堀ちえみさんがなぜ ここまで分かった食道がん、口腔がんになりやすいのはこんな人
堀ちえみさんがなぜ ここまで分かった食道がん、口腔がんになりやすいのはこんな人
https://bunshun.jp/articles/-/11529
2019/04/19
また、驚きのニュースがありました。2月に舌がんの手術を受けたばかりのタレント・堀ちえみさん(52)が、今度は食道がんが見つかったことをブログで公表したのです。
幸い、今回は転移のないステージ I の早期発見で、口から細長い管状のファイバースコープを入れて、がんのできた粘膜を取り除く「内視鏡治療」を受けたそうです。とはいえ、堀さんは2月に、11時間にもわたる大手術を乗り越えたばかり。その心中を思うと、察するに余りあるものがあります。病が大事に至らず、克服されることを願うばかりです。
転移でも再発でもない「重複がん」
ところで、今回の食道がんは舌がんの「転移でも再発でもない」とのこと。つまり、舌がんとは別に、新たながんが食道にできたということです。こうしたがんのことを「重複がん(または多重がん)」と言います。
もともと、舌がん、咽頭がん(のどのがん)、喉頭がん(声門のがん)など頭頸部がんになった人は、食道がんになりやすいことが知られています。なぜかというと、口からのど、食道にかけて、「扁平上皮(へんぺいじょうひ)」という同じ組織に連続して覆われているからです。
喫煙者で「お酒を飲むと顔が赤くなる」人は要注意
がんには組織型で分ける分類法があり、この扁平上皮から発生するがんを「扁平上皮がん」と言います。口腔がん、食道がんのほとんどは扁平上皮がんで、共通して放射線が効きやすいことが知られています。ちなみに、胃がんや大腸がんの多くは、腺組織という上皮細胞から発生する「腺がん」に分類されます。
口腔がんや食道がんに共通する大きなリスク要因は、なんといっても「喫煙」と「飲酒」です。たばことアルコールの影響で口腔がんになった人は、口から食道にかけての扁平上皮全体が、がんを発生しやすい条件になっています。そのため、口腔がんになった人は、食道がんになりやすいと考えられているのです。
舌がんになった堀さんも、食道がんのリスクが高いことから、念のため内視鏡検査も受けることになったのではないでしょうか。私は消化器の内視鏡専門医から、「頭頸部がんになった患者さんで、内視鏡検査で何度も食道がんが見つかった人がいる。そのたびに内視鏡で治療して、病を克服することができた」と取材で聞いたことがあります。堀さんも定期的に内視鏡検査を受けることになるかもしれません。
ヘビースモーカー×飲酒で食道がんのリスクは3.4倍に
ちなみに、ヘビースモーカーで、「お酒を飲むと顔が赤くなる」人は、食道がんに要注意です。国立がん研究センターが行っている住民調査「多目的コホート研究(JPHC Study)」には、次のように書かれています。
「お酒で顔が赤くなる体質でもならない体質でも、飲酒による食道がんリスクへの影響は見られませんでした。ただし、喫煙指数(注・1日の喫煙本数÷20×喫煙本数)20以上のヘビースモーカーでは影響が現れ、1日当たり2合以上の大量飲酒グループで顔が赤くなる体質の食道がんのリスクが、2合未満で顔が赤くならない体質に比べ3.4倍高くなっていました。
浜田雅功さんは大丈夫……?
私はたまに、ダウンタウンと坂上忍さんが出演する「ダウンタウンなう本音でハシゴ酒」(フジテレビ系)を楽しみに見るのですが、お酒に弱い浜田雅功さんが顔を赤くしてお酒を飲み、たばこを吸う姿を見て、心配しています。実際、食道がんの専門医に話を聞くと、顔を赤くしながら接待でお酒を飲み、たばこを吸う営業職の人に、食道がんは多いのだそうです。
食道がんになったとしても、粘膜にとどまる早期がんで内視鏡治療だけで済めば、食道を温存でき、早く普通に食べられるようになります。しかし、粘膜より深く潜り込んだがんで見つかれば、多くの場合、手術が必要となります。
食道がんの手術は、胸、お腹、首の3ヵ所を切開して行います。まず、胸からの手術で食道を切除した後、胃を細長くしたり腸を移植したりして、肋骨の裏側に新しい食道の通り道を作ります。そして、新しい食道をのどの側とつなげます。
近年では、胸やお腹に数ヵ所小さな穴だけを開けて行う「胸腔鏡手術」や「腹腔鏡手術」が、食道がんにも適応されるようになりました。しかし、それでも、がんの手術の中ではかなり大きな手術となります。現在では、安全性が高まったとはいえ、それでも肺炎や縫合不全などの合併症リスクがあり、かつては死亡率の高い手術でした。
ですから、ヘビースモーカーで、飲んだら顔が赤くなる人は、とくに食道がんにならないよう心掛けるべきだと思うのです。そのためには、まず「禁煙」です。浜田さんにも長く活躍していただきたいので、番組でお酒を飲み続けるなら、ぜひ禁煙をおすすめします。禁煙すれば、口腔がん、食道がんだけでなく、肺がん、胃がん、膀胱がんなど多くのがんのリスクが減り、脳卒中や心筋梗塞の予防にもなります。
心配な人はリスクを知った上で内視鏡検査を
また、食道がんリスクが高い人や心配な人は、定期的に内視鏡検査を受けるといいかもしれません。内視鏡で胃を見るときに、食道も通過しますので、医師にお願いすれば胃がんと一緒に食道がんのチェックもしてくれるはずです。
ただし、厚生労働省は食道がん検診を推奨はしていません。定期的に食道の内視鏡検査を行って、食道がんの死亡率が下がるエビデンス(科学的根拠)はないからです。内視鏡検査にも非常にまれとはいえ、前処置の薬剤によるアレルギー反応(ショック)や消化管に穴を開けたり出血させたりするリスクなどがあります。お金もかかりますので、こうしたデメリットも考慮したうえで、受けるかどうか判断してください。
いずれにせよ、口腔がんや食道がんは禁煙してお酒を控えれば、リスクを下げられます。がんは、ならないにこしたことはありません。若い人たちの喫煙率が下がっていますので、たばこを吸っていない人はこれからも吸わず、お酒が苦手な人は無理にお酒を飲まないことが大切だと思います。
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