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JTが発売の新・加熱式たばこ 力の入れ方は「半端ない」

JTが発売の新・加熱式たばこ 力の入れ方は「半端ない」

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NEWSポストセブン2019年01月26日 07:00

「屋内原則禁煙」を柱に、受動喫煙対策が強化されようとしている今、愛煙家はますます肩身の狭い思いを強いられそうだが、そんな中、たばこメーカーの動きが慌ただしくなってきた。紙巻きたばこの代替品ともいえる煙や臭いの少ない“加熱式たばこ”のラインアップとスペック拡充に注力しているのだ。

〈加熱式たばこは温度で選ぶ時代へ〉──JT(日本たばこ産業)がこんなキャッチフレーズで1月29日から販売するのが、2016年のテスト販売以降、徐々に販売規模を拡大してきた加熱式たばこ「Ploom TECH(プルーム・テック=PT)」の新製品だ。

 JTが「温度」をキーワードに掲げたのには理由がある。

 これまでPTは加熱式市場をリードする「IQOS(アイコス)」(米フィリップモリス・インターナショナル)や、「glo(グロー)」(英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)がたばこスティックを直接本体に差し込んで使用する“高温加熱式”なのに対し、カートリッジ内にあるリキッドを熱し、そこで出た蒸気をたばこ葉の詰まったカプセルを通して吸う“低温加熱式”を最大の売りにしていた。

 この低温加熱型にすることで、独特な「加熱臭」に一部で不快との声も出ていたアイコスやグローと違い、においを大幅に抑えることができたのだ。JTのPT使用者調査でも〈においが少ない/85%〉〈髪や服ににおいがつきにくい/84%〉と概ね満足度は高かった。

 ところが、その一方で低温加熱のため、“吸いごたえ”に物足りなさが残る点を指摘され続けてきた。JTの岩井睦雄副社長が、「これまで紙巻きたばこを吸っていた方は、加熱式にも同じ程度の吸いごたえを求めていた」と話す通り、44%のPTユーザーが吸いごたえに不満を持っているとの調査結果も出ていた。

 過去にPTを試し吸いしたことがあるという40代の男性喫煙者もこういう。

「自分の健康だけでなく、家族や周囲の人に気を遣う目的もあって、一度はプルーム・テックを買って何日か吸ってみたのですが、いくら深く吸っても満足感が得られずに、結局、紙巻きに戻ってしまいました」

 もちろん、JTがアイコスやグローに対抗する高温加熱型の新製品を出すとの情報は早くから駆け巡っていたが、出遅れた間、アイコスは限定商品や専用アイテムなどでユーザーを増やしたり、昨年11月には本体の充電時間や“連続吸い”、クリーニングのしやすさなどを改善した新型IQOSも発表。いまや加熱式たばこ市場で9割のシェアを独占する“独り勝ち”の状況を続けている。

 完全にアイコスの後塵を拝してしまったJTだが、満を持して発売するPTの新製品は、従来の低温加熱で温度とたばこ葉の量を増した「プルーム・テック・プラス」(本体税込み4980円)と、アイコスと同じ高温加熱型ながらにおいを極力抑え、主力紙巻きブランド「メビウス」に味わいを近づけたという「プルーム・テック・エス」(同7980円)の2種類を同時に新発売する。

「巻き返しを図るJTの力の入れ方は半端じゃない」(経済誌記者)との声も聞こえてくるが、果たしてどこまでシェアを巻き返すことができるのか。『分煙社会のススメ。』などの著書があるジャーナリストの山田稔氏はこう見る。

「これまで1種類しかなかったPTのバリエーションが一気に3種類に増えたことで、ユーザーの選択の幅が広がり、多様なシチュエーションや好みに合わせた楽しみ方ができるメリットは大きいと思います。

 ただ、加熱式たばこ市場は紙巻きからの乗り換え派が一巡して、早くも成長期から成熟期に入りかけているうえ、複数のメーカーのデバイスを購入して使い分けるユーザーはごく少数。そのため、PTのシェア拡大は、これまで取り込めなかった高齢者や若い世代への魅力アピールはもちろん、どれだけ“ライバル商品”から乗り換えさせることができるかにかかっています」

 JTの岩井副社長は、「中長期的に加熱式たばこ市場の4割を握りたい」と意気込むが、強敵アイコスの牙城を崩すのは、容易ではなさそうだ。

 さらに、加熱式たばこ市場全体に吹き荒れる“逆風”にもなりかねないのが、規制の行方だ。山田氏が続ける。

「国の改正健康増進法と東京都をはじめ各地の自治体で進む条例による規制で、加熱式たばこがどう扱われていくかによって、市場の伸びに影響が出るかもしれません。

 今のところ紙巻きたばこよりは規制が緩和されていますが、禁煙政策を進める厚労省や、独自色を出したい地方自治体などの力で紙巻きたばこ同様に規制が強化されていくと、大きな障害になることは間違いありません」

 国内の紙巻きたばこ市場は、度重なる増税や人口減、喫煙率の低下などによって1996年をピークに右肩下がりとなっている。そんな中で、加熱式たばこは、「各メーカーが生き残りをかけた“勝負アイテム”」(山田氏)となっている。

 JTが高温加熱型に本格参入したことで、大手3社が同じ土俵で対決することになった加熱式たばこ──。熾烈な販売競争の結果のみならず、JTは唯一の国内メーカーとして、加熱式たばこの喫煙場所整備や健康リスク低減の調査・公表など、新しいたばこ文化をどこまで根付かせることができるかの重責も担っている。

●撮影/小倉雄一郎

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