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加熱式タバコの「ステルス化」に要注意

加熱式タバコの「ステルス化」に要注意

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20180830-00094970/

石田雅彦  | ライター、編集者 8/30(木) 7:00

 受動喫煙について初めての法制化が実現した改正健康増進法だが、この法律の趣旨は「望まない受動喫煙の防止」だ。アイコス(IQOS)やプルーム・テック(Ploom TECH)、グロー(glo)といった加熱式タバコも規制の対象になっているが、タバコ会社は対策法の施行前に加熱式タバコの「ステルス化」に躍起になっている。

増える加熱式タバコの利用できる飲食店

 先日、成立した受動喫煙防止対策を盛り込んだ改正健康増進法では、2020年4月からの一部施行で飲食店は原則屋内禁煙となるが、一定の条件を満たす飲食店は、経過措置として例外になっている。

 それは「既存店」で「客席面積が100平方メートル以下」かつ「個人経営か資本金5000万円以下の中小企業の経営」の飲食店だ。当面、店頭に「喫煙可」などの表示をすれば店内でタバコを吸うことができる。

 こうした店舗は全国の飲食店の約55%と半分以上だというが、厚生労働省は新規開店の飲食店は例外を認めないとし、時間の経過とともに禁煙店は自然に増えていくと見込んでいる。

 例外ではない客席面積100平方メートル以上や法人や大企業経営の飲食店の場合、基準を満たす喫煙専用室を設ければ喫煙が認められるが、喫煙専用室での飲食はできず、20歳以下の客や従業員の立ち入りも制限される(20歳以下規制は例外店も同じ)。

 加熱式タバコについては、当面、例外以外の飲食店で加熱式タバコ専用の喫煙室の設置が義務づけられる。こちらも20歳以下の客や従業員の立ち入りはできず、専用喫煙室という表示も必要だが、室内での飲食は可能だ。

 アイコスを売り出しているフィリップ・モリス・インターナショナルの日本法人、フィリップ・モリス・ジャパンは、アイコスの会員ページでアイコスを利用可能なレストランやカフェ、バーなどの飲食店を紹介するホームページを開設している。

 プルーム・テックのJTも同様のホームページを作成し、登録店の募集に注力しているという。同ホームページによれば、2234店(2018/08/30アクセス)が掲載されている。

 タバコ会社は、紙巻きタバコの売上げが減少しつつある中、なるべく早く加熱式タバコのシェアを広げ、喫煙者の囲い込みをしたいところだろう。こうした飲食店への働きかけには、加熱式タバコを社会へ密かに潜り込ませようという動機がある。

 飲食店の中には、自分の店は禁煙とばかり思っていたのに、いつの間にか加熱式タバコの登録店になってしまって戸惑っているようなケースもありそうだ。これは客にも同じことがいえ、禁煙店と思って入ったら知らないうちに加熱式タバコから出る気体を吸わされてしまう危険性がある。

ステルス化で有害な気体を吸わされる危険性が

 紙巻きタバコは禁煙だが加熱式タバコは利用可能という紛らわしい店が増えれば、規制前に例外店と規制店が混在し、規制する側も混乱しかねない。むしろ、こうした状況を規制前に既成事実化しようというタバコ会社の魂胆も見え隠れする。

 受動喫煙は、加熱式タバコも例外ではない。加熱式タバコから出る有害な気体を受動暴露させられるのは、タバコを吸わない人間からすれば迷惑もいいところだ。

 だが、加熱式タバコがこうして「ステルス化」すれば、いつの間にか知らないうちに他人の吐き出した有害な気体を吸わされているかもしれない。

 先日、英国の医学雑誌『BMJ』の「Tobacco Control」オンライン版に、電子タバコが流行っている米国の研究者が電子タバコの「ステルス性」についての論文(※1)を出した。それによれば、米国の電子タバコのユーザーの多くは、職場や飲食店、映画館などで隠れて電子タバコを使用し、より強いニコチン依存症になっている可能性があるという。

 タバコ会社による働きかけは、飲食店の分煙設備にも及んでいる。

 JTのホームページに飲食店向けのページがある。「あなたのお店の分煙対策診断」というチャート式の移動ページだ(2018/08/30アクセス)。

 そのページの「STARTボタン」をクリックすると「あなたの飲食店は全席禁煙である」という「イエス・ノー」ページに飛ぶ。そこで「イエス」を押すと「Answer」として「新たに喫煙室の設置をご検討されている方はJTの分煙コンサルタントまでご相談を」というページに誘導されるという仕掛けだ。

 政府(財務大臣)が33.35%の株を持っているJT(日本たばこ産業)のホームページが、健康増進法の趣旨に反するかのようにせっかく禁煙にしている飲食店をわざわざ「分煙へ誘導」しようとしているということになる。JTはタバコによる害から国民を守るという同法の目的を理解していないとしか考えられない。

 タバコ会社は自社の利益しか求めず、国民の健康など微塵も考えてはいない。今も社会や法の目を誤魔化しながら、ニコチン依存症の顧客を少しでも増やし、紙巻きタバコを含む加熱式タバコなどのニコチン供給デバイスの使用できる場所をできるだけ多くしようと画策しているのだ。

※1:Jessica M. Yingst, et al., "E-cigarette users commonly stealth vape in places where e-cigarette use is prohibited." Tobacco Control, doi:10.1136/tobaccocontrol-2018-054432, 2018

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