電子たばこの禁煙効果、専門家の意見が衝突
電子たばこの禁煙効果、専門家の意見が衝突
http://jp.wsj.com/articles/SB11640581799754933369104582001470809795622
賛成派は「効果的」、反対派は「より良い安全な方法がある」
By Jed E. Rose and Pamela Ling
2016 年 4 月 13 日 10:06 JST
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米国ではこの10年で喫煙の人気は急激に下がってきたが、健康に悪いことに変わりはない。
米疾病管理予防センター(CDC)によると、米国で喫煙による死者数は毎年48万人以上。およそ5人に1人の死因が喫煙と関係している。これに加え、喫煙に関連する病気にかかっている人の数は1600万人になるという。米国人にたばこをやめさせるため、さらなる行動が必要なのは明らかだ。
電子たばこが喫煙者に健康リスクをほとんど負わせることなく、本物のたばこから引き離すことにつながると述べる人がいる一方、そのどちらも誤っていると指摘する人もいる。
米デューク大学のジェッド・E・ローズ教授(精神医学・行動科学)は電子たばこが禁煙ツールになると主張する。これに反対するのがカリフォルニア大学サンフランシスコ校・たばこ管理研究・教育センターのパメラ・リン教授(医学)だ。
賛成意見:ローズ氏「電子たばこは効果的で安全と言える」
電子たばこが健康にどのような影響を与えうるかを評価する前に、喫煙のため死亡したり病気にかかったりする人の数が全世界で驚くほど多いことを念頭に置く必要がある。この文脈において、こうした状況を変えてしまうかもしれない新しい有望なアプローチに水を差すべきではない。
潜在的な新治療法がどのようなものであれ、長期的に起こりうるあらゆる影響を徹底的に分析するには多くの年数がかかることを認識しながら、現在入手可能な情報に基づいて電子たばこを評価する必要がある。そして現在の情報では、電子たばこが禁煙を安全に補助できることが示されている。
‘状況を変えてしまうかもしれない新しい有望なアプローチに水を差すべきではない’
米公衆衛生局長官を含む複数の専門家は、喫煙に絡む病気の大部分を、一般的なたばこにも電子たばこにも含まれるニコチンではなく、たばこの燃焼生成物と関連付けてきた。
ニコチンは非常に依存性の強い物質だが、喫煙者に見られるがんや肺疾患、血管の病気などの原因ではない。ニコチンを含む製品の使用を完全にやめるのが理想的な目標となるが、自力で禁煙しようとする人のうち長くやめられるのは5%に満たない。また、医療関係者の支援があっても成功率は10%ほどでしかないのだ。
この意味で、普通のたばこからニコチンを含むが燃焼しない電子たばこに変えることができれば、生命を救う非常に有望な手段が提供されることになる。
利用可能な実証データが圧倒的に支持しているのは電子たばこが適度な安全性を持つことだが、最も重要なのはたばこよりもリスクがはるかに小さいことだ。
この効果に対する専門家の意見は一致しているが、一部の研究者は過度に誇張された健康被害に注意を振り向けている。こうしたリポートはセンセーショナルになりがちで、マスコミに大きく取り上げられることも多い。例えば、これまでに出たリポートの一部には、電子たばこが普通のたばこに含まれる毒性物質「ホルムアルデヒド」を生成することが示唆されている。ただ、最近の研究によると、通常の使用状況では電子たばこが発するホルムアルデヒドの量は普通のたばこよりもはるかに少ないという。
さらに普通のたばこには多くの発がん性物質が含まれるため、ホルムアルデヒドの部分だけが喫煙者にがんを発生させるリスクは0.001%以下だと推定されている。このため、電子たばこの蒸気に含まれるホルムアルデヒドががんを引き起こす全体的なリスクは非常に小さいと言えそうだ。
電子たばこの長期的な安全性を十分に確立させるには長い年月が必要になるだろう。はるかに害の少ないことがほぼ確認されている代用品を使うのをためらわせれば、その間に多数の喫煙者が不必要に死んでしまうだろう。
反対意見:リン氏「禁煙にはより良い安全な方法がある」
医者は患者が禁煙するためのあらゆる努力をサポートすべきだが、一方で医者には安全で効果的な治療法を勧めることが期待されている。電子たばこは安全でも効果的でもない。
電子たばこを禁煙に役立てる人の話は枚挙にいとまがないし、電子たばこが効果的な禁煙方法として広く推進されてきたが、こうした主張を支持する医学的な証拠は極度に希薄だ。
電子たばことニコチンパッチの比較において、最も信頼できるとされる研究方法「ランダム化臨床試験」が行われたのは1回だけだ。この試験によると、禁煙率は電子たばこが7%、ニコチンパッチが6%と共に低く、実質的な違いはなかった。
医療関係者が広く推奨し、米食品医薬品局(FDA)から承認された最も効果的な治療計画と電子たばことを比較したランダム化臨床試験は、これ以外にない。
電子たばこが禁煙補助とならないことに、専門家の意見は一致している。米予防医学作業部会が主要な医学的証拠の検証結果をまとめたところ、禁煙に電子たばこを勧める十分な裏付けは得られなかった。また、世界保健機関(WHO)や米医師会、米内科医師会、米公衆衛生協会など主要な医療保険機関は禁煙のために電子たばこを使うのを勧めていない。その効果を立証するとされるものの質が貧弱だからだ。
状況は悪化している。電子たばこを使う人の大半が喫煙を続けているからだ。つまり、単に通常の喫煙に電子たばこが加えられただけなのだ。
禁煙のため電子たばこを試したことのある多く人は、宣伝や報道、口コミから情報を得ていた。ランダム化臨床試験に参加した人ではなく、自分で電子たばこを使用した人を対象に実施された調査を見ると、実社会の消費者が禁煙のために使用を試みたさまざまな装置や方法が浮かび上がってくる。
電子たばこを使わない喫煙者と比較して、電子たばこ使用者がそのうち禁煙するかを調べた研究は少なくとも20例ある。
‘電子たばこが効果的な禁煙方法として広く推進されてきたが、こうした主張を支持する医学的な証拠は極度に希薄だ’
こうした対照試験を総合的に評価したところ、電子たばこを使用する人が禁煙する可能性は低いことが分かった。実際には電子たばこ使用者の大半は喫煙を続けており、電子たばこが従来のたばこを吸わせ続けている可能性が示唆されたのだ。
電子たばこ市場の急速な発展が、それを支持する主張を一段と弱めている。
大部分の研究では第1世代の電子たばこが対象となっており、それ以降に目まぐるしく投入されてきた新製品の大半は研究対象になったことがない。
新製品の中には第1世代よりもニコチンをより効果的に注入するものがあるかもしれない。そうであれば新製品は禁煙ツールとしてより良いものと言えるはずだ。ただ、新製品は熱量が多く、化学物質や微細粒子をより多く生成するため、健康には逆効果になる可能性がある。
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