カナダで大麻、娯楽用でも合法に 得する人と損する人
カナダで大麻、娯楽用でも合法に 得する人と損する人
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45872517
2018年10月16日
カナダは17日、娯楽目的の大麻使用を完全に合法とする世界2カ国目になる。カナダの成人は、連邦政府から認可された生産者からの大麻の購入と使用が可能となる。
カナダの大麻使用率の高さは世界屈指で、特に若年層に多い。
カナダ人は、医療目的と娯楽目的を合わせて、2017年だけで推定57億カナダドル(約4900億円)を大麻に費やしており、使用者1人当たりの金額は1200カナダドル(約10万3000円)に上る。このほとんどが、闇市場の大麻だ。
娯楽目的での大麻使用を世界で最初に合法化したのはウルグアイだった。ポルトガルとオランダは大麻を処罰の対象から外している。
カナダでの完全合法化への移行から、勝ち組と負け組になりそうな人たちを一部、ここにそれぞれ挙げてみる。
勝ち組――弁護士
今後数年は、大麻がらみの裁判が相次ぐはずだ。
「禁止体制からは遠ざかりつつあるものの、実に事細かく規制する枠組みになりつつある」。薬物合法化に関するトロントの法律専門家、ビル・ボガート氏だ。
規制の決まりごとが細かければ、利益団体が異議を唱えたり悪用したりできる余地がたくさんあるということになる。
飲酒運転と比べ、大麻に酔った運転をどう扱うのか、という大事な問題もある。また、大麻の精神活性成分THCの検知技術も、すでに信頼性に課題が生じている。
また一部の警察では、連邦政府が認可している路上での唾液検査器について、経費面での懸念や、寒冷地ではうまく作動しない可能性がある事実から、導入を見送っている。
ボガート氏はまた、食用大麻製品の規制(合法化は1年以上先)や、職場での医療用大麻の使用など雇用面でも、問題が起こるだろうと予測する。
負け組――家主
解禁されば、大麻の消費は合法化される。連邦法のもと、一定以下の量ならば自宅での栽培も可能となる。
家主たちは、大麻喫煙に関する迷惑行為や個人での大麻栽培に起因する損害について懸念している。
これに対する先制攻撃として、アルバータ州の大手賃貸業者は9月、所有している建物すべてで、大麻の喫煙および栽培を禁止すると発表した。
各州は個人が大麻を使用できる場所についてそれぞれ規則を作っており、国内の規制が場所によってまちまちになっている。
例えばオンタリオ州では、たばこの喫煙が許される場所ならば、どこででも大麻の喫煙が許可される。
ニュー・ブランズウィック州、ニューファンドランド・ラブラドール州、サスカチュワン州では公共の場での使用は禁止されるため、入居者によっては大麻を使用できる場所が非常に制限される。
勝ち組――世界的ブランド
大麻市場は一大産業になると予想される。大麻使用は悪いことだというイメージは薄れてきており、大企業は投資をしり込みしていない。
アナリストは、大麻の消費者市場の規模を42億〜87億カナダドル(約3600億〜7500億円)になると示唆しており、合法後の1年で340万〜600万人が娯楽使用すると予測している。
こうした数字が、大企業の関心を駆り立てている。
米飲料大手のコカコーラは、「健康機能飲料の原料として非精神活性成分カンナビジオールの拡大」に目をつけており、大麻を注入した飲料の開発に関して、カナダの認可業者オーロラ・カナビスと予備的協議を行った。
コロナビールのオーナーで酒類販売のコンステレーション・ブランズは、拡大する大麻需要から利益を得ようと、キャノピー・グロースに投資。大麻ベースのノンアルコール飲料を製造する。
キャノピーやオーロラ同様、他の認可済み上場大手生産者も、新規設備を建設し、合法化を前に生産を本格的に強化している。
負け組?――「手作り」小規模生産者
こうした大手の認可済み生産者や高騰する株価を前にして、小規模の生産業者は市場のどこに収まるのだろうか?
小規模生産者を擁護する人たちは、いわゆる「手作り」の、「クラフト・ビール」ならぬ「クラフト大麻」生産者が、違法製造を抑制し、娯楽目的の大麻の小売供給を十分確保するのに役立つとしている。
しかしそれでも、こうした小規模の業者は、資金繰りから土地使用や区域の規制に至るまで、困難に直面する。
多様な大麻取引の市場形成を促すため、カナダは特定の「小規模栽培者」と「小規模加工」の免許を用意した。
政府はまた、大麻がらみの暴力的でない軽犯罪で有罪となった人にも、免許証発行の可能性を検討している。
勝ち組――大麻研究者
大麻が人体に及ぼす影響について、分かっていないことはまだたくさんある。
カナダでの医療目的や娯楽目的の大麻使用に関する研究は、大麻が規制物質だという理由でずっと進まずにいた。医療大麻は2001年に合法化されたのだが。
資金がなかなか調達できず、調査用大麻の入手も制限される環境では、研究のほとんどが危険性に焦点を当てたものだった。
しかし、大麻を取り巻く状況が変わる今、大麻使用の益と害両面を検討しようと、研究と投資が強化されそうだ。例えば、心の健康や神経発達、妊娠、心的外傷後ストレス障害の治療、運転、痛みについて、大麻がどのように活用できるかなどが注目されている。
勝ち組――ジャスティン・トルドー首相
2015年総選挙の遊説中にジャスティン・トルドー氏は、自由党が政権を取ったら、大麻販売の合法化と規制のため、政策立案に「すぐに」取り掛かると公約した。
あれから3年たった今、トルドー氏はこの公約に「済み」印をつけられる。
トルドー首相は、合法化が若い世代のカナダ人を守り、犯罪者が闇市場から利益を得るのを防ぐとして、この動きを擁護している。しかし、社会的費用や健康・安全リスクについて、激しい議論が続く。一方、細かい規制内容を具体的に決めるのは州や地方自治体の指導者に委ねられており、気が遠くなるような仕事に多くの地方政治家は苛立ちを募らせている。
負け組――カナダの都市
カナダ各地の都市は、大麻合法化の最前線にいるのは自分たちだと主張する。
新しい制度に関する政策の他、区域分け、小売場所、自宅での栽培、事業ライセンス、公共での消費に関する規制など、管理責任の一部を負うことになるのだ。
しかし多くの都市は、大麻に課される連邦税が自分たちの自治体にどう降りてくるのかまだ説明されていないと話す。
中には、合法大麻の店舗を一切許可しないとした都市もある。
連邦政府は、大麻販売から年間4億カナダドル(約340億円)の税収を見込んでいる。各州との合意内容によると、連邦政府は、年間1億カナダドルを上限とし、税収の25%を確保する。
残りは各州へ行き、そこから各都市の財源となる予定だ。
(英語記事 Cannabis in Canada: Who wins and who loses under new law)
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