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男性に多い喉のがん 声失う前に早期治療を

男性に多い喉のがん 声失う前に早期治療を

手術で飲み込み・呼吸に影響も http://www.nikkei.com/article/DGXDZO75993870S4A820C1EL1P01/

2014/8/22付
 咽頭がんや喉頭がんは、音楽家の坂本龍一さんや落語家の林家木久扇さんが発症したことで注目されている。いずれも喉の奥にできるがんで、患者の9割は男性だ。たばこや酒を好む人に多い。最近はウイルス感染が原因となるケースも増えている。進行すると手術が必要となり、食べ物を飲み込んだり発声したりする働きに影響を及ぼすことも多い。早期に発見できれば、放射線や抗がん剤による治療効果が得られやすい。

 東京都内に住む弁護士の山中良彦さん(仮名、74)は「できれば声を残す治療をしたいと思い主治医に相談した」と振り返る。2009年10月、喉と耳の痛みをおぼえ、東京医科歯科大学病院を受診し、「下咽頭がん」と診断された。最初は手術が必要で、声を失う可能性が高いと告げられた。

 山中さんは声を失いたくないため、手術より確実に治せる可能性は低いものの、抗がん剤の投与を選び、放射線の照射も受けた。山中さんは以前、食道がんと前立腺がんにもなり、いずれも外科手術を受けた。「食道がんと前立腺がんでは手術にためらいはなかったが、声を失うとその後の生活に影響が大きいと感じた」と話す。幸い治療の効果があり、今でも元気に仕事を続けている。

■生活の質が低下

 口腔(こうくう)がんを含む喉のがんを10年に新たに発症したのは約2万人で、がん患者全体に占める割合は2.5%にとどまる。ただ亀田総合病院(千葉県鴨川市)の岸本誠司・頭頸(けい)部外科部長は「機能が集中しているので、がんができた場所や大きさによっては生活の質(QOL)の低下に直結しやすい」と指摘する。

 咽頭は、簡単にいうと鼻の奥から食道につながるあたりだ。上から上咽頭・中咽頭・下咽頭に分かれ、食べ物と呼吸の通り道だ。一方、喉頭はのど仏の裏で発声を担う器官があり気管につながる。咽頭と喉頭はうまく連動して、食べ物を食道に送る飲み込み機能が働く。がんを手術で取ると周辺組織の働きが低下し、発声や飲み込み、呼吸などの機能を損ないやすい。

 このうち食道の上端とつながる部位である下咽頭にできるがんは、60歳以上の男性に多く飲酒が主な原因だ。特に酒に弱いのに無理して飲み続けた人は要注意だ。患者の3~4割は食道がんも併発しているとのデータもある。初期段階で食べ物が飲み込みにくかったり喉が痛んだりするが、目立った症状がないままリンパ節に転移し首が腫れてから見つかることもある。

 下咽頭のすぐそばにある喉頭にできるがんは喫煙者に多く、非喫煙者に比べて発症するリスクが30~40倍も高い。声のかすれが早くから出ることが多いので、比較的早い時期に気がつきやすい。

 いずれも症状がある程度進んだ場合は、首の周囲から切開してがんを取り出すのが一般的だ。進行した下咽頭がんでは完全に取り切るために喉頭も切除し、小腸の一部を移植して食べ物の通り道を作り直すような大がかりな手術となる。手術後には首に開けた気管の穴から呼吸する。出にくくなった声を出せるようにするため、食道の粘膜を使う食道発声の訓練や、特殊なチューブの埋め込み手術をする場合もある。

 がんが表面にとどまっている場合などは内視鏡で切除したり、放射線と抗がん剤を併用したりする。声は残せるが、唾液が分泌されにくくなったり食べ物が通りにくくなったりすることがある。

 中咽頭はへんとう腺や舌の付け根にあたり、呼吸の空気と食べ物の交差点となっている。飲み込む際に気管の入り口にふたをして食べ物が気管に入り込まないようにする役割がある。東京都立多摩総合医療センター(府中市)の中屋宗雄医長は「手術によって飲み込み機能に影響が出る場合もある」と説明する。上咽頭がんは鼻の奥に病巣ができるため、抗がん剤や放射線による治療が主体だ。

■ウイルスも原因

 最近、がんの原因として注目されているのがウイルスだ。中咽頭がんでは「子宮頸(けい)がんの主な原因のヒトパピローマウイルスに関係するタイプが増えている」と岸本部長は指摘する。口を使った性交渉による感染などが原因という。このタイプは放射線や抗がん剤による治療が比較的効きやすい。国内では患者は少ないが、上咽頭がんは子供の頃に感染していることが多いEBウイルスが関係する。

 咽頭・喉頭がんでも比較的に早期であれば、機能を温存して根治できる可能性は高いが、肺や骨などに転移する場合もある。手術をするか、放射線治療と抗がん剤を併用するかなどをおおまかに定めた診療ガイドラインも作られている。ただ、がん研有明病院(東京・江東)の川端一嘉・頭頸科部長は「治療法は患者本人の考え方を重視して決める」と話す。一般に治療経験の多い専門医のいる病院のほうが選択の幅が広くなる。

 長く続く声がれや喉の痛み、飲み込み時の違和感がサインとなる。早めに耳鼻咽喉科や頭頸部外科を受診しよう。

(西村絵)

[日本経済新聞夕刊2014年8月22日付]

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