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米国のオピオイド危機を狙う法律家 国家的問題と化す依存症、第2の「巨額たばこ訴訟」となるか?

米国のオピオイド危機を狙う法律家 国家的問題と化す依存症、第2の「巨額たばこ訴訟」となるか?

英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年8月4日付

 今から20年前、米ミシシッピ州は法律の歴史に足跡を残した。ニコチンの中毒性を軽んじたとして、州司法長官がたばこ会社を提訴したのだ。1997年に州は36億ドルの損害賠償金を勝ち取り、たばこ会社が翌98年に全米46州および連邦政府機関と2000億ドル超の巨額和解金の支払いで合意する道を開いた。

 そのミシシッピ州が今、この勝利を再現しようとしている。今度の相手はオピオイド(医療用麻薬)だ。民主党に所属するジム・フッド州司法長官は昨年、薬物の中毒性を隠したと主張して医薬品会社数社に対する行動を起こした。6月には正式に、本格的な訴訟が起こされた。

 ワシントンで勃発した心理劇のために、この訴訟はまだ大きな見出しを飾っていない。だが、投資家と政策立案者がこれを無視したら愚かだ。すでに国中の地域社会を襲っている米国のオピオイド危機は急激に、国家・経済的な重要性を帯びた重大な問題と化しつつあるからだ。

 ワシントン中心部から遠く離れたところで、訴訟が雪だるま式に増えている。オハイオ州は提訴に踏み切った。オクラホマ州も、シカゴをはじめとした数十の地方自治体・都市も提訴した。そして一連の訴訟は、たばこ大手に対して使われたのと同じテーマを軸としている。医薬品会社は、オピオイド製品を不当販売し、依存症と死亡事故の爆発的増加を引き起こしたとして訴えられているのだ。

 原告側は、オピオイド依存症の治療費をカバーするために巨額損害賠償を求めている。これもまた、たばこ訴訟と似た展開だ。

 歴史は繰り返すのだろうか。投資家は驚くほど安穏としているように見える。訴訟の標的になっているパーデューという会社は非上場企業だ。だが、エンドー、デポメッド、マリンクロットといったほかの医薬品会社は上場している。これらの企業の株価は今年、バイオテクノロジー株指数を下回って推移しているが、暴落はしていない。

 一方、企業側は、たばこ流の巨額罰金が再現される可能性はほとんどないと主張する。近年、ごく小規模な和解は何件か成立している(直近では、フロリダ州で先月、和解が成立した)。

 しかし、医薬品会社はあくまで、オピオイドとたばこをひとくくりにすることは間違いだと主張する。結局のところ、オピオイドは米食品医薬品局(FDA)の承認を得てしか売られていない(たばこは違う)。また、処方箋を書くのは医師であって、メーカーではないため、さらに責任問題が曖昧になる。

 そう考えると、法廷で何が起きるかは、まだ誰にも分からない。だが、法律の細かい点ばかりに目を向けていると、要点を見落とすことになる――そして訴訟が潜在的に重要で歓迎される理由も分からなくなってしまう。

 オハイオやミシシッピの司法長官が提出した興味深い訴状をじっくり読むと、明白なのは、たとえ倫理にもとらなくとも、よく言っていかがわしい行為として描かれているマーケティングと手法について、医薬品会社が釈明を迫られる深刻な事案を抱えていることだ。訴状では、FDAなどの連邦当局が暗い光の中で描かれている。取り締まりに動くのがあまりに遅かったからだ。

 このため、ほかのことはともかく、訴訟の場がいざ法廷へ移ったときには世間の大きな注目と議論に火を付けるはずだ。そして、これはとうに起きているべきことだった。月を追うごとに、オピオイド危機の規模は悲劇の度を増し、いよいよ目を見張るものになっていく。2000年以降、30万人以上の米国人がオピオイドの過剰摂取で死亡している。多くの州では、自動車事故での死亡者数より多い。

 オピオイド危機については、米連邦準備理事会(FRB)も調査に乗り出している。例えば先月、ジャネット・イエレン議長は上院での証言で、オピオイドの使用は「働き盛りの労働者の間で労働参加率が低下している」不可解なパターンの症状であり、原因でもあると述べた。

 だが、この問題の認知度は遅ればせながら高まったものの、その原因や、拡大を防ぐ方法、そして折しもホワイトハウスが予算を削減し、医療制度を改革しようとしているときに増加し続ける治療費用を確保する方法についてワシントンにコンセンサスはない。

 共和党指導部の一部は、オピオイド依存症と戦うために450億ドル規模の包括予算を設けることを提案している。だが、オハイオ州のジョン・ケーシック知事が言うように、それは「海に唾を吐く」ようなものだ。

 だから、この理由だけをもってしても、訴訟は朗報だ。確かに、これらの訴訟は機を見るに敏で手数料に飢えた弁護士によって駆り立てられているところもある。また、確かに、和解が成立したら治療のための資金不足を埋められるとか、問題を解決できると考えるのはナイーブだろう。

 だが、もしこれらの訴訟が実際に法廷で争われていけば、医薬品産業に透明性向上を強いるかもしれない。企業経営者の間で――それも医薬品という一産業だけでなく、ほかの産業でも――、社会的責任に関する認識を高めるきっかけになる可能性さえある。もしかしたら、薬物に関する大きな時代精神を変える可能性もあるだろう。

 何しろ、たばこ大手に対する20世紀の法律闘争は2000億ドル超の和解金をもたらしただけではない。訴訟が大きく取り上げられたことが、規制当局による取り締まりと文化的な変化に貢献した。オピオイドでも同じことが起きる必要がある。

 だから、オハイオやオクラホマ、そしてミシシッピといった場所に注目しておくといい。そして、州が先導するところへ連邦当局がいずれ追随していくことを祈ろう。


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