他人のたばこの煙を吸いたくない-…
他人のたばこの煙を吸いたくない-…
他人のたばこの煙を吸いたくない-。そう訴える市民団体「嫌煙権確立をめざす人びとの会」が発足したのは1978年。あすでちょうど40年になる。非喫煙者はきれいな空気を吸う権利があるとする「嫌煙権」という言葉はここから広まった
▼当時はいつでも、どこでもたばこが吸えた。列車や飛行機の座席、公共の場所にも灰皿があり、歩きたばこや吸い殻のポイ捨ても珍しくなかった。「大人のたしなみ」に世間は寛大というより、何の問題意識もない時代だった
▼背伸びをしたい10代の若者たちは映画やドラマの主人公が格好良く紫煙をくゆらせる姿に憧れた。煙草(たばこ)の匂いのシャツにそっと寄り添うから…と19歳の松田聖子さんがかわいらしく歌っていた。今ならシャツに消臭剤をシュッとされようか
▼80年に国鉄の全車両の半数以上を禁煙にするよう求める訴訟が起きた。受動喫煙による健康への影響についての認識も深まり、交通機関や公共施設、飲食店、職場などでの分煙、禁煙が進んだ。ただし、国際的な「常識」からすれば、まだずいぶん遅れてはいるが
▼世界から多くの人が訪れる東京五輪に向け、厚生労働省は受動喫煙対策を大幅に進める意向だったが、飲食店業界や自民党内の反発で骨抜きになりつつある
▼飲食店の事情もあろうが、国民の健康を守ることが厚労省の使命である。煙草の臭(にお)いの議員にそっと寄り添うことのなきように。
=2018/02/17付 西日本新聞朝刊=
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