受動喫煙防止法成立 実効性高める取り組みを
受動喫煙防止法成立 実効性高める取り組みを
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7月20日 09:34
望まない受動喫煙の防止を図る改正健康増進法が成立した。多くの人が集まる建物内での喫煙を罰則付きで原則禁じる初の法律だが、半数以上の飲食店が例外扱いとなったことなどで「骨抜き」との批判も根強い。
国内の受動喫煙による推計死者数は年間1万5千人に上り、もはやマナーの問題では済まされない。国民の健康を守るため、いかに実効性を高めていくか。今後の国の姿勢が問われよう。
改正法は、来年夏をめどに学校や児童福祉施設、病院、行政機関などでの屋内完全禁煙を実現。2020年4月以降は、最も受動喫煙の機会が多いと考えられる飲食店のほか職場やホテルも原則禁煙とする。煙が外に漏れないよう施された喫煙専用室や客室などの喫煙可能場所には、従業員を含め20歳未満の立ち入りを禁じる。
厚生労働省の当初案では、飲食店の例外を店舗面積30平方メートル以下のバーやスナックなどに限っていたが、自民党や飲食業界が「喫煙規制で客が減る」などと反発。結局、「資本金5千万円以下で客席面積100平方メートル以下」まで緩和された。例外対象となった店舗は、「喫煙可」と店頭に表示すれば経過措置として店内での喫煙が認められる。
経営基盤の弱いそうした中小飲食店への配慮は分からないではない。ただその結果、法施行段階で規制対象となる飲食店は約45%にとどまり、半数以上が例外となった。法施行後に開業する飲食店に例外は適用されないため、長期的には禁煙の割合は上がるものの、実効性は不透明だ。
また、利用者が増えている加熱式たばこも、受動喫煙の影響が十分解明されていないとして、専用喫煙室を設けて分煙すれば飲食しながら喫煙できるという。あいまいさは否めない。
受動喫煙防止を巡っては、衆院厚生労働委員会で参考人として発言したがん患者に対し「いいかげんにしろ」とやじを飛ばしたり、党の部会で「(がん患者は)働かなくていい」と発言した自民議員もいた。「国民の方を向いていない議員が多いことがあらためて明らかになった」(日本禁煙学会関係者)との批判が出たのも当然だろう。発言を猛省し、政権与党として受動喫煙防止に積極的に取り組んでもらいたい。
一方、東京都は、従業員を雇う飲食店は店舗面積にかかわらず原則屋内禁煙とするなど、同法に上乗せした規制を設けた「受動喫煙防止条例」を定めた。都内の全飲食店の約84%に当たる約13万軒が対象になる。喫煙専用室を設ける場合は、都が300万円を上限に設置費の9割を補助する施策も実施するという。
大阪府や千葉市なども国の基準を上回る条例策定を検討している。20年の東京五輪・パラリンピックを契機に、さらにインバウンド(訪日外国人)の増加が見込まれよう。国際基準ともなった屋内全面禁煙へ向け、国にはさらなる取り組みを促したい。
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