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「がん教育」広がる…学校で体験談、生徒「親に検診勧める」「たばこ吸わない」

「がん教育」広がる…学校で体験談、生徒「親に検診勧める」「たばこ吸わない」

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170111-OYTET50005/

2017年1月11日

 病気のがんについて理解を深める「がん教育」が、広がっている。患者の体験談などを聞き、命の大切さを学んだ子どもたちを通じて、社会全体で予防意識が高まることが期待されている。

 「『死んでしまう』と思いました。怖くて、怖くて……」。福岡市中央区の市立友泉中学校。同市在住のがん経験者、中原美夏さん(49)が語り始めると、2年生約280人が真剣なまなざしを向けた。

 中原さんは39歳の時、胸にしこりを感じて病院を訪れ、その日のうちに乳がんと告知された。当時、中1と小5の2人の娘がいた。「どうやって家に帰ったか覚えていません」

 中原さんは続けた。娘たちにがんを伝えることを考えると、涙がこぼれて台所でタマネギを切ってごまかしたこと、家族が寝静まった後、風呂場で一人で泣いたこと……。自分の母親と重ね合わせたのか、すすり泣く生徒もいた。

 告知から1か月後、手術を受けた。抗がん剤やホルモン療法に耐え、その後、がんの再発は確認されていない。「勉強や給食、楽しいおしゃべり。当たり前と思っていることは、実は当たり前じゃないんだよ」。そう訴えると、生徒らは深くうなずいた。

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 がんは1981年から死因のトップだ。小中高校の保健分野では、生活習慣病の一つとしてがんを学ぶことになっているが、国は「がん対策推進基本計画」で不十分と指摘した。

 これを受け、文部科学省は2014年度からがん教育に力を入れ始め、外部講師の派遣などに取り組むモデル自治体を指定。福岡県や佐賀県など21自治体70校が実施した。今年度は熊本県、宮崎県なども加わり、26自治体137校に広がっている。

 昨年12月には、がん教育の推進を盛り込んだ改正がん対策基本法が成立。文科省は今年度、がんの教材や授業で外部人材を活用する際の指針を作成し、来年度からの全国展開を見据える。がん教育を実践する教員や外部人材の研修など、各地の取り組みも後押しする方針だ。

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 今年度、小中高15校で推進する福岡市は、がんの啓発活動を行うNPO法人「キャンサーサポート」(福岡市)と連携し、がん経験者や医療従事者による出前授業を実施。子どもたちと接する教員も、がん教育に積極的に取り組んでいる点で注目されている。

 友泉中では、家庭科の平川

成子

しげみ

教諭(49)が授業で、妊娠中だった21年前、卵巣に腫瘍が見つかったことを語った。長男を出産後に腫瘍を取り除くと、幸い悪性ではなかった。抱え続けた不安、励ましてくれた周囲への感謝……。「命の大切さをしっかりと伝えられる先生になろうと決めた」と振り返り、栄養バランスや適度な運動など、がん予防のポイントを伝えた。

 がん教育は生徒の心に着実に響いている。2年生の女子生徒(14)は「偏った食事をせず、運動も心がける。両親には『時間をつくって検診に行って』と伝える」と話した。男子生徒(14)は「時間を大切にして生きたい。大人になってもたばこは吸わない」と誓った。(桜木剛志)

がん検診、受診率4割程度

 国立がん研究センターによると、生涯を通じてがんになる確率は男性63%、女性47%。がんで死亡する確率は男性が4人に1人、女性が6人に1人程度。2014年のがん死亡者は36万8103人で、がんの部位は多い順に、男性が〈1〉肺〈2〉胃〈3〉大腸、女性が〈1〉大腸〈2〉肺〈3〉胃――だった。

 一方、13年の国民生活基礎調査から推計した40~69歳のがん検診受診率は、過去1年で肺がん42・3%、胃がん39・6%、大腸がん37・9%、2年に1回の検診が推奨されている乳がんは過去2年で43・4%。20歳以上からの検診が望ましい子宮

けい

がんは、過去2年で42・1%(20~69歳)にとどまった。

 九州・沖縄・山口の9県の受診率は、熊本、鹿児島などが全国平均より比較的高く、福岡、長崎、山口などで低い傾向にある。

 国は12年6月に策定した「がん対策推進基本計画」で、「5年以内に受診率50%(胃、肺、大腸は当面40%)」を目標に掲げている。

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