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教師、紫煙が目にしみる 福岡市の学校内全面禁煙 「校門の外で」に厳しい声

教師、紫煙が目にしみる 福岡市の学校内全面禁煙 「校門の外で」に厳しい声

2018年05月18日 06時00分

 「近所の中学校の校門前で、教職員と思われる大人がたばこを吸っている。子どもに喫煙の害を教える立場なのに、どういう意識なのでしょう」。福岡市西区に住む30代女性から、特命取材班にそんな声が届いた。他人のたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」のリスクが叫ばれており、愛煙家は肩身が狭い。教育現場ではどうなっているのか。

 無料通信アプリLINE(ライン)でメッセージを寄せてくれた女性によると、平日は朝や放課後に2~3人、土日は部活動の合間にスポーツウエア姿の男性が校門の外に出てきてたばこを吸っているという。「授業で受動喫煙の危険性も教えているはず。生徒も通る校門の前で堂々と吸える神経が信じられない」と話す。

 学校での喫煙ルールはどうなっているのだろう。

 福岡市教育委員会は2005年、公共施設に受動喫煙対策を求めた健康増進法の施行を受け、市立の幼稚園や小中高校の敷地内を全面禁煙にした。16年8月には学校敷地内のプレハブ小屋を喫煙所として使い、教職員を誘って喫煙していたとして城南区の男性小学校長を減給処分にしている。

 さらに今年2月から福岡市役所が勤務時間中の喫煙を禁止したのに伴い、学校の敷地内外を問わず、勤務時間中は禁煙を徹底するよう各学校に通知を出した。

 休憩時間の喫煙は禁じていないが、そもそも教師の場合、勤務時間との境界線はあいまい。罰則はないとはいえ、女性が目撃した「教師」たちは、ルールに抵触しているように映る。

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 文部科学省が今年3月に発表した、学校の受動喫煙防止対策に関する調査では、回答があった公立の幼稚園・小中高校など約3万7千校のうち93・4%が「敷地内全面禁煙」とした。学校での禁煙は、全国的な流れとなっている。

 もっとも、自治体によって温度差もあるようだ。長崎県は敷地内全面禁煙にしている学校が51・5%と九州7県で最も少なく、生徒が近づかない敷地内の一角を喫煙所として利用している場合があるという。「住宅地の学校だと、校門前で教職員がたばこを吸うと近隣から苦情があるため、苦渋の選択をしている」と長崎市教委。こうしたケースは他の自治体でもあった。

 教師の喫煙について、法政大学特任教授で教育評論家の尾木直樹氏は「喫煙の害を教える立場として自覚が足りない。ストレス解消のためというのは言い訳にならず、教師は生徒の手本にならなければいけない」と手厳しい。尾木氏自身は非喫煙者だそうだ。

 一方、複雑な表情を浮かべるのは、自身も愛煙家という日本たばこ産業(JT)九州支社の社会環境推進担当、小田桐友哉部長。「『敷地外で吸えばセーフ』ではなく、個人のモラルやマナーが問われている。職業的立場や状況、子どものことを考えて判断しなければならない」と話した。

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 国立がん研究センター(東京)は、受動喫煙で肺がんになるリスクは受動喫煙しない場合に比べて約1・3倍となり、危険性が明確になったと発表した。20年東京五輪・パラリンピックに向け、受動喫煙対策の機運は高まる一方だ。

 かつての職員室では、たばこの煙が立ち込める光景は珍しくなかった。今は「通勤中の朝、車内でまとめて吸うしかない」(20代男性教師)という声も。愛煙家の教師にとって、年々つらい時代になっている。

 福岡市の50代の小学校男性教師は、30代でたばこをやめたという。「受動喫煙対策も、吸う権利も理解できる。ただ、喫煙だけを理由に、教師にレッテルを貼られるのはもったいない。職業上、それぞれが工夫しなければいけない時代でしょうね」と話した。

=2018/05/18付 西日本新聞朝刊=

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