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中国、タバコ農家転業で脱喫煙大国の試み

中国、タバコ農家転業で脱喫煙大国の試み

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/140501/mcb1405010500018-n1.htm

2014.5.1 06:56

 1982年に北京の人民大会堂で、当時の中国指導者だったトウ小平氏と昼食を共にしたバージニア・リ氏は、トウ氏が熊の手のひらの料理や茅台酒を口にしながらずっとたばこをふかしていることに反発した。

 リ氏は公共衛生で博士号を持つ禁煙活動家で、喫煙をやめるよう中国人を説得したいという途方もない構想を持っていた。リ氏は中国の改革・開放路線を推し進めたトウ氏との昼食会を思い出しながら、「喫煙は健康に良くない。あなたが禁煙して、中国人の喫煙が減ることを期待している」とトウ氏に告げたことを明らかにした。トウ氏はリ氏の助言を無視し92歳まで生きた。それから30年の間に中国の喫煙人口は1億人増加した。

 雲南省で実験計画

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の教授であるリ氏は現在81歳。1947年に家族で中国から米国に渡ったが、トウ氏と面会した後は毎年のように中国を訪れている。片目が見えず、歩行にはつえが必要となったが、中国人に喫煙をやめさせる処方箋をついに得たと言う。それは国営のたばこ会社に打撃を与えることである。これを実現するために、同氏は喫煙者ではなくタバコ栽培農家に注目した。

 世界保健機関(WHO)と世界肺財団に助言している香港の医師、ジュディス・マッケイ氏は「喫煙の健康被害をめぐる議論は誰もが知っている。中国で重要なのは、これを経済的な議論にすることだ」と指摘。リ氏の取り組みについて、「たばこを規制しても必ずしも経済や農家に対する打撃にはならないことを示す革新的なものだ」と述べた。

 中国の2000万のタバコ農家に大変革を起こし、地球上で消費されるたばこ5本のうち2本を生産する巨大企業、中国煙草総公司から原材料を取り上げるというのがリ氏のアイデアだ。中国の政策決定者は13億人の国民の食糧を確保するという問題に絶えず頭を悩ましていることから、たばこの問題に農業面からアプローチすれば彼らの理解を得やすいと考えたのだ。

 リ氏が先頭に立って雲南省の農家と進めた転作プロジェクトは成功を収めた。タバコの代わりに食べ物となる農作物を生産することで農家の収入が増えたのだ。

 このようにしてタバコ栽培をやめる農家が増えれば、中国煙草は割高な原料に頼らざるを得なくなる。そうすればたばこ製品は値上がりし、喫煙者が禁煙するきっかけになる。当局はたばこ税に代わる税収に頼らなければならず、たばこ業界の影響力は低下するだろう。

 ただ理論的にはこのような成果が期待できるとはいえ、リ氏は性急な変化には警告を発し、「タバコ農家が今すぐ完全になくなれば混乱が生じる」と語る。喫煙人口約3億2000万人を抱える中国の内情は複雑に絡み合っているのだ。

 他の作物で収入増

 中国のたばこ生産量は世界一で、たばこ税は同国政府の年間歳入の約7%を占める。2012年にはおよそ1000億ドル(約10兆2500億円)が生み出された。農村部には、たばこ税の収入に予算の半分近くを依存している都市もある。タバコの乾葉の売り上げには23%の税が課されるが、それ以外の作物は課税対象外である。

 国家煙草専売局の李克明副局長は、国務院において国民の健康に最終的な責任を負う李克強首相の弟だ。カリフォルニア大学バークリー校の胡徳偉教授は「たばこ政策をめぐる手に負えない政治的、構造的、経済的、社会的な障壁に直面しているのが中国だ」と話している。

 しかし中国には禁煙を進めるべき理由が山ほどある。WHOの予測によると、中国では15年までの10年間に、がん、糖尿病、心疾患、その他喫煙と関連する慢性疾患が原因で5580億ドルの国民所得が失われる可能性がある。そして喫煙に関連する死者は毎年100万人に上る。

 リ氏が最も重視するのは、数エーカーの農地で生産する数百万人の小規模なタバコ農家である。同氏は雲南省の農村部の荒れた道路を走るミニバンの後部座席で、「このような農家について不安がある。狭い土地しか持たない彼らは、どうすれば豊かになれるだろうか」と語った。

 同氏は年に2度同地を訪れて、転業した元タバコ農家の生産状況を視察。そして、最近着手した学校へのエコトイレ導入活動など、その他のプロジェクトの進捗(しんちょく)も確認している。

 リ氏は08年、フン・アンド・ジル・チェン慈善財団の資金提供と自身の1万5000ドル、そして地元政府の協力を得て、雲南省の458軒のタバコ農家をブドウやキノコなど他の作物の栽培に転業させた。

 それから4年後、転業したすべての農家で収入が増加したという。リ氏が12年9月に「米公衆衛生ジャーナル」で公開したリポートによると、ブドウ栽培に転業した農家は10年の平均で1エーカー(約4047平方メートル)当たり1万5255ドルを売り上げ、利益は1万175ドルと、タバコを栽培していたころの2倍に増加した。キノコ栽培に転業した農家の利益は、タバコ栽培を続ける近隣農家を80%上回った。

 リ氏とともに転作プロジェクトを進めた雲南省玉渓市の農業局産業化部副部長、シア・ニン氏は、もはや雲南省に土地を持つ人々にタバコを栽培させることは難しくなっていると指摘。「その他の農家も結果を目の当たりにして、転業したいと申し出てくるようになった」と述べた。(ブルームバーグ Daryl Loo)

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