口からPM2.5!? iQOS(アイコス)glo(グロー)Ploom TECH(プルーム・テック)で報告
口からPM2.5!? iQOS(アイコス)glo(グロー)Ploom TECH(プルーム・テック)で報告
2017年12月07日 16時00分
江戸いろはかるたに「三遍回って煙草にしょ」がある。「休むのは後回しにして、念には念を入れて確かめよ」という戒めに読める。
「新型タバコは推奨できない」――。何度入念に確かめても、体に悪いものは悪い! そんな強い語気が聞こえてきそうな警告が発せられた。発信人は呼吸器疾患の総元締めである日本呼吸器学会だ。
2017年10月31日、日本呼吸器学会は「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する見解」を公式サイトで発表。
「新型タバコ(非燃焼・加熱式タバコ、電子タバコ)は、燃焼式タバコに比べてタール(タバコ煙中の有害物質のうちの粒子成分)が削減されているが、依存性物質であるニコチンやその他の有害物質を吸引するため、喫煙者にも受動喫煙者にも推奨できない」と表明した。
「体内に有害物質が取り込まれているのは明らか」
新型タバコの使用と各疾患や死亡リスクとの関連性は明確ではない。
だが、同学会は「科学的根拠が得られるまでには、かなりの時間を要するものの、体内に有害物質が取り込まれているのは明らかだ。新型タバコの受動喫煙による健康リスクも、科学的根拠を得るにはかなりの時間を要するが、受動喫煙の危険がないととする主張には根拠がない」と糾弾している。
日本呼吸器学会がこのような批判を緊急表明した背景には、わが国における新型タバコの急速な普及に伴って、国民の健康への弊害や社会的影響に強い憂慮を表明したかったためと推察できる(*参考:日本呼吸器学会公式サイト)。
「加熱式タバコは危険性」を立証
刑事訴訟法の大鉄則は「疑わしきは被告人の利益に」だが、喫煙の「疑わしき」は万人に利益をもたらさないどころか甚大な害悪を及ぼすリスクが極めて高い。
しかし、「加熱式タバコは危険!」とする研究が新たに加わった。産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学研究室教授の大和浩氏は、第58回日本肺癌学会(2017年10月14~15日)で、加熱式タバコが有する危険性について報告しているのだ。
近年、急速にシェアを拡大しつつある加熱式タバコは、「煙が出ない」「ニオイが少ない」などの良いイメージが喧伝され、紙巻きタバコよりも安全な印象を与えかねない。「紙巻きタバコはNGだが、加熱式タバコならOK」の飲食店もあるほどだ。
しかし、国立保健医療科学院の調査によれば、加熱式タバコは、ニコチンはもちろん、紙巻きタバコが含有する発がん性物質(タバコ特異的ニトロサミン、多環芳香族炭化水素類、ホルムアルデヒドなど)が含まれている。
産業医科大学産業生態科学研究所の大和教授は、国内で入手できる「iQOS(アイコス)」「glo(グロー)」「Ploom TECH(プルーム・テック)」の3つの加熱式タバコを被験者に使用させ、煙の可視化を試みた。
その結果、いずれの加熱式タバコも、口からエアロゾル(ミスト)が呼出され、2~3mの距離までエアロゾルが飛散することが確認された。エアロゾルの濃度は口元30cmの測定でPM2.5(2000μg/m3)に達した。
「加熱式タバコは喫煙でない」と誤認している人は17%も
また大和教授は、iQOSの全国販売の開始から8カ月後の2016年12月に、大分県の人口8万人の自治体にある自動車製造業の職員3155人(男性3008人、女性147人)を対象にアンケートを実施した。
集計率は100%で、全男性職員の回答をまとめたところ、1566人(52.1%)が紙タバコの喫煙者、273人(9.1%)がiQOS常用者で、そのうち140人(全男性職員の4.7%)が重複使用者だった。
しかも「加熱式タバコを使用することは『喫煙である』と思うか」の問いに対して、「いいえ」と誤った認識を示した人は17.0%だった。
だが、男女で比較すると、男性が17.4%、女性が8.9%と、男性が女性よりも誤認識の割合が有意に高かった。
同じ質問の回答をタバコ製品の「①現使用者」「②元使用者」「③非使用者」ごとに分析したところ、「加熱式タバコを喫煙であると思わない」の割合は、「①が22.4%」「②が10.2%」「③が6.4%」だった。
産業医科大学の健康診断問診票に限らず、国民健康・栄養調査の調査票などでも、喫煙状況については「紙巻きタバコ」についての質問しかない。
そこで大和教授は、加熱式タバコを喫煙と認識していない人の分だけ喫煙率が過小評価される、という見解だ。加熱式タバコに関しても、独立した設問が必要との考えを示している。
「禁煙の場所で加熱式タバコを使用してよいか」の質問に対しても、「はい」とする誤った認識の回答が16.7%あり、男性の誤認識率が高い。「禁煙場所で加熱式タバコを使用してよいと思う」とする回答は、非喫煙者が10%、元喫煙者が11.3%、現喫煙者が20.6%だった。
加熱式タバコのイメージ戦略が原因か?
加熱式タバコの宣伝には、「部屋の空気を汚しません」といったセールストーク、室内での使用イメージが用いられている。そのためか、禁煙にしている飲食店でも<加熱式タバコは使用可>とする店舗は増え始めているようだ。
大和教授によれば、<加熱式タバコのエアロゾルは室内の照明では見えにくいが、有害なエアロゾルが出ている>とのこと。つまり、加熱式タバコでも受動喫煙に相当する二次曝露が発生する。禁煙の場所では加熱式タバコも禁止すべき――という見解だ(参考:日本肺癌学会)。
煙が見えるか見えないか? ニオイがあるかないか? タバコはクロかシロかグレーか? その判断と行動は個人の自由。
しかし、科学の叡智が解明し、気づかせてくれる厳然たる明白な事実を知るべきだ。疑わしきは選ばず。死のトリアージュをタバコに委ねる愚劣だけは避けたい。
(文=編集部)
| 固定リンク
「たばこ対策」カテゴリの記事
- 「喫煙率」14.8% 厚労省2022年の調査 2003年以降で最も低く(2024.09.09)
- 山下公園など公園2700カ所、禁煙化 横浜市が条例改正案提出へ(2024.09.02)
- 喫煙率14.8%、過去最低 国民健康・栄養調査(2024.09.02)
- 横浜市立公園 市民意見で「全面禁煙を望む」が最多(2024.08.26)
- カナダ、無煙たばこの販売制限 若者の乱用懸念(2024.08.26)
最近のコメント