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ギリシャの禁煙化、最大の障壁はギリシャ人「規則は破られるためにある」

ギリシャの禁煙化、最大の障壁はギリシャ人
「規則は破られるためにある」
By Nektaria Stamouli
2017 年 7 月 11 日 11:54 JST
 【アテネ】2013年にアテネ中心部でバー兼カフェを開店しようとしていたカテリーナ・デルベニオティさんには、はっきりと決めたことが一つあった。それは、喫煙を認めないということだ。政府も2009年に屋内の喫煙を禁止する法律を成立させていた。
 だが、開店からわずか数時間後、もう一つの厳然たる事実に気付かされた。「規則は破られるためにある」とギリシャ人たちが信じていることだ。
 喫煙禁止の法律にもかかわらず、デルベニオティさんの店の客は無意識のままたばこに火を付けた。店内には灰皿を置かず、禁煙の表示を張り出し、客にも喫煙はできないと直接伝えたが、すべて無駄だった。今や客たちは気の向くままに喫煙しているという。喫煙しながらのコーヒーで一日が始まり、喫煙しながらのカクテルで一日が終わるという具合だ。
 ギリシャでは、タクシーの運転手はたばこを吸いながらハンドルを握る。客が乗車している時だけ、たばこを窓の外に出しているのだ。
 アミン・モハメドさんが最近、書類を提出しに地方自治体の事務所を訪問した時、室内にはたばこの煙が充満していた。耐えられなくなったモハメドさんは職員にたばこを消すよう求めたが、その職員は窓を開けただけで吸い続けたという。
 「何も変わらないだろう」とモハメドさんはつぶやいた。
 保健省のパブロス・ポラキス副大臣は昨年、記者会見中にたばこに火を付け、禁煙の規則を平気で無視した。財務省では最近、「ギリシャはたばこの火をもみ消す」という標語の大きなポスターが掲げられている廊下で、喫煙者たちがたばこを吸っていた。
 昨年10月、ギリシャ第2の都市テッサロニキにある軍将校クラブで催された昼食会では、プロコピス・パブロプロス大統領が小さな葉巻に火を付けた。すると同市市長、そして会場にいた大半の出席者もそれに続いた。
 2016年の欧州連合(EU)の調査によれば、ギリシャの喫煙率は約37%で、EU平均の26%を大幅に上回る。世論調査によれば、禁煙法の施行から7年後、バーの室内喫煙にさらされたと答えたギリシャ人は87%に達した。
 昨年、ギリシャ国会は電子たばこの喫煙を公共の場で禁止する法案を可決し、喫煙規制を強化した。審議中、本来の禁煙法を無視している国会の場で新しい法律が通過するのは皮肉だと一部の議員は指摘した。
 中道右派のニキ・ケラメオス議員は「会議室、政党オフィス、事務局、通路、トイレなど、たばこがあらゆる場所で吸われている」と述べた。「われわれが法律を順守する手本にならなければ、市民が順守するとどうして期待できようか」
 多くのギリシャ人は、国家が堕落していて信頼できないとみている。また、彼らは日々の行動に対する束縛を好まない。車は横断歩道で一旦停止しないし、二輪車はレーンを守らない。運転中の車からはゴミが投げ捨てられ、二重駐車は悪名高い。
 7年に及ぶ景気低迷と格闘するなか、ギリシャ当局の違反行為取り締まりは場当たり的になっている。予算削減の結果、アッティカ地域(アテネを含む)で交通違反や禁煙違反などを取り締まる係員の数は3分の1に減った。地方警察も規模が縮小された。喫煙に関する苦情申し立てに保健省が用意したホットラインは、ほとんどつながらない。
 禁煙違反切符の束が印刷業者から届くことになっているが、当局者はそれを何カ月も待っている状態だ。
 アテネの繁華街近くのカフェ・バーの店主、メニオス・ステルギウさんは「規則は執行されない。ギリシャでは執行される法律は一切ない」と語る。
アンドレアス・クサンソス保健相は、禁煙規則が履行されていないことを認めた。同相は「世界禁煙デー」の5月31日、「必要なのは、われわれが再出発しようとしているという感じを与えることだ」議会で語った。
 禁煙規則を違反した事業主には最高1万ユーロ(約130万円)の罰金が科されるが、抑止力になっていない(個人も、状況に応じて50ユーロから3000ユーロまでの罰金に直面する)。実際のところ、罰金徴収は難しい。
 喫煙を減らす新たな要因となるのは、1月導入のたばこ税かもしれない。たばこに課されたこの「罪悪税」は、ギリシャがEU債権者から救済資金を受け取る条件の一部だった。20本入りのたばこ1箱の値段は約4.50ユーロ(約585円)で、経済危機以前よりも1ユーロほど高くなった。これは、習慣的喫煙者だと1カ月当たり100ユーロ以上の支出を意味する。ギリシャ人の平均月収が約700ユーロであることを考えれば大きな金額だ。
 警察当局によれば、夏以降に新たな取り締まり強化を計画しているという。
 アテネ市のバレラス副市長は、十分な罰金を科されれば、事業主は規則に従うだろうと述べた。喫煙禁止法によれば、バーあるいはレストランは、罰金処分を3度受けると営業ライセンスが剝奪されかねない。
 ただ同副市長は、「店じまいを避けるため、2度目の罰金のあと、店名を変える事業所が増えるのではないかと心配だ」と語った。

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