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中毒対策として たばこの「ニコチン含有量規制」を検討、米国FDA、「常習性のない水準まで」

中毒対策として たばこの「ニコチン含有量規制」を検討、米国FDA、「常習性のない水準まで」
米国食品医薬品局(FDA)が「たばこ製品に含まれるニコチンを常習性のない水準にまで減らす新規制」を検討していることを明らかにした。
発表を受け、大手たばこメーカーの株価は急落。ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)は6.8%、「マールボロ」のメーカー、アルトリア・グループは9.5%の下落を見せた(ロイター調査)。たばこ産業にとっては総額260億ドル(約2.8兆円)の市場価値が失われかねない、重大な転機となりそうだ。
FDA長官「中毒の流行に取り組むためには、過激な手段を用いる必要がある」
米国では2009年、子どもたちを喫煙や間接喫煙から保護する目的で、たばこ規制法制「家庭内喫煙予防・たばこ管理法 (Family Smoking Prevention and Tobacco Control Act)」がオバマ政権下で成立した。今回の動きは、FDAによる強力なたばこ規制への権限を具体化したものだ。
スコット・ゴットリーブFDA長官はブルームバーグの取材で、「自分や専門家を含む多くの人々が、長年にわたりこの問題について考えてきた」と発言。「中毒の流行に取り組むためには、過激な手段を用いる必要がある」との意見に、深く同意する見解を示した。
FDAは健康被害の低減を目指す意図で、既存のたばこ製品の規制を強化すると共に、喫煙者に加熱式たばこや電子たばこなど「たばこよりも人体への害が低い可能性がある製品」への移行を推進する構えだ。
ニコチンを減らせば中毒が減る?
たばこをやめられない原因はニコチンによる中毒である。ニコチンそのものに、がんや肺疾患、心臓疾患を引き起こす根本的な原因は確認されていないものの、たばこに含まれるほかの有害物質が健康上の害になることは周知の事実だ。
その点にFDAは懸念を示している。「ニコチンの水準をゼロにしたり、あるいはたばこの販売・喫煙行為を禁止することはできない」とする一方、ニコチンを中毒にならない水準にまで引き下げることで、大幅な規制見直しを実施する意向だ。
米国政府がこうした強行手段にでた今、欧州などでも同様の働きかけが強まるとの見方が、一部のアナリスト間で強まっている。
「たばこ代用品」の安全性を見直す機会
米国の動きは、加熱式たばこや電子たばこに代表される「たばこ代用品」の安全性が見直されるきっかけにもなるだろう。
たばこ代用品の安全性に関しては、賛否両論が聞かれる。2015年に「たばこよりも95%人体への害が少ない」と発表した英国公衆衛生サービス(PHE)は、「代用たばこは100%無害ではない」ものの、タールやヒ素といった通常のたばこに含まれる有害物質の含有量が、極端に少ないメリットを挙げている。
しかし歴史自体が非常に浅いため、長期的な人体への影響はまだ明らかになっていない。
ゴットリーブF長官は「ニコチンは問題であると同時に解決策でもある」とし、「より人体に害の少ない製品を生みだすイノベーションの可能性を、認識する必要がある」と語った。
エドワード・ジョーンズ・インベストメンツでたばこ分野を分析しているアナリストのジャック・ルソー氏は、今後たばこメーカーが生き抜く上で「もっと安全で革命的な商品の開発を余技なくされるだろう」との見解を示している。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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