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喫煙本数増えるほどY染色体は失われる、血液の細胞からの「喪失」、がんにもつながる?

喫煙本数増えるほどY染色体は失われる、血液の細胞からの「喪失」、がんにもつながる?

http://www.mededge.jp/b/huap/6548

2015年1月5日 4:30 AM

30年間の遺伝情報からの発見 西川伸一 THE CLUB

 引退後も学生に講義をするのは楽しい。

ゲノムの追跡で思いがけない発見

 医学部ならば、「ゲノム」「IT」「コホート」そして「コレクティブインテリジェンス」が21世紀の医学を構想する鍵になると説明。この4分野を統合し、病気の人が中心となる医療システムに転換するのが重要だと伝えている。

 特に、血液サンプルが定期的に採取され保存される「コホート」の研究が、ゲノム研究と統合されると、思いもかけないことが分かる。

 継続的に集団を追跡する研究だ。

性別に関わるY染色体がなくなる

 その例として昨年5月、性別の決定に関わる性染色体の一つ「Y染色体」が失われた血液が多くなると、がんや他の病気での死亡率が上昇することを報告したスウェーデンの研究を紹介したことがある。

 今回紹介するのも同じグループからの論文だ。

 今度はたばことY染色体喪失との関係を調べた論文だ。科学誌サイエンス誌の新年号に掲載されている。

たばこを吸うほどY染色体が欠ける

 タイトルは「喫煙はY染色体が欠損した細胞がモザイク状に血液に維持される原因になる(Smokingis associated with mosaic loss of chromosome Y)」だ。

 血液とY染色体についての研究はウプサラでの長期コホートのデータを使っているが、今回はさらに対象人数を増やすため、ツインジーン(TwinGene)およびウプサラ高齢者血管研究コホートも合わせている。総勢6000人近くの血液サンプルを調べたものだ。

 まず採血時点で喫煙を続けていると、Y染色体喪失の血液の頻度が上昇している。

 3コホート別々に喫煙についてもう少し詳しく見てみると、採血時に喫煙者であった場合にのみY染色体喪失が検出された。パーティーなどでたまに吸う人や、以前喫煙していた場合には異常は見られない。

 また現在吸っているたばこの本数が多いほど、Y染色体喪失の見られる細胞の比率が高い。

 示された結果はこれだけだ。

 たばこの影響についてこれまでとは変わった側面から教えてくれる面白い研究だ。

たばこは血液にも影響する

 まず、たばこは肺だけでなく、血液に直接働きかけて染色体異常を起こすようだ。たばこをやめると元に戻るようなので、寿命がそれほど長くない前駆細胞に働いて異常を誘導している可能性が高い。

 ただ、たばこでこれほどの影響があると、血液とY染色体についての以前の論文でY染色体喪失と死亡率との相関が見られたが、死亡率の上昇は単純にたばこの影響かもしれない。

 今回の論文ではあくまでもY染色体喪失と死亡との関係について主張している。たばこがY染色体喪失を誘導し、この結果起こるがんに対する免疫反応の低下の結果、がんや他の病気が上がるというシナリオだ。

病気につながるかは不明?

 この主張を示すために、Y染色体喪失が最初に診断された後、20年にわたって生存している91歳の高齢者3人を選んで91歳時点で血液を取り、「T細胞」「B細胞」「顆粒球」という血液の中の細胞を分離。それぞれのY染色体喪失の頻度を調べている。

 この結果、異常の頻度は血液の細胞の種類に一様に起こっているわけではなかった。顆粒球で異常細胞の頻度が高い。異常がランダムに起こっているのではない。異常な細胞は年齢とともに選択されながら、増えてくるようだ。

 免疫反応はある決まった形で低下していくということか。

 とはいえ、この結果から「たばこによるY染色体喪失がひいてはがんや他の病気を増やす」という著者らの仮説が証明されたとは言えないと思う。

30年の蓄積は力になる

 いずれにせよ、30年以上もサンプルが蓄積されたコホート研究がゲノム研究と協力するパワーをよく理解することができる。

 講義にも積極的に使いたいと思っている。

 

文献情報

Dumanski JP et al.Mutagenesis. Smoking is associated with mosaic loss of chromosome Y. Science. 2015;347:81-3.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25477213

Forsberg LA  et al.Mosaic loss of chromosome Y in peripheral blood is associated with shorter survival and higher risk of cancer.Nature Genetics 2014;46:624.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24777449

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