加熱式たばこ、安全なの? 専門家警鐘「有害物質含む」
加熱式たばこ、安全なの? 専門家警鐘「有害物質含む」
2018.1.31 09:10
最近、急速にシェアを拡大している「IQOS(アイコス)」などの加熱式たばこ。煙が出ず、有害な化学物質の発生量が少ない-といった特徴が人気の理由だが、その有害性をめぐり、専門家からは「発がん性物質が含まれている」「ニコチン依存から脱却できない」などの指摘もある。加熱式たばこは“安全”なのか。(加納裕子)
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禁煙でもOK!?
「えっ、吸えるんや」。大阪市北区の複合レストラン「ゼックスウエスト」で、禁煙エリアのテーブルに着いた男性が驚きの声を上げた。テーブルには、「アイコス・オンリー(アイコスのみ可)」の小さな表示。同店では平成28年春から、喫煙エリア以外でもアイコスを吸うことができるようになった。
同店のように、紙巻きたばこは禁止でも「アイコスなら可」のレストランやホテル、貸し会議室などが増えている。一方で、一度はアイコスのみ可としたものの、客とのトラブルなどから完全禁煙とした飲食店もあり、現場では試行錯誤が続いているようだ。
「追跡調査が必要」
加熱式たばこの国内での普及は、ごく最近のことだ。フィリップモリスジャパンが28年4月にアイコスの全国販売を始めたのに続き、昨年10月からは、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコが「glo(グロー)」を全国販売。日本たばこ産業(JT)の「Ploom TECH(プルーム・テック)」は現在、東京都と福岡市のみだが、2月から大阪市など他の6都市でも買えるようになる。
利用者も増え続け、フィリップモリスジャパンは、昨年9月時点で約300万人が紙巻きたばこからアイコスに移行したと推計。JTは、たばこ全体に占める加熱式たばこのシェアが、32年に30%を超える可能性もあると予測する。
人気の背景にあるのが、周囲への迷惑にもならず、健康リスクも少ない-といったイメージだ。そもそも「ハーム・リダクション(害の低減)」という視点で開発された製品であり、フィリップモリスジャパンなどは、紙巻きたばこに比べ、加熱式たばこから吸い込まれる有害物質は平均約90%少ないとの分析結果を公表している。
ただ、フィリップモリスジャパンは「リスクがないというわけではない」とも明言。ブリティッシュ・アメリカン・タバコの広報担当者は「紙巻きたばこと比べて健康を損なうリスクが減ったのかどうかは、実際に吸った人と吸っていない人の集団を10年や20年追跡して調査しないと、確かなことは言えない」と話す。
危険性の認識を
「紙巻きたばこと比べて低い値ではあっても、同じ有害物質が含まれている」。昨年11月に京都市内で開かれた日本禁煙学会学術総会では、加熱式たばこに警鐘を鳴らす医師らの発表が相次いだ。
加熱式たばこは周囲への悪影響がないというイメージが先行する中、他の人が吸っていた加熱式たばこによる急性症状が、約38%の人に「あった」とする調査結果も発表された。1万人以上が対象のインターネット調査で、約33%の人が気分が悪くなり、約24%がのどの痛みを感じたという。
この調査を行った大阪国際がんセンターの田淵貴大・がん対策センター副部長は「吸った人が吐き出す息には有害物質が含まれ、たとえ量が少なくても、ぜんそくの子供やがん患者などへの影響は大きい。少量でもホルムアルデヒドなどの発がん物質は含まれており、吸っている本人も長く吸い続ければ、当然がんの発症につながる」と説明している。危険性について正しく認識し、少なくとも禁煙の場所では控えるマナーは必要だろう。
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