「電子たばこ」
「電子たばこ」
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161122-OYTET50028/
2016年11月22日
■「電子たばこ」はたばこにあらず
「電子たばこ」の登場が世界のたばこ対策に波紋を投げかけています。一見、似たような商品でも、様々な種類があり、健康への影響はよくわかっていない面があります。さらにこれとは別に、タバコ葉を原料とする「加熱式たばこ」もあり、新しいたばこをめぐる状況を複雑にしています。
厚生労働省が8月にまとめた喫煙と健康影響に関する報告書(通称「たばこ白書」)などによると、電子たばことは、溶液を電気で加熱して霧状にしたものを吸い込む商品を指します。溶液は食品添加物などに幅広く使われるグリコール類を主成分に香料などが加えられ、ニコチンを含むものと含まない商品があります。たばこ事業法は、葉タバコを原料とするものをたばこ製品と定義しており、これらの電子たばこは葉タバコを使っていないため、法律的には「たばこ」ではありません。
電子たばこのうちニコチンを含むものは、医薬品医療機器等法の規制対象となります。国内で承認を受けたニコチン入り電子たばこはなく、国内で使用されているニコチン入りのものはインターネット等で個人輸入されたものと見られます。
■「禁煙」への効果は?
世界保健機関(WHO)によると、電子たばこはアメリカを筆頭にイギリスや欧州などで近年使用が増え、2015年の売り上げは世界で約1兆円とのことです。たばこに比べれば有毒性は低いと見られるものの、何千種類もあるという溶液成分の健康影響や長期的な病気の発症など、現時点では研究は不十分とされています。
安全性に加え、関心の焦点は、電子たばこが禁煙の推進に役立つのか、それとも、たばこ規制にとってむしろ障害となるのか、という点です。
アメリカのある研究では、電子たばこ使用者の多くは喫煙者であり、使用理由で最も多かったのが禁煙や健康目的でした。様々な研究論文が発表されており、ニコチン入り電子たばことニコチンなし電子たばこで減煙への効果を比べたものもあります。日本で禁煙補助薬として認可されているニコチン製剤はガムとパッチだけですが、海外では口から吸うインヘラーと呼ばれるタイプがあり、これと電子たばこを比較した研究などもあります。ただ、様々な研究報告が出されつつありますが、現状ではまだ結論を出せるだけの信頼性の高い研究データは不十分で、今後の研究を待つという状況のようです。
電子たばこは、むしろたばこ規制にとって障害になるのではという懸念も指摘されています。たとえば通常のたばこを続けつつ、禁煙スペースでは電子たばこを使うといった併用によって、すっぱり禁煙する意欲を妨げるといったことが考えられます。
■ENDSとENNDS
ちなみに、電子たばこは、英語で「Electronic cigarettes」とか「E-cigarettes」と言いますが、WHOはこの呼び方をしません。ニコチン入りは、「Electronic nicotine delivery systems(ENDS)=電子ニコチン送達システム」、ニコチンを含まないものは、non-nicotineなので「ENNDS」と表記しています。WHOが電子たばこという用語を使わない理由について、たばこ白書では、「電子たばこはたばこ産業が意図して命名したもの」と言及しています。研究論文でも、「ENDS」が使われているものもあれば、「Electronic cigarettes」と書いているものもあり、まちまちです。
■加熱式は「たばこ製品」
電子たばこをめぐる状況をさらに複雑にしているのは、タバコ葉を原料としながらも、燃やさずに、電気で加熱して吸入する新しいタイプのたばこ製品が登場していることです。これらは、いわゆる電子たばことは異なります。たばこ事業法に基づく「たばこ製品」であり、電気加熱式などと呼ばれています。当然、未成年の使用は禁じられています。ただネットなどでは、こういったたばこ製品も電子たばこと混同して表記されているケースを見かけることがあり、注意が必要です。
2020年の東京オリンピックを控えて受動喫煙対策の充実が求められているなか、こういった新しい製品にどう対処するかという問題もあります。
東北大学は今年9月、ホームページに「いわゆる『新しいタバコ』に対する東北大学病院の姿勢について」を掲載しました。それによると、「新しいタバコには(中略)多種多様の製品があり、それらの安全性が製品ごとに異なるため、外部から危険なものと安全な製品を見分けることはできません」「とくに若い世代に対して、新しいタバコが本格的な喫煙への入り口になることを重く受け止めたいと考えています」などとして、新しいたばこも含めて敷地内禁煙の対象とする旨の見識が表明されています。
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