「子供を受動喫煙から守る」東京五輪へ都が条例施行
「子供を受動喫煙から守る」東京五輪へ都が条例施行
2018年04月02日 09時23分
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東京都は1日、「子どもを受動喫煙から守る条例」を施行した。小池百合子知事が事実上率いる「都民ファーストの会」などが共同提出し昨年10月に成立。家庭内でも子どもがいれば禁煙を求める、喫煙者にとっては厳しい努力義務の一方で、罰則はない。20年東京オリンピック(五輪)へ向け国や各自治体がルール作りをしているが、それぞれ基準が違うため、市民に戸惑いも生じている。
「喫煙所以外は園内禁煙」の都内の公園。3月、花見客のブルーシートに大人、子どもが入り交じる中、喫煙者は空き缶を灰皿代わりに、気持ちよさそうに煙を吐いた。今月からは条例に反する光景となる。
園内の喫煙所も樹木で仕切られているだけで、煙は周囲に広がる。条例9条で公園も対象となっており、この喫煙所そのものも、つじつまが合わなくなる。
喫煙者の意見はさまざまだ。40代男性は「室内で吸う場所が減って、外の喫煙所で吸っている。これ以上なくなると、どこで吸えばよいのか」と戸惑った。別の40代男性は「罰則なしで守る人はいるのか」と強気。50代男性は「1人用喫煙ボックスが当たり前になるのでは」と笑った。電話ボックスを再利用して喫煙所にしている居酒屋も都内にあるという。
条例の最大の特徴が家庭や自動車など私的空間の禁煙を促しているところ。特に家庭内については、古代ローマ以来伝わる「法は家庭に入らず」との考えに反すると主張する者もいる。
「ならバルコニーで吸えばいい」(40代男性喫煙者)と言う人もいるが、集合住宅だとバルコニーは共用部とみなされ、禁煙とするマンションもある。それでも吸う人がいるため、風に乗った煙を被る近隣非喫煙家庭との住民トラブルも少なくない。
条文には「都民は、都が実施する施策に協力するよう努めなければならない」「都は、助言、支援その他の必要な施策を講ずるものとする」とあり、住民と行政が、子どもを受動喫煙から守るため協力し合うよう求めている。
では努力義務を怠る喫煙者には、どう対処すればよいのか。条例を所管する都福祉保健局の担当者に聞いた。条文では「推進体制を整備する」とあるが、現時点で条例運用のために新たな担当・チームを編成する予定はないという。「あくまで普及啓発が目的」と、指導もできないとした。
先のマンションの事例について、各管理者が条例を根拠に喫煙規制の働きかけができるか問うと「自由なので否定はしないが(行政側が民間に)促すこともない」と説明した。
実際に、ある都内マンションの管理担当者に聞くと「都条例なので無視はできないが罰則もないし、我々がこれをもとに住民に注意するのは難しい」と悩ましい胸の内を語った。
条文の理想は高い。一方で罰則はなく、現時点で都の施策はチラシ、ポスター、ツイッター、ホームページの広報や、市区町村への呼びかけにとどまる。喫煙者、非喫煙者の双方にとって玉虫色の内容で、戸惑う場面が出てきそうだ。【三須一紀】
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