たばこやインフルエンザで大きな問題、肺で「ビタミンA」が機能しなくなる
たばこやインフルエンザで大きな問題、肺で「ビタミンA」が機能しなくなる
http://www.mededge.jp/a/resp/13827
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の新たな治療法につながる発見
2015年6月3日 9:30 AM
たばこの煙やウイルス感染にさらされると、肺では体内でビタミンAの変化した、レチノイン酸の機能がしにくくなっていると分かった。
機能を回復させると、呼吸の能力が落ちる「たばこ病」とも言われる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の新たな治療法につながる可能性もあるようだ。
ウイルス感染でCOPD悪化
米国エール大学を含む研究グループが、米国胸部学会が発行する呼吸器系の専門誌アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピラトリー・セル・アンド・モレキュラー・バイオロジー誌オンライン版で2015年4月29日に報告した。
肺気腫を含めCOPDのような重い病気になるのは長期喫煙者の10~20%にとどまる。
COPDの人がウイルスに感染するとさらに肺のダメージが重くなる。
ウイルスに対抗する免疫反応では「インターロイキン15」と呼ばれるタンパク質が重要な役割を果たしている。
特に肺では、レチノイン酸が組織の修復/保全に一役買っている。研究グループは動物実験を行い、肺がたばこの煙にさらされた場合とインフルエンザウイルスに感染した場合に、このレチノイン酸とインターロイキン15がどのような作用を及ぼすかを調べた。
レチノイン酸が減少
その結果、たばこの煙に長期間さらされた場合とインフルエンザウイルスに感染した場合のいずれも、レチノイン酸の合成が減少していた。たばこの煙にさらされてからインフルエンザウイルスに感染した場合にはさらに減少すると判明した。
インターロイキン15を過剰発現させたネズミの肺では、レチノイン酸と結合してさまざまな作用を発揮する「レチノイン酸受容体」が減っていた。
一方でインターロイキン15を出さなくしたネズミの肺では、ウイルス感染後にレチノイン酸受容体が増加し、たばこの煙とウイルス感染によるレチノイン酸受容体の減少は起きないことも分かった。
従って、このレチノイン酸受容体の機能回復が可能であれば、たばこの煙とウイルス感染による肺の損傷を軽減して、米国でも主要な死因のひとつであるCOPDの新たな治療法につながる可能性がある。
文献情報
Research in the news: Vitamin A receptor may help protect lungs from smoking, viral infections. Yale News. 2015 May 7.
Wang J et al. Interleukin-15 Regulates Retinoic Acid Receptor Beta in the Lung During Cigarette Smoking and Influenza Virus Infection. Am J Respir Cell Mol Biol. 2015 Apr 29. [Epub ahead of print]
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