有害物質9割減!? フィリップモリス次世代タバコの勝算
有害物質9割減!? フィリップモリス次世代タバコの勝算
http://diamond.jp/articles/-/77033
紙巻きタバコの煙に含まれる数々の有害物質の削減に成功した、火を使わないタバコを全国で発売するフィリップモリスジャパン。紙巻きタバコユーザーの心をつかむ事ができるだろうか?
20億ドルをかけて開発した
“害の少ないタバコ”
「短期的には紙巻きタバコも併売しますが、長期的には、すべてiQOSに替えていただければ。最大かつ、最善の代替物だと思っています」――。フィリップモリスジャパンが9月から順次、全国で販売する次世代タバコ「iQOS(アイコス)」。同社のローラン・ボアサール社長は、こう自信のほどを語った。
iQOSは火を使わず、タバコ葉を電子機器で加熱して吸うもの。紙巻きタバコとも違うが、リキッドを加熱して吸う、いわゆる電子タバコとも異なる商品だ。
健康被害が大きいとされる紙巻きタバコの有害物質を極力削減し、一方で味わいや喫煙体感はなるべくそのままに。そんなコンセプトで開発された次世代のタバコだ。
これまで開発にかけたコストは20億ドル(およそ2500億円)に上る。機器の開発はもちろんのこと、喫煙者本人や、周辺の人々に与える害が本当に少ないのかどうか、医薬品と同等の非臨床試験と臨床試験を行っているためだ。
iQOSを吸うと白い煙のようなものが出るが、これは煙ではなく蒸気。紙巻きタバコの煙には、ニコチンのほかにも多数の有害物質(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、一酸化炭素、ベンゼン、トルエンなど)が含まれることが分かっている。ちなみに、タールと呼ばれるものは、実はこうしたニコチン以外の有害物質の総称。紙巻きタバコの煙の主成分は、水とニコチン、そしてこれら有害物質の集合体であるタールだ。
iQOSは蒸気しか出ないため、紙巻きタバコの煙と同じ測定方法は使えない。そのため単純な比較は難しいのだが、「蒸気中の成分のほとんどは水とニコチン、そしてグリセリン」(フィリップモリスジャパン)。一方、さまざまな有害物質については、58の物質について蒸気を測定したところ、紙巻きタバコに比べて、平均で9割以上は減っていた。つまり、タール内の有害物質も大幅に削減できているということだ。
iQOSを吸った部屋の空気も測定したが、「何も吸わない部屋と、ほぼ同等という結果が出ました」(同)。つまり、紙巻きタバコで嫌われる副流煙被害も、ほぼないのだ。実際、禁煙の編集部でiQOSを吸っても、ニオイはほとんど気にならなかった。
激減する紙巻きタバコ市場
電子タバコも健康被害は未知数
蒸気に含まれる有害物質の量は激減したが、本当に人体に影響が少ないのか。それを調べるために現在進めている臨床試験(吸った人の体内での吸収量)では、14種類の有害物質について調べている。紙巻きタバコの喫煙者に被験者となってもらい、(1)そのまま紙巻きタバコを吸う、(2)iQOSに切り替える、(3)禁煙する――の3グループに分けて体内の有害物質量を測定するのだ。
これらの試験結果はまだすべて出ておらず、現段階で健康被害が大きく減らせるとは断言できない。しかし、「途中段階で出ているデータはどれも、心強いものでした」(ボアサール社長)。もしこうしたデータが出そろって本当に期待通りであることが証明されれば、がんばって禁煙するか、それとも周囲の白い目に耐えつつ、喫煙を続けるかの選択肢しかなかった喫煙者たちにとって、第3の心強い選択肢が誕生することになる。
タバコメーカーが、こうした代替物を躍起になって開発する背景には、世界的な紙巻きタバコ敬遠の流れがある。日本でも1996年度の約3500億本をピークに販売数量は減少を続けており、2014年度は約1800億本と半分にまで落ち込んだ。
紙巻きタバコの代わりに販売が広がっているのが、電子タバコだ。日本では旧薬事法の関係で、承認なしでニコチンを入れられないため、いまいちブームになっていないが、海外ではニコチン入りが販売でき、紙巻きタバコの代替物として人気を集めている。
電子タバコも、紙巻きタバコに比べて有害物質がかなり少ないと期待されたからだ。そして、iQOSと同じように蒸気しか出ないため、周辺への影響も小さいことも、人気を集めた要因だ。ゴールドマンサックスは13年、「8つの創造的破壊分野」として、3Dプリンターなどとともに、電子タバコを成長可能性の高い製品に挙げた。
しかし、本当に有害物質が少ないのかどうか、iQOSのように大規模な試験で実証されたものはない。それどころか、製品によって加熱する液体内の物質が違っており、モノによっては紙巻きタバコよりも高い濃度のホルムアルデヒド(発がん性物質)が検出された例もある。世界保健機構(WHO)は昨年、健康リスクが否定できないと注意を呼びかけた。
JTの競合品も好評
どれだけ社会に受けいれられるか
成長分野として期待された電子タバコにも“物言い”がつき始めた今、健康被害の懸念を極力少なくして、かつそれを証明しない限り、タバコメーカーに生き残る道はない。
実際、電子タバコが普及した英国やポーランド、イタリアなどではその後、普及率が頭打ち、もしくは低下している。たとえばイタリアでは、喫煙者の電子タバコ認知度は96%だが、実際に購入した人の割合は5%から15%に上昇しただけ。安全性への懸念もさることながら、紙巻きタバコに準じるレベルの喫煙体験の再現ができていないことが理由のようだ。
iQOSが目指すのは、紙巻きタバコからのスイッチだ。そのためには、紙巻きタバコと同じような味わいや喫煙体験を再現する必要がある。口元のフィルターも紙巻きタバコと同じものにするなど、細部にまでこだわったという。昨年11月から、名古屋限定で先行販売をしていたが、完全にiQOSにスイッチするお客も少なくない。
競合製品と言えるのは、日本たばこ産業(JT)の「Ploom(プルーム)」だ。iQOSに先行して、13年12月から販売をスタートさせた。細かな点では違いがあるものの、電子機器でタバコ葉を加熱して蒸気を吸うという仕組み(日本ではパイプたばこに分類される)は、iQOSと同じ。こちらも、じわじわと市民権を得ている。
しかし、たとえ蒸気でほとんどニオイがしないとは言え、“タバコ”であることは確か。社会でどの程度受け入れられるのか、まだまだ未知数だ。そのためにも、フィリップモリスの試験結果が待たれるところだ。
フィリップモリスは現在、iQOSのほかにも3種類の「害の少ないタバコ」の開発研究を行っている。果たして最新鋭のテクノロジーは、禁煙せずに喫煙者が救われる製品を世に出しうるのだろうか。
(ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)
| 固定リンク
「新型たばこ」カテゴリの記事
- 加熱式タバコ使用、自覚的頻発頭痛と有意に関連-長岡技科大ほか(2026.07.26)
- フィリップモリス、無煙たばこ旋風で株価が過去最高値に——IQOSとZYNがけん引(2026.07.25)
- 電子タバコ「ニコパフ」厚労省が注意喚起(2026.07.25)
- 「電子タバコ」でも起きる「受動喫煙」の害とは(2026.07.18)
- 受動喫煙対策の取りまとめ案 加熱式たばこの規制強化見送り 「喫煙目的施設」は自治体への届け出制に 厚生労働省(2026.07.18)


最近のコメント