歌丸さん苦しめたCOPD 原因9割たばこ、予防は禁煙
歌丸さん苦しめたCOPD 原因9割たばこ、予防は禁煙
https://www.sankei.com/life/news/180713/lif1807130006-n1.html
2018.7.13 10:00
2日に81歳で死去した落語家、桂歌丸さんが患っていた慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)。たばこの煙などの有害物質が原因で肺が炎症を起こし、呼吸がしにくくなる病気だ。COPDは息苦しいなどのつらい症状で生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、虚血性心疾患や肺がんのリスクを高める。“たばこ病”とも呼ばれ、患者の約9割は喫煙者か元喫煙者で、予防はたばこを吸わないことに尽きるとされる。(平沢裕子)
◆少し歩いて息切れ
COPDは、酸素と二酸化炭素を交換する「肺胞」の壁が壊れる肺気腫や、気道に炎症が起きる慢性気管支炎など慢性的な肺の病気の総称。歌丸さんは、平成22年に厚生労働省が設置した「COPDの予防・早期発見に関する検討会」の委員を務め、検討会で自身の喫煙歴について打ち明けている。
それによると、19歳のときからたばこを吸い始め、1日約50本吸うヘビースモーカーだった。67歳のとき、人間ドックで「肺が弱っている。禁煙しないと取り返しのつかないことになる」と言われたが、吸い続けた。たばこをやめたのはそれから6年後の73歳のとき。風邪をこじらせて肺炎となり、非常に苦しい思いをしたためだ。そのころ、楽屋から高座の座布団までのわずかな距離を歩くだけで息切れがし、最初の2~3分はしゃべることができない状態だったという。
歌丸さんは「今になってたばこがすごく毒なものだということに気が付いたが、ちょっと遅かった」と後悔しきりで、自分と同じような目に遭う人をなくすために、COPDの早期発見・治療ができる体制づくりを訴えた。
◆患者は530万人
たばこがCOPDを引き起こすのは、煙に含まれる有害な微粒子が肺の中に入ることで、気管支に炎症を起こしたり肺胞の壁が破壊されたりするためだ。
厚労省によると、日本の患者は530万人と推計されるが、治療を受けているのは約26万人。COPDの正しい知識の普及活動を行う一般社団法人「GOLD日本委員会」の調査では、認知度は25%程度だ。このCOPDの認知度の低さが、受診・治療につながらない一因とみられている。
主な症状は、せき・たん・息切れの3つ。進行すると呼吸が極めて困難になり、長期間の酸素吸入が必要になる。歌丸さんも鼻に酸素チューブを装着して高座に上がっていたが、これは通常の呼吸では酸素を取り入れることができなかったためだ。
一般社団法人「日本生活習慣病予防協会」によると、COPDの人が肺がんになる確率は、COPDでない人の5倍に上る。また、動脈硬化や虚血性心疾患、糖尿病、骨粗鬆(こつそしょう)症、鬱病など肺以外の病気を合併する頻度が高いことが問題になっている。
◆早期発見で悪化防げ
COPDを根本的に治し、元の健康な肺に戻す治療法はない。ただ、呼吸器内科医の福地義之助・順天堂大名誉教授は「COPDは治療も予防も可能な疾患。早く見つけて治療を始めれば、健康な人と変わらない日常生活を長く送ることができる」と話す。
主な症状である息切れを「年のせい」と思う人も多いが、健康な人は年を取っても普通の日常生活で息切れをすることはない。階段を上ったり畑仕事をしたりなど1年前に普通にできた活動で息切れを感じるのは異常のサインで、早めの受診が必要だ。同様に、チェック表の合計が4点以上はCOPDの可能性がある。診断には、呼吸機能を調べる「スパイロメータ検査」は欠かせず、受診は呼吸器内科の専門医がいる医療機関が勧められる。
治療は、呼吸や運動などのリハビリテーション、薬の服用などを組み合わせる。栄養をしっかり取り、一度に少ししか食べられない人は、食事回数を増やすなどし、適正体重を維持するようにする。
福地名誉教授は「最大の原因はたばこなので、予防・治療とも禁煙が何より大切。高齢者の中には『もう年だから』と吸い続ける人がいるが、たばこの害は吸っている本人だけでなく同居する妻や子、孫にも及ぶ。禁煙は何歳でも効果があるので、必ず実行してほしい」と話している。
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