肺がんの放射線治療 分割照射で腫瘍を攻撃 正常細胞への負荷減らす
肺がんの放射線治療 分割照射で腫瘍を攻撃 正常細胞への負荷減らす
https://www.gifu-np.co.jp/tokusyu/iryo/hdr/20181217-99145.html
2018年12月17日 10:04
放射線治療医 田中修氏
こんにちは。今回は、男性のがんの中で最も死亡率が高い肺がんについて話そうと思います。肺がんは喫煙が一番多い原因であり、医学的に言えば、肺の細胞の中にある遺伝子に(喫煙などによって)傷が付くことで生じます。その他にも、大気汚染物質やアスベストなどの発がん物質が原因になることが知られています。肺がんは進行するにつれて周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって広がり、転移します。
肺がんの一番やっかいなところは、がんが進行しないとなかなか症状が出ないことで、7割の患者さんが進行がんで見つかります。日本では毎年、胸部レントゲン検査を受けることが多いですが、レントゲン検査は2センチ以下の肺がんの検出は困難であり、たとえ異常なしと診断されても、早期の肺がんは無いと言えないのです。CT(コンピューター断層撮影)検査であれば5ミリ程度の肺がんを検出できますが、被ばく線量がレントゲン検査の100倍(5ミリシーベルト)であることから、これまで検診にはなかなか不向きな側面もありました。そこで最近は被ばく線量を約10分の1(0・5ミリシーベルト)に低減したCT検査が行われるようになってきました。当院でも本年度中に、肺がんに対する低線量CT検診が稼働予定です。
早期の肺がんは手術で取り切れる場合が多いですが、進行した肺がんでは手術で取り切れない場合が多く、放射線と抗がん剤を組み合わせた治療を行います。放射線治療の役割は、CT画像などで見られる腫瘍に対して放射線を照射することです。それに対して、目に見えないがんは抗がん剤で治療します。放射線治療は基本的に、毎日少しずつ放射線を当て続けます。これはがん細胞より正常細胞の方が早く修復する能力があるためで、適度に分割することでがん細胞を死滅させつつ、正常細胞を生かすことができます。肺がんの場合、放射線治療は1日1回、週5回、合計30回行います。土、日曜日には治療をしないので、6週間で終わる治療となります。抗がん剤を用いた場合は入院して治療しますが、放射線治療だけならば通院治療も可能です。
放射線治療前後のレントゲン画像を比べると、一目瞭然で治っているのが分かります=図左(治療前)、右(治療終了3カ月後)=。がんがなくなったことで正常の肺が広がっています。
最後に、肺がんは「予防に勝る治療はなし」というほど禁煙が一番の対策方法です。放射線治療が進歩したとしても、まだまだ死亡率の高いがんであるため、周りでたばこを吸う人がいたら禁煙を勧めましょう。
(朝日大学病院放射線治療科准教授)
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