く、効果を疑問視する声もある。若年層や妊婦の喫煙は日本でも問題視されている。「天国」の取り組みから学ぶことはある?(大谷卓)
■ライトもマイルドもダメ
ジャカルタ・グローブなど地元メディアによると、新規制では、たばこの箱のパッケージの4割を割いて、喫煙による健康被害を示す写真や警告文を記載することが義務付けられる。
企業がテレビやラジオ、新聞などで宣伝する場合の規制も設けられた。テレビやラジオでのCM放送では放映時間の1割を、吸い過ぎが健康を損なう恐れがあることに言及しなければならない。新聞などの活字メディアも同様だ。
商品名への規制もできた。健康被害が軽くなるような印象を与える言葉は排除される。例えば、「ライト」や「マイルド」「ウルトラライト」「スリム」「スペシャル」などで、日本でおなじみの言葉は商品名に使うことを認めない。
18歳未満と妊婦への販売を禁じている。喫煙者が減らないのは、若年層から喫煙習慣があるためとみているからだ。
ジャカルタ・ポストなどによると、インドネシアの喫煙人口は5700万人で、全人口の4割近い。成人男性の約6割が喫煙者とされ、とくに女性、幼児を含む若者の常習喫煙が増えており、数年前には、スマトラ島の村で、1日40本ものたばこを吸う2歳の幼児がメディアで紹介され、世界各国から批判の声が集まった。
健康被害も指摘されており、喫煙を根源とする疾病で年間2万人が死亡に至っているとの推計や、16歳以下の人口のうち100万人が常習喫煙者との推計もあるという。
■業界側からの圧力
ただ、新規制の効果に対する懐疑的な見方が根強い。喫煙者の数や、若年層の喫煙率を減らすなどの効果は薄いとみられている。理由は、「たばこ」が社会のあらゆる局面に深く根ざす存在だからだ。
オランダの植民地時代に欧州への輸出品として栽培がスタート。現金収入が得やすいという理由から、農家が増え、いまや生産に携わる労働者は300万人以上。地元メディアによると、たばこによる税収人は、政府の財源の約6%を占めるという。業界側からの政治献金は多く、2014年中ごろまで、規制の「猶予期間」を設けたのは、農家の保護とともに、業界の圧力に政治が屈したとの地元メディア報道もある。
販売者が規制に反した場合の罰則規定は盛り込まれておらず、ジャカルタ・ポストは「新規制にだれが満足しているのか」と題した分析記事を掲載。効果を疑問視している。
ところで、日本でも妊婦や若年層の喫煙については問題視されている。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、平成23年の日本人の喫煙率は20・1%で前年(19・5%)よりやや増加。一方で、厚労省の「乳幼児身体発育調査」(22年)によると、「妊娠中に喫煙する母親」の割合は5%。平成12年の前回調査に比べ、半減しているが、世代別にみると、15~19歳の喫煙率は14・3%(前回34・2%)と最も高い。
インドネシアでも指摘されているが、喫煙する層は低所得者が多く、日本の場合も同じ。大阪の場合、とくに女性の低所得者が多いとされる。さまざまな意味で、喫煙は社会の現状を示す鏡でもある。
新規制は健康被害を防ぐ“救世主”となるのか、それとも業界の圧力に負けるのか…。「たばこ天国」の規制がどんな結果になるのか注目される。
4月28日
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