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がん予防…林家木久扇さんの体験参考に

がん予防…林家木久扇さんの体験参考に

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 がんをどう予防し、どんな治療法があるのか。喉頭がんから復帰した落語家の林家木久扇さんとともにBS日テレ「深層NEWS」に出演した中川恵一・東大病院放射線科准教授は、有効性が確認されている検診の受診率を向上する必要性を訴えた。(構成 読売新聞編集委員 伊藤俊行)

◆中川恵一・東大病院放射線科准教授が予防・治療の現状を解説

 ――番組では、まず林家木久扇さんが、喉頭がん治療の経緯を説明した。のどのかすれなどの自覚症状が出た木久扇さんは、胃がんを経験していたこともあり、ただちに病院で診断を受けることを決断したため、「ステージ2」の段階での発見となった。ステージが進んでいれば、声帯を切除する手術の可能性もあった。木久扇さんは、1度の治療にかかる時間が3分程度で済み、入院せずに治療ができたことに驚いたという。こうした木久扇さんの体験を踏まえ、中川さんががんの予防、治療の現状や、心構えについて、解説した。

◆喉頭がんの要因第一はたばこ

 喉頭がんは、主に声を出す臓器である喉頭にできたがんです。声がかすれてくるという症状が一番重要です。痛みはありません。

 原因としては、たばこが一番です。たばこを吸わない方もなりますが、たばこを吸う方が喉頭がんで亡くなるリスクは、32倍以上にもなります。肺がんでも、喫煙者のリスクは、非喫煙者の5倍ですから、たばこの影響が極めて大きいがんです。

 たばこを吸わない木久扇師匠がかかったのは、受動喫煙が原因かもしれません。

 喉頭がんの患者は、圧倒的に男性が多い。喫煙率の違いもありますが。現在の喫煙率は男性が3割弱、女性は1割と言われています。ただ、がん細胞ができて発見されるまで、20年かかりますから、20年前の男女の喫煙率の差が今、出ているということでしょう。

◆自覚症状出やすく、早期発見がカギ

 がんは苦しい病気、痛い病気というイメージがありますが、基本的には痛みが出にくい、つまり、自覚症状が出にくい病気です。

 その中にあって喉頭がんは、比較的早い段階から声がかすれる症状が出ます。声のかすれが続く症状があったら、耳鼻咽喉科に行くことをお勧めします。

 喉頭がんの場合、声帯にできたものはそれほど転移しません。声帯の上側や下側にできた場合は、転移することも珍しくありません。ただ、がんの中では相対的に治りやすい。ステージ3、4と進むと、声帯をとる手術をしなければならない場合がありますが、喉頭がんは症状が出やすいので、結果的には、それ以前のステージで早期に治療が始められれば、放射線治療を選択できるため、声を保てる利点があります。

◆進化する放射線治療

 放射線治療の場合、1回の治療で、実際に放射線をかけている時間は1分程度でしょう。よく、放射線治療で「焼く」といいますが、患部の温度は2000分の1度ぐらいしか上がりませんし、痛みも何も感じません。いろいろな方向から放射線をあてることがありますが、がんの病巣だけに放射線を集中できれば、いくらかけても正常な細胞に影響はないので大丈夫です。そういう方向に進化しています。

<喉頭がんの照射前後の経過=中川恵一准教授提供>

 一部、正常な細胞にも放射線はかかりますが、ダメージが回復しないがん細胞と異なり、正常な細胞は放射線を受けてもダメージが回復してきます。

 治療後、2週間から1か月くらいで声が出るようになります。がんが治るまで少し時間がかかることと、炎症が治るのに時間がかかるためです。がん細胞自体は、最終的には免疫の細胞が食べて、かさぶたが小さくなるように消えていきますから、少し時間がかかるのです。

 放射線治療の主なメリットは、基本的には入院が要らず、通院で治療できることです。おそらく8割、9割の方は通院で治されていると思います。私が関係している東京都内の病院では、夜10時まで放射線治療をやっていますので、フルタイムで働いた後に通院して受けることができます。仕事をしながら、家事をしながら、治療できることは大きな利点です。

 また、高額医療費制度があり、99%以上は保険でまかなえますので、多くの方は月8万円程度で治療を受けられます。放射線治療に使うリニアックという機械は全国で1000台くらいありますから、全国で受けられます。喉頭がんの場合は発声機能を保てますし、乳がんの場合は乳房を温存し、美容を保てるというメリットがあります。

 ただし、同じ部位で再発すると、多くの場合、放射線治療はできなくなります。別の部位であれば、放射線治療は可能です。

◆大切なのは有効な検診

 日本人でがんの検診を受けている比率は3、4割で、先進国の中でもっとも低いレベルです。欧米では8割近くが受けています。

 がんは一種の老化現象です。日本人は世界一の長生きになってきたので、「日本人の2人に1人ががん」という状況が、「3人に2人ががん」となって、がんになることが当たり前になる時代になりました。早期がんというのは症状を出しませんから、症状がないうち、つまり、「私は元気だ。がんではない」と思っている時にこそ、検査を受けていただきたい。

 腫瘍マーカーを使った検診をやっても、死亡率を下げるという効果が確かめられていませんから、いわゆる「エビデンス」がなく、積極的には薦められません。有効性が確立されている検診をやっていくことが大事です。例えば大腸がんは2日検便するだけです。そんな簡単な検診だけで、大腸がんの死亡率は3分の1ぐらいに下がるのです。

 胃がんは40歳以降、年に1回バリウムを使って、大腸がんは40歳以降、年に1回検便で、乳がんは40歳以降、2年に1回マンモグラフィーを使って検診する。肺がんは年に1回レントゲン。たばこを吸う方は、

たん

にがん細胞がないかどうかみてもらうといいでしょう。子宮頸がんは20歳以降、2年に1回の細胞診を受けることが大事です。

 がん治療でのセカンドオピニオンについては、命がかかった治療ですから、いろいろな意見を聞いたらいいと思います。高額のものを買うときに、慎重に選ぶのと同じように、いろいろな意見を聞くことに遠慮をする必要はありません。

 がんという病気は、命に限りがあるということを教えてくれるところがあって、がんを経験された方は、一回り格上の人間になっておられるような気がします。けれども、がんにならないのに越したことはありません。たばこを吸わないなどの予防をし、それでもがんになるのですから、症状が出たらすぐ病院に行くようにしてください。

(2015年8月26日 読売新聞)

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