たばこの害 責任は1・5兆円 カナダ集団訴訟 高裁、3社に支払い命令
たばこの害 責任は1・5兆円 カナダ集団訴訟 高裁、3社に支払い命令
2015.6.6 15:00更新
http://www.sankei.com/world/news/150606/wor1506060004-n1.html
カナダ東部ケベック州の喫煙者らが大手たばこ会社を相手取って起こした2件の集団訴訟で、ケベック州の高等裁判所が1日、たばこ会社3社に対し、総額150億カナダドル(約1兆5000億円)の損害賠償支払いを命じる判決を言い渡した。支払額はカナダの訴訟では過去最高額。裁判所は、ケベック州で過去半世紀にわたり約100万人の人々がたばこの害によって病気や中毒になったが、その責任が、たばこ会社にあると裁判所が認定した。(SANKEI EXPRESS)
JT子会社も
今回、歴史的な損害賠償金を支払うことになった3社は、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の子会社インペリアル・タバコ・カナダと米フィリップ・モリス・インターナショナル子会社のロスマンズ・ベンソン・アンド・ヘッジズ、日本たばこ産業(JT)の子会社JTIマクドナルドの3社。3社とも判決を不服として控訴する意向だが、今回の判決によって、カナダではますますたばこ離れが進みそうだ。
カナダ放送協会(CBC)やカナダの民放テレビネットワーク局CTV、カナダ紙ナショナル・ポスト紙(電子版)などによると、今回の集団訴訟は、喫煙によって肺がんや咽喉(いんこう)がんなどを発症したと訴える喫煙者と元喫煙者計9万9957人が起こしたものと、たばこ中毒となり禁煙できなくなったと訴える91万8218人が起こしたものとの計2件。原告はいずれもケベック州民で、賠償金を受けられるのは前者の原告9万9957人。
原告側は、たばこ会社は1950年代からたばこの有害性を知りながら、喫煙者にその危険性を十分告知をしなかったうえ、悪辣(あくらつ)なマーケティング活動などを行ったと主張。当初、270億カナダドル(約2兆7000億円)の支払いを求めていた。
「危険性の告知不十分」
2件の集団訴訟は1998年、カナダ初のたばこ会社を相手取った民事訴訟としてスタート。2012年3月から弁論が始まり、昨年12月に結審した。
州高裁のブライアン・リオーダン判事は「公衆衛生当局や大衆にこうした危険性を知らせず、喫煙者の健康より自社の利益を優先した」と断罪した。
原告のうち、1976年1月までに喫煙を始め、がんになった人は各10万カナダドル(約1000万円)、それ以降の喫煙者に各9万カナダドル(約900万円)、肺気腫を患った原告に2万4000~3万カナダドル(約240~300万円)の支払いを命じられた。
しかし、賠償金全体の67%を負担するインペリアル・タバコ・カナダの上級副社長兼法務顧問のタマラ・ジット氏は「判決は成人した消費者と政府が喫煙に関する危険性を何十年も前から知っているという現実を無視している」と憤慨している。
一方、JTIマクドナルドはカナダ国内で「喫煙リスクを十分説明せずにたばこを販売した」などとして、個人や州政府から同様の訴訟を計18件抱えているが、今回の2件を含めて判決が確定した事例はない。
JTは今回の判決に関して、係争が続くことから「2015年12月期連結業績に与える影響はない」としている。
喫煙率15%に減少
とはいえ、カナダでは国民の喫煙率がここ10年で22%から15%に減るなど、たばこ離れが急速に進んでいる。若者の喫煙を増加させるとして、すでにメントールを除く味付きたばこの発売を禁止しているほか、西部アルバータ州が9月からメントールの発売も禁止することを決めるなど、喫煙者への視線は厳しくなるばかり。たばこ会社が控訴しても、たばこへの悪イメージが覆ることはない。
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