東京五輪に向け熾烈 “電気加熱式”にかける たばこ業界
東京五輪に向け熾烈 “電気加熱式”にかける たばこ業界
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12151-13204/
2017年06月22日 17時00分
東京五輪に向けての受動喫煙防止法案を巡り、自民党と厚労省の間で激しい綱引きが行われ、結局は今国会での成立には至らなかった。
「たばこ業界、中小飲食店関係者からの突き上げで、自民党は一定面積までの飲食店は分煙表示すれば喫煙可とする案。一方の厚労省は、小規模バーやスナック以外は原則禁煙とする案で、双方の溝が埋まらなかった」(全国紙政治部記者)
そんなバトルを横目で見ながら、たばこ業界では、従来の紙巻たばこから電気加熱式たばこや電子たばこでの商戦が一段と激しさを増しているという。
「厚労省案では規制の方向だが、施行までに“健康への影響が明らかと証明されるまで規制対象から除外”という。しかし、実際に電気加熱式たばこ、電子たばこと病気の因果関係は、最低20年、30年はかかるとされ、この案自体が破綻している。紙巻たばこでもこれだけ揉めているのに、電気加熱式たばこなどの規制は到底無理だろうというのが、業界全体にある。そのために商品開発に力が入るのです」(業界関係者)
ここで電気加熱式たばこと電子たばこの仕組みを簡単に説明する。
前者は主に、たばこ葉の入ったスティックを電気で加熱することで、ニコチンの入った蒸気を吸うというもの。煙、灰が出ず、火を使わないためにタールなどの有害物質が出ない。加えて、たばこの味は維持するという触れ込みだ。
一方の電子たばこは、液体入りカートリッジを電気加熱し、出てくる水蒸気を吸う仕組みとなっている。
「日本国内ではニコチンを液体にすると薬事法扱いとなるため、販売できない。要は、メンソールや様々な香り入りのリキッドを楽しむというものですが、煙に似た大量の水蒸気が出るので、たばこを吸っているような雰囲気は味わえる。こちらは一般的には禁煙したい人や香りを楽しみたい人用で、愛煙家が流れているのは電気加熱式たばこの方です」(たばこ販売店員)
そこで、電気加熱式たばこでの争いがメーカー間で激しくなるわけだが、今年はその競争がさらに激化しているのだ。
先陣を切ったのは'14年、世界一のたばこ企業、フィリップ・モリスの日本法人(PMJ)。
「PMJの『iQOS(アイコス)』は300万台の大ヒット商品となり、これに日本たばこ産業(JT)が追随。昨年3月に『プルーム・テック』を発売し、こちらも絶好調です。そこへ、世界2位のたばこ企業、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が昨年暮れ、宮城県仙台市限定で『glo(グロー)』を発売したのです」(同)
『iQOS』は'16年春に全国発売となったものの、東京中心の直営店でしか手に入らず、予約待ちの品薄状態が続く。対して、殴り込みをかけたBATは『glo』を仙台限定から7月には東京、大阪、宮城県全県での販売に踏み切るという。JTも販売開始から品薄が続き、事実上の販売停止状態だったが、いよいよ6月から東京販売を開始、'18年から全国展開する。
この背景には、次のような流れがあると経営アナリストが言う。
「たばこの健康被害が世界中で声高く言われるようになった。日本も例外ではなく、その影響で喫煙者は激減。日本たばこ協会の統計では、'16年度の販売数量は1680億本で、この20年間で半減しているが、東京五輪に向け観光客が集まるなか、日本の受動喫煙対策は世界最低レベル。そのための厚労省の対策強化案なのですが、そうした環境下で愛煙家が煙や有害物質の大半を抑えた電気加熱式に飛びつき、爆発的ヒットにつながったのです」
『iQOS』は今や世界20カ国で販売されているが、日本での売上がダントツで、世界全体の9割を占めるという。
「PMJ社本体では、この日本でのヒットに気をよくし、世界中の紙巻たばこをすべて電気加熱式に切り替えていく方針と息巻いている。当然、この流れはBATもJTも同様です」(同)
となると今後、日本の厚労省は、この電気加熱式たばこを紙巻たばこ同様に規制するには「その有害性」を世界企業相手に立証しなければならない。もう一つ、過剰な規制をかければアンダーグラウンドの動きが加速される恐れも出てくる。
「普通の濃度を10倍以上にしたニコチン入り電子たばこのリキッドが、闇ルートで日本に流入しつつあるという。電気加熱式たばこを完全規制すれば、ニコチンに飢えた人たちの間で裏電子たばこが拡散し、かえって健康被害が増大しかねない」(厚労省関係者)
そんな流れを突いての電気加熱式たばこの三つ巴合戦だが、“加熱式”の健康被害の度合いはまだ判明していないことを忘れてはならない。
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