「外資」狙い撃ち…新たな中国リスクか 巨額罰金、米国訴訟とよい勝負
「外資」狙い撃ち…新たな中国リスクか 巨額罰金、米国訴訟とよい勝負
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/141002/mcb1410020500007-n1.htm
2014.10.2 13:00
【ビジネスアイコラム】
約530億円に相当する罰金とは巨額だ。それでも世界に例がないわけではない。たばこの健康被害をめぐる米フロリダ州での訴訟では、「キャメル」などで知られるレイノルズ・アメリカン社が、236億ドル(約2兆6000億円)の「懲罰的損害賠償」の支払いを命じられて話題となったばかりだ。
冒頭の罰金額は中国湖南省での判決(9月19日)だが、仮に購買力平価を加味して中国最高額の罰金というこの「30億元(約537億円)」を比べると、米国でのたばこ訴訟とよい勝負ではないか。しかも刑事訴訟であり、被告の英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)中国法人は、罰金刑のほか、英国人を含む幹部社員5人も有罪判決を受けた。
報じられた判決を読むと、GSKは中国医薬品市場での販路拡大や薬品価格の引き上げを狙い、中国各地で行政、医療関係者らに対して、旅行代理店をトンネルに使って高額のリベート提供や接待を続けてきたという。
立件された贈賄の総額も罰金と同じ「30億元(約537億円)」。賄賂を倍取りされたに等しい。
贈賄が不正行為であることは当然としても、中国での医薬品調達をめぐる不透明さや、医師の低い給与額と高い実収入の差は、これまで中国国内でも問題視されてきた。
米紙ニューヨーク・タイムズは、GSKが贈賄ルートに利用した旅行代理店は、他の外国製薬会社も頻繁に利用していたと報じている。
このため、GSKが中国当局の「狙い撃ち」に遭ったとの声は当初から出ていた。
外資に限らず、中国の製薬会社も自社製品を患者に処方した医師への「キックバック」などが指摘されていることをみれば、是正すべきは医療分野を覆う不透明な商慣行そのものに違いない。
GSKへの処置は、外国企業の薬剤価格の引き下げを狙った強権発動とみることが可能だろう。
新薬の研究開発費や知的財産権の保護をめぐる中国の問題はここでは避けるが、巨大市場、それも老齢人口の増加で確実な医薬品の需要が見込まれる中国で、「商機」を渇望する外国製薬会社は強引なルールを押しつけられても従うほかない、と経営専門家らはみていた。
事実、GSKは上訴を見送って判決を受け入れ、「中国の患者、医師、病院、中国政府と全ての中国人民に深くおわびします」という謝罪声明まで発表した。全面降伏である。
外資系自動車メーカーに対する中国の独禁法適用とともに、司法を通じた巨額の罰金は外資系企業にとり、新たな中国リスクと認識されよう。李克強首相以下、「外資たたき」を否定する中国政府の説明は聞き置くとしても、従来になかった法的手段での外資系企業への「是正」措置は誰の目にも明らかだ。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、8月の対中直接投資は前月比17%減と、2カ月連続で2桁の減少となった。強引なやり方は、投資の引き留めに有利とは思えない。(産経新聞中国総局長 山本秀也)
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