なぜ、ぽっこりおなかの人は生活習慣病になりやすいのか?
なぜ、ぽっこりおなかの人は生活習慣病になりやすいのか?
中年になると、特に男性でおなか周りに脂肪が付き始める。単に「太った」で済まないのがおなか周りの脂肪の恐ろしいところで、さまざまな病気を引き起こす原因になっている。今回は、このおなか周りの脂肪が引き起こす病気のメカニズムを探ってみたい。
ぽっこりおなかは生活習慣病のハイリスク要因
肥満が健康に良くないのはご存じの通りだ。高血圧や糖尿病など生活習慣病の原因になるといわれているからだ。しかし、「肥満」といっても、どこに脂肪が付いているかによってリスクは大きく異なる。リスクが高いのは腸の周りに脂肪が過剰に蓄積している「内臓脂肪型肥満」の人だ(※1,2)。いわゆる「ぽっこりおなか」の人のことだ。
一方で、腰まわりや太ももなどに皮下脂肪が多くたまっている「皮下脂肪型肥満」の人には、糖尿病や高血圧、脂質代謝異常などの症状はあまり見られない(※1)。
カギを握るのは老化したTリンパ球
なぜ、ぽっこりおなかの人は生活習慣病を引き起こしやすくなるのか。慶應義塾大学医学部の研究チームが、これまで謎だったそのメカニズムを明らかにした。若いマウスに高脂肪食を食べさせて太らせ、内臓脂肪を分析したところ、健康で若いマウスには見られない老化したTリンパ球が短い期間で大量にできることが分かった。Tリンパ球とは免疫細胞の一種である。
次に、この老化したTリンパ球を、通常食を食べていて痩せている健康な若いマウスの内臓脂肪に細胞移植してみたところ、免疫機能に過剰な炎症が起こったり、インスリン抵抗性が見られたりするなど、高脂肪食を食べて太ったマウスによくある症状が引き起こされることが分かった。つまり、この老化したTリンパ球が生活習慣病発症に重要なカギを握っていることが明らかになったのだ(※3)。
ぽっこりおなかが引き起こす生活習慣病とどう戦うか
研究チームは、この老化したTリンパ球だけを取り除く、もしくは増加させない、といった方法で、内臓脂肪型肥満に関係する生活習慣病を予防できる可能性があると考えている(※3)。
よく知られているように、生活習慣病の予防で大切なのは、適度な運動や栄養バランスの取れた食事、たばこやアルコールを控えることなどだ(※4)。これに加えて、細胞レベルで生活習慣病を予防することができるようになれば、多くの患者やその予備軍といわれる人たちを救うことが可能だ。
しかし、細胞レベルでの予防が将来、実現する可能性が出てきたからといって、普段の生活を怠惰にするわけにはいかない。ぜひ、今まで通り、運動や健康的な食事を心がけていただき、そして、十分な睡眠も忘れずに取っていただきたいと思う。
参考・引用
- ※1:肥満と健康 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html
- ※2:内臓脂肪型肥満 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-051.html
- ※3:食べ過ぎが見た目だけでなく内臓の老化を加速させるメカニズムをマウスにおいて解明-内臓脂肪型肥満による免疫老化の怖さ-
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2016/11/8/28-18720/ - ※4:公益社団法人千葉県栄養士会 生活習慣病の予防と食事 http://www.eiyou-chiba.or.jp/commons/shokuji-kou/preventive/seikatusyukan/
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