喫煙による「ストレス解消」は錯覚
http://mainichi.jp/articles/20160810/k00/00e/040/200000c
毎日新聞
2016年8月10日 09時31分
(最終更新 8月10日 12時07分)
鵬友会・新中川病院(横浜市)で禁煙外来を受け持つ禁煙指導専門医師で臨床心理士の加濃正人さんに聞きました。
結論から言えば、たばこにストレスを解消する効果はありません。たばこを吸ったあとに「ストレスが減った」と感じるのは、体内にニコチンが入ることで、ニコチンの離脱症状(イライラや集中困難、落ち着かないなどの禁煙による禁断症状)が消えるのを、ストレス解消だと錯覚しているに過ぎません。
初めて吸ったときのたばこの味はどうだったでしょう。たいていの場合、気分が悪くなっただけで気持ちがよくなることはなかったはずです。これは、ニコチンを体に入れても、気分をよくする効果はないからです。アルコールを初めて飲んだときに、人を酔わせる効果があるのと対照的ですね。
たばこを吸い続けると、脳がなまけてドーパミン(幸せ気分に関係する脳内ホルモン)が出にくくなります。そして、体内のニコチンが切れると、離脱症状のために食事や仕事など生活全般の幸福感も目減りしていきます。そうした中でたばこを吸うと、体内で減ったニコチンを補給するため、そのときは満足感が得られるようになります。
例えるなら、きつい靴をはき続けたあとにその靴を脱ぐと足がほっとするようなもので、「きつい靴は足のストレスを解消する」とは言えませんね。
逆に禁煙すると、たばこによって起きていたニコチンの離脱症状といった普段のストレスがなくなって、精神的な健康度は上がります。対人関係のトラブルが減ったり、自動車の運転で歩行者や他のドライバーに対して優しくなったりするというのも禁煙外来ではよく聞く話です。
喫煙者の半数がたばこ関連の病気で早死にすることが分かっていますので、吸い続けるよりは無理をしてでもやめたほうが健康にいいでしょう。百歩譲って、ストレスが解消できたとしても、喫煙で健康を害するのでは本末転倒というべきでしょう。ニコチンの離脱症状が続くのはせいぜい1週間です。禁煙は必ず実現できます。【小島正美】
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