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受動喫煙対策 飲食店150平方メートル以下喫煙可

受動喫煙対策 飲食店150平方メートル以下喫煙可

2018年1月10日

改正法案を国会提出へ 緩和で早期成立優先

 厚生労働省が、難航していた受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を2018年の通常国会に提出する公算となった。焦点となっていた飲食店の面積規制について、当初の30平方メートル以下のバーやスナックに限る案から、店舗面積150平方メートル以下なら喫煙を認める新たな案に緩める方針だ。今回の方針転換は、厳しい規制を求めて自民党と対立した塩崎恭久前厚労相が17年8月の内閣改造で退任したことが大きく影響している。後任の加藤勝信厚労相は自民党との対立を長引かせるよりも、20年東京五輪・パラリンピックまでに全面施行させるため、早期の法案提出に向けて舵を切った形になった。

     当初案と新たな案で大きく変更されたのは、飲食店の面積規制だ。飲食店内は原則禁煙(喫煙専用室設置は可能)とするが、店舗面積150平方メートル(客室面積100平方メートル、厨房50平方メートル)以下なら店側の判断で喫煙可能とする点だ。当初案より大幅に緩和したが、施行時点で開業し、中小企業や個人事業主が運営する店のみ喫煙を認める要件を加えるなど、新たな案によって一定の歯止めをかけたい考えだ。

     つまり、大手チェーンや新規開業する飲食店は喫煙を認めない方向だ。外食大手のデニーズやサイゼリア、ワタミなど大手チェーンは既に全店舗禁煙に踏み切る方針を打ち出しており、こうした動きが今後も広がる可能性が高く、導入に向けて支障が少ないと判断した。さらに150平方メートル以下なら地域に根ざした中小規模の飲食店にも過度な規制にならず、「飲食店が廃業に追い込まれかねない」と当初案に反発する自民党の理解も得やすいという事情もある。

     150平方メートルという規制ラインは、もともとは17年5月に自民党がまとめた対案に由来する数字だ。政府は17年の通常国会で法改正する構えだったが、当初案に対し、たばこ業界から献金や選挙応援などの支援を受けるたばこ議連を中心に党内に反発が一斉に広がった。たばこ議連は党内の受動喫煙防止派を巻き込み、店舗面積150平方メートル以下なら喫煙できるとの対案をまとめ、当時の茂木敏充政調会長が塩崎氏に丸のみを迫ったが、塩崎氏が拒否したため両者の協議は平行線をたどった。溝が埋まらないまま会期末を迎え、法案の提出すらできなかったという経緯がある。

     霞が関や永田町界隈では、大のタバコ嫌いで知られる塩崎氏が内閣改造で退任し、タバコ業界に対しても一定の理解がある加藤氏が厚労相に就任したことで、法案提出に向けて前進するとみられていた。自民党たばこ議連は約300人が所属しており、議連幹部は内閣改造直後から「150平方メートル以下は喫煙可とする案以外は認めることはできない」と発言するなど、外堀は埋まりつつあった。

     加藤厚労相が着任した当初は、早々に自民党案を採用するかと思われたが、秋に衆院解散があったため法案内容を慎重に検討する時間が生まれた。記者会見では「総理の指示は20年の東京五輪・パラリンピックに向けて、受動喫煙対策を徹底していくために必要な法案を国会に提出することだ」などと繰り返し、対外的には慎重な姿勢を崩さなかった加藤厚労相だが、水面下で売り上げや店舗数など面積以外での規制を検討していた。ただ、神奈川県など先行している条例との整合性や地方自治体が売り上げを把握する困難さなどの面から断念し、新たな案に落ち着いた。

     厚労省幹部は「加藤厚労相は自民党案をすんなり受け入れたと世間からみられるのを嫌っていた。一方で、法案を提出するなら『150』を採用するしかないという点も理解していた。自分なりに整理して案を作りたかったようだ」と明かす。大手チェーンや新規出店する店舗では喫煙を認めないとする要件は、こうした状況から発案されたもので、加藤厚労相ならではのこだわりとみることができる。

     未成年の受動喫煙被害を防ぐため、20歳未満の客や従業員については喫煙できる飲食店やスペースには立ち入り禁止とし、働けないようにする規制が盛り込まれたが、これは塩崎氏が検討した内容を引き継いだものだ。面積規制では自民党に配慮する一方、塩崎氏ら規制強化派にも一定の気遣いをみせた。ただ、面積による線引きは「臨時の措置」と位置付けるが、見直しの時期は明示しない方向で、規制が恒久化する恐れはぬぐえない。

     当初案を支持してきた東京都の小池百合子知事は「1ケタ間違いではないかと驚いた。国の姿勢が甘いものだとお知らせになったと受け止めている。何もしませんと言っているのに等しいのではないか」と批判した。東京都は30平方メートル以下のバーなどを除き、飲食店を原則禁煙とする独自の条例案を提出する構えを崩していない。

     日本禁煙学会や日本対がん協会、日本肺がん患者連絡会などは、「受動喫煙が原因で年間1万5000人が死亡していると推定される。面積150平方メートル以下を喫煙可とする案では、国民ならびにオリンピック・パラリンピックで来日する人たちの健康を守ることはできない。タバコフリーオリンピックというこれまで守られてきた国際水準にも達していない」と見直しを求める声明を発表するなど、新たな案に反発する声もある。ただ、世界保健機関(WHO)の受動喫煙対策の格付けは当初案と同様に最低ランクの4番目から3番目に上がるため、大幅な変更は難しい情勢だ。

     厚労省は、病院や学校などの禁煙を19年9月開幕のラグビー・ワールドカップまでに先行実施し、20年4月に飲食店を含めた段階的な全面施行を目指している。今後、年明けから与党手続きを本格化させ、18年通常国会での法案提出、早期成立を図りたい考えだ。塩崎氏は周囲に「こんなに甘い案はありえない。加藤氏は何を考えているのか」などと反発しており、自民党の部会などで規制強化派の反発が広がる可能性があるが、党内は規制強化派と規制慎重派がまとめた対案をベースにした厚労省の新たな案を支持するのが大勢とみられる。

     ただ、公明党は都政の受動喫煙対策では小池知事と協調関係を崩しておらず、党内で「150平方メートルでは広すぎる」と新たな案に懸念する声が上がっている。法案提出に向けて、調整事項はまだ残されている。

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