はびこる危険ドラッグ
はびこる危険ドラッグ
http://www.asahi.com/area/kanagawa/articles/MTW20140916150150001.html
2014年09月15日
前県議にも逮捕者を出した危険ドラッグ。取り締まりの厳しさが増す一方、県内には今も「ハーブ」などドラッグの販売業者が10以上あるという。県内ではドラッグを使用して変死した人がこの3年間で少なくとも18人。専門家は「人体実験のようで危険」と使用の無謀さを訴える。
■ハーブ店「使い方、客次第」
横浜の繁華街のビルで営業する二つのハーブ店を訪れた。どちらも「ドラッグ」「ハーブ」などの看板はなく、外観からは何の店か分からない。
店内に入ると、パッケージされたハーブが何種類もショーケースに並んでいた。「明るくなって目がさえる系と、(気分などが)下がる系、どちらが好きですか」。20代くらいの男性店員から話しかけられた。「お香としてたき、香りを楽しむもの」だという。
ハーブ以外の商品は見当たらず、専門店のようだ。「0・5グラム、1グラム、3グラム。長時間効くタイプや早く抜ける重いタイプがあり、効果が違います」。効果が長い方が売れ筋という。
このやりとり中に、20代前半くらいの客が「効果が長い」ハーブを3グラム5千円で購入して出て行った。
「バカな方法をまねしなければ問題ないと思うんですけどね。いい迷惑です」。店員の話しぶりから、お香としてでなく、直接近づけて吸い込むなど量によっては危険なことは認識しているようだ。「人体摂取の目的で販売しないのが店の売り。あとはお客様がどう使うかです」。そう言いつつ、こうもつぶやいた。「こちらも教えられることと、教えられないことがあるんです。インターネットで調べてきてください」
もう1店では、暗い照明の奥の壁に、「ハーブ」と書かれた筒状や四角い箱が飾られていた。値札は200~500円と格安だ。
中年の男性店員は数種類が掲載されたカタログを取り出した。「こちらがお薦めですよ」。聞き取りづらい声で、1グラム1800円のハーブを指さした。人体に危険なものは売っているのだろうか。「そういうのはもう扱ってないですね」
■効果、大麻の10倍も 変死今年もう7人
県警薬物銃器対策課によると、今年に入って8月までに危険ドラッグの販売・所持容疑で逮捕・書類送検されたのは16人。7月には前県議(41)が所持容疑で逮捕され、罰金刑となった。ただ、現在でもハーブなどドラッグを買える店は県内に少なくとも8店あり、通信販売や配達をする無店舗型も4店あるという。うち1店は9月になって新たに把握するなど、全容は未知数だ。
県内では今年、死亡事故はないものの、ドラッグの使用後に12人が事故を起こしている。7月3日には使用した男(34)=東京都町田市=の運転する車が、横浜市中区で弁当店に突っ込んだ。負傷者はいなかったが、男は「運転中にハーブを吸い、記憶がない」と話したという。ただ、この男が使ったハーブからは違法な成分が検出されず、罪に問われなかった。
ドラッグの使用後に路上で倒れたなど、県警は今年だけで107人の健康被害を把握。8月25日には相模原市で会社員男性(53)が自宅で死亡しているのが見つかった。近くにハーブの包みがあり、錯乱状態で自ら傷つけたのか全身が血まみれだった。この男性を含め、今年だけで7人が死亡。昨年は5人、一昨年も6人が亡くなったという。
「覚醒剤や大麻と違い、人体にどんなダメージがあるのかデータもない。治療法すら確立されておらず危険。まさに人体実験をしているようなもの」
薬物の鑑定に長年携わる横浜薬科大学の篠塚達雄教授(病態生理学)はそう警告する。約10年前に欧州で生まれた危険ドラッグの成分は石油から簡単に作れ、他の薬物より格安なため全世界に広がった。効果が強いものは大麻の10倍に達するという。規制逃れのため種類が増え続け、治療どころか、成分の特定にすら数カ月かかることもある。
「幻覚作用で空間がゆがみ、狭いところが広く感じたり、速度を遅く感じたりする作用もある。特に運転は絶対にだめだ」と話す。
◇危険ドラッグ
興奮や幻覚作用がある化学物質を含む粉末や液体。乾燥した茶葉など植物片に吹き付けた「ハーブ」も含まれる。たばこにつけたり、専用のパイプで喫煙したりする。現在1400種が違法成分として薬事法で指定され、有害性や依存性が確認されれば罰則の重い麻薬成分に指定される。今年4月から、所持しているだけで罪に問えるようになった。
(大森浩司、竹野内崇宏)
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