全面禁煙、期待と不安 滋賀大・彦根、大津キャンパス
全面禁煙、期待と不安 滋賀大・彦根、大津キャンパス
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20180923/CK2018092302000028.html
2018年9月23日
滋賀大は来年五月から、彦根市と大津市の両キャンパス敷地内を全面禁煙にする。移行期間として、今年七月から喫煙場所を各キャンパスで減らし、それぞれ一カ所のみにした。学生や教職員に禁煙を促し、健康増進を図るのが狙い。喫煙する学生たちからは「別の場所で吸うだけ」との声も聞かれ、キャンパスでの全面禁煙が学生や教職員の禁煙につながるかどうかは見通せない。
「正直、肩身が狭いです」。彦根キャンパスに唯一残った喫煙所は、駐車場に面した研究棟の通用口にあり、人通りは少ない。灰皿の前で、経済学部三年の男子学生がたばこを吸いながら肩をすくめた。
他の男子学生は「仕方ないので、来年からどこで吸おうか考えている」。四十代の職員も「禁煙はいいことだと思うけど、たばこは習慣なのでなかなかやめられない」とこぼした。
滋賀大は二〇〇六年に屋内を禁煙にした。一方で、屋外の喫煙所を、大津キャンパスで六カ所、彦根キャンパスでは四カ所設け、分煙を図ってきた。
東京五輪の開催を見据え、東京都では今年六月、飲食店を原則禁煙とする受動喫煙防止条例が成立。七月に成立した改正健康増進法では、二〇二〇年から学校や病院の敷地内が禁煙になる。滋賀大が全面禁煙に踏み切ったのは、たばこを吸わない学生から、喫煙所をなくしてほしいという意見が強かったのに加え、国や自治体レベルでたばこ規制に向けた動きが加速しているからともいえる。
県内にある大学、短大十二校のうち、びわこ成蹊スポーツ大(大津市)が最も早い二〇〇三年から全面禁煙を開始。ほかにも、県立大や滋賀医科大、立命館大など八大学が滋賀大より早く取り組んでいる。
滋賀大が今年四月に健康診断をした結果では、学部生の喫煙者は全体の3・7%、大学院生は5%だった。滋賀大の担当者は「禁煙は受動喫煙を防ぐとともに、喫煙者の健康増進が目的」と強調する。大学当局は既に、喫煙する学生からの禁煙の相談を受け付けており、禁煙用パッチの配布も検討。今後は、健康への悪影響を説く研修会や講演会も開く考えだ。
一方、喫煙する学生からはそうした取り組みに戸惑いの声も漏れる。ある男子学生は「大学で吸えないなら、ほかに吸える場所を探すだけ。禁煙につながるか疑問」と話す。
それでも、大学の担当者は前向きだ。「学生や教職員の健康を守るのも教育機関の役目。キャンパス内の全面禁煙をきっかけに、自身の健康について考えてほしい」
◆健康思う機会に
以前と比べれば分煙が進み、煙や臭いが少ない加熱式たばこも普及。たばこを吸う学生からは「他人に迷惑を掛けないよう気を付けているのに、まるで悪者扱い」「自分の健康は自分で管理したい」という声も上がった。全面禁煙が、たばこを吸う人と吸わない人との対立を生むのではなく、互いの健康について考える機会になることを願う。
(安江紗那子)
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