飲食店や職場の全面禁煙で非喫煙者の血圧が低下
飲食店や職場の全面禁煙で非喫煙者の血圧が低下
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190120-OYTEW333024/
2019年1月20日
バーやレストラン、職場など多くの人が集まる場所を全面禁煙とする「スモークフリー政策」が導入された地域の非喫煙者では、そうでない地域の非喫煙者と比べて最高(収縮期)血圧の低下が認められたとの研究結果が医学専門誌 J Am Heart Assoc (2018;7:e009829)に発表された。この研究を実施した米国の研究者らは「これまでにスモークフリー政策の導入が心血管疾患(心臓や血管の病気)による入院を減少させたとの報告はあったが、血圧に影響することを示した研究は今回が初めてだ」としている。
最長25年間追跡
対象は、1985~86年に米国の4都市で登録された5,115人(登録時年齢18~30歳)のうち、追跡開始後10、15、20、25年のいずれの時点でも喫煙していないと報告し、血圧を2回以上測定していた2,606人。全米でスモークフリー政策が導入され始めた時期に相当する1995~2011年(10~25年後)のデータを、州や郡、地域レベルでの飲食店や職場におけるスモークフリー政策の実施状況とリンクさせた。
解析の結果、追跡開始後25年時点における最高血圧は、スモークフリー政策としてレストランの全面禁煙が導入された地域の居住者では、そうでない地域の居住者と比べて1.14mmHg低い値だった。バーの全面禁煙が導入された地域の居住者では、そうでない地域の居住者と比べて1.52mmHg低かった。職場の全面禁煙が導入された地域の居住者では、導入されていない地域の居住者と比べて1.41mmHg低かった。
わずかな低下でも集団レベルでは意義
一方、スモークフリー政策の導入と最低(拡張期)血圧および高血圧発症との関連は認められなかった。その要因について研究者は「断定はできないが、スモークフリー政策は高血圧の基準には満たないレベルの最高血圧を低下させた可能性がある」と推測。「高血圧の基準に達していない場合でも、最高血圧の上昇は心血管疾患の発症リスクを高める。そのため、今回の研究で認められた最高血圧の低下は、集団レベルのリスクを抑制する可能性がある」と説明している。
さらに、個人レベルでの経時的な最高血圧の変化を見ると、レストランの全面禁煙が導入されていない地域に住んでいた期間と比べて、導入地域に住んでいた期間には0.85mmHg低下し、バーの全面禁煙化が導入されていない地域に住んでいた期間と比べて、導入地域に住んでいた期間には1.08mmHg低下していた。
以上の結果を踏まえて同氏らは「個人レベルでは弱い関連が認められたにすぎないが、今回の研究で示された最高血圧の低下は、受動喫煙の機会が減少したことでもたらされたと考えられる。集団レベルでは、スモークフリー政策によって心血管疾患の発症リスクが低減する可能性がある」と主張している。(あなたの健康百科編集部)
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