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がん死亡20%減は未達成、「喫煙、検診、均てん化」に課題

がん死亡20%減は未達成、「喫煙、検診、均てん化」に課題

http://www.m3.com/open/iryoIshin/article/329673/?category=report

第2期がん対策計画、中間評価まとまる      

2015年6月11日 成相通子(m3.com編集部)

 厚生労働省のがん対策推進協議会(会長:門田守人・公益財団法人がん研究会有明病院院長 )が6月10日、開催され、2012年度から2016年度を対象とする「第2期がん推進基本計画」の中間評価がほぼまとまった。協議会の意見を踏まえ、6月下旬にも確定する。現在の協議会委員は今回で任期が切れ、次回から新任の委員で2017年度の次期計画等について審議する(資料は、厚労省のホームページに掲載)。

 中間評価では、2012年度に策定された「第2期がん推進基本計画」の全体目標と個別目標について、それぞれの進捗状況と指標測定結果を示した上で、協議会として計画を推進するために必要な事項をまとめた。全体目標の死亡数20%減は目標達成が困難な状況で、今後、がん種ごとの施策が重要だと指摘があったほか、緩和ケアの推進やたばこ、がん検診受診率向上の対策の必要性が強調された。

今回で任期が切れるため、全委員が最後に2年間を振り返り意見を述べた。

 指標に関しては、国立がん研究センターの研究班が、医療者に対する意識調査や、今回初めて患者を対象にした調査を実施。目標達成の進捗状況を示す数値として中間評価に採用された。一方で目標に対し、適当な指標がないために「測定困難」となった項目もあった。

 2007年度に策定された「がん対策推進基本計画」では、2015年までの死亡者数減20%を目標に掲げていたが、国立がんセンターの推計では17%減にとどまる見込みで、達成は難しい状況だ(『「全面禁煙、がん死亡者減に不可欠」』を参照)。20%減の内訳は、自然減10%のほか、禁煙率半減とがん検診受診率50%達成、がん医療の均てん化による減少分10%が見込まれていたが、喫煙率と検診受診率は達成ができなかった。また、均てん化については調査中で数値が出ていない。

 均てん化に関しては、堀田知光委員(国立がん研究センター理事長)が「一般的な診療の進歩が計画目標の均てん化に含まれるのは違和感がある。自然減に含まれるべきではないのか」と指摘し、均てん化の指標の再考が必要だとの認識を示したが、会長の門田氏も「均てん化の指標化は非常に難しい問題」と述べ、今回の中間評価では評価を盛り込むのは難しいとした。

 これに対し、国立がん研究センターがん対策情報センター長の若尾文彦氏は、「今後、クオリティインデックス等を使って一定の評価ができると考えている」と話し、次期協議会以降で何らかの指標を具現化するとした。

会長を務めた門田守人氏。目標の指標作成は協議会の重要な課題になったと指摘した。

標準的治療実施、3割にとどまるがんも

 均てん化に関係する数値では、2012年から2013年までの院内がん登録(169施設)とDPCデータを解析した「標準的治療の実施割合」がこの日の会議で初めて公表され、基本計画の(1)がん医療の「放射線療法、化学療法、手術療法の更なる充実とチーム医療の推進」の個別目標の指標として中間評価に記載された。

 それによると、大腸がん術後化学療法実施率が49.6%、胃がん術後化学療法実施率68.2%にとどまったほか、割合が一番高かったのが肝切除前ICG15分停滞率検査実施率で90.3%、一番低かったのが乳房切除術後高リスク症例放射線療法実施率で33.1%だった(連携する他院での治療は含まれない)。

 関連学会はがん診療ガイドラインの作成をすすめ、均てん化を推進しようとしているものの、標準的治療の普及には課題があることが浮き彫りになった。

子宮頸がんは増加が加速

 がん死亡者数は17%にとどまるが、がん種別に見ると減少率には相違がある上、増加したがんもある。

 国立がん研究センターが部位別の死亡率の変化を基本計画の対象となる2005年~2015年とその前の1995年~2005年で比較した。胃がんはほぼ同じ割合で減少が続いているのに対し、大腸がん、肺がんは減少傾向が鈍化、乳がんはほぼ同じ割合で増え続け、子宮頸がんは増加が加速していた。基本計画の期間で死亡率の減少がさらに進んだのは肝臓がんだけだった。

 同センターの総括では、全体のがん死亡数の減少が目標を下回った理由として、肺がんや大腸がんの死亡数減少の鈍化が上げられると指摘。喫煙者数減少やがん検診の受診率向上が重要だとの認識が再確認され、中川恵一委員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)は「胃がんや肝臓がんなど感染型のがんが減っているのは自然な流れ。それなのに子宮頸がんはまた増加傾向にあり、特に20代、30代で増えている」と指摘し、ワクチンや検診について検討が必要だと述べた。

中川恵一氏は、喫煙対策や子宮頸がん対策の重要性を強調した。

AYA世代の対策も次期以降に

 また、中間評価には、次期協議会での審議の課題として、「今後のがん対策の方向性について~これまで取り組まれていない対策に焦点を当てて~」とする資料を添付した。もともとのがん対策推進基本計画も明確な記載がないものの、今後、推進が必要な事項を指摘した。

 医療経済的な観点やデータ統合推進の重要性、がん患者への情報提供の在り方や障害者への支援等の必要性、さらに「小児期、AYA世代、壮年期、高齢期者等のライフステージに応じたがん対策」として、これまで触れられることの少なかった思春期世代と若年成人世代に当たるAYA世代のがん対策や、高齢者のがん患者の治療法選択の支援の重要性等が記載されている。

 これらについて、「早急な対策を講じるとともに、次期基本計画を作成する際に考慮すべき」としている。

研究班や情報提供にも課題

 そのほか、進捗状況を示す指標の調査方法や、科学的根拠に乏しい情報に関する懸念について指摘があった。

 調査方法に関しては、厚生労働省の研究班として国立がん研究センターの研究者らが調査を実施したが、堀田氏は「データをきちんと収集するためには、がん対策推進協議会の事業という位置づけにするべきだ」と主張。「研究班」として医療機関などにアンケートを依頼しても断られるケースがあると指摘した。

 科学的根拠に乏しい情報についての懸念は、濱本満紀委員(NPO法人がんと共に生きる会副理事長)が指摘。濱本氏が提出した「患者が藁にもすがる思いで信頼性に劣る高額な治療に走ったり、本来受けられるべき治療を受けなかったりする例が後を絶たない。何らかの規制や指導の検討を望む」とする意見書を踏まえて、より正確な情報提供をする取組みが必要との文言が中間評価に加えられた。

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