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JT加熱式たばこの反撃、「プルーム・テック・プラス」を生んだ熱血部長

JT加熱式たばこの反撃、「プルーム・テック・プラス」を生んだ熱血部長

https://diamond.jp/articles/-/199445

2019.4.11

「プルーム・テック・プラス」山田 学(JT たばこ事業本部 R&Dグループ 開発責任者)

 加熱式たばこの普及が進んで久しい。火を使わない加熱式たばこは、紙巻きたばこに比べにおいや有害物質が少ないといった特徴があり、今やたばこ市場で21%のシェアを占めるまでに成長している。

 だが、たばこ国内最大手のJTは、長らく加熱式たばこで他社の後塵を拝す。製品展開の遅れなどが要因だ。今年2月、起死回生の一手として、満を持して新商品を発売した。それが「プルーム・テック・プラス」である。

 東京都墨田区にあるJTの研究所には、加熱式たばこの研究を古くから引っ張り続けた男がいる。

 山田学、50歳。普段は作業着を身にまとい、商品開発から基礎研究、時には製造との折衝を重ねるなど、軽いフットワークで技術関連のあらゆる部署に顔を出す。

 社内で“熱血部長”の異名を取り部下から慕われる山田は、社内の生き字引のような存在だ。その歩んできた道は、JTの次世代たばこの歴史そのものでもある。

 山田がJTに入社したのは、1993年のこと。

 大学で機械工学を学んだ「ガンダム世代」の山田は、ものづくりへの熱い思いを抱く中、当時新規事業が盛んだったJTで一般産業機械を扱う部門に配属された。やがてJTが産業機械から撤退した後、山田は紙巻きたばこの製造機械の開発や研究開発の企画を担うなど、部署を転々としてきた。

 転機が訪れたのは、横浜市青葉区にあるJTのたばこ中央研究所へ異動になったときだ。

 そこで山田に課されたミッションは、「従来のたばことは違う全く新しい発想の製品を作る」というものであった。

煙のないたばこをヒントに
香りを楽しむたばこを

 実は、それまでも山田は部署を渡り歩く中で、従来の紙巻きたばことは異なる製品の開発に携わってきていた。間接的にたばこ葉を熱する「スチーム・ホット・ワン」や、巻紙に香料を付着させることでにおいを抑えた「D-spec」といった、一風変わった製品を開発。すでに水面下では、“電気的なたばこ製品”の研究も進めていた。

 こうした知見を見込まれ山田に白羽の矢が立ったのだ。

 とはいえ、次世代たばこの推進は、裏を返せば大黒柱である紙巻きたばこの否定にもつながる。社内で大手を振ることはできない。少人数のチームを率いての極秘プロジェクトだった。多くのアイデアが生まれては日の目を見ずに消えていく日々だった。

 このとき、山田らが取り組んだのが“煙の出ないたばこ”の開発だった。

 当時、紙巻きたばこの市場が縮小し、社会的にも規制が強化され始めていた。煙の出ないたばこにニーズがあると踏んだ。

 その成果は、2010年に発売された無煙たばこの「ゼロスタイル」として世に出る。果たして狙いは的中し、発売直後には店頭で品薄が続くなど話題を呼んだ。

 だが、当初こそ人気を博したゼロスタイルだったが、定着しなかった。やはり消費者が求めているのは、たばこらしい「煙」の存在だったのだ。海外では、電子たばこのように蒸気と香りを楽しむ製品が台頭しつつあった。

 煙の出ない商品を開発してきたからこそ限界も分かる。煙を出そう。ただし、徹底的にクリーンに。

 ヒントになったのは、山田が研究していた原料を処理する基礎技術だった。その過程にある「たばこ葉にベイパー(蒸気)を通す」という発想を、製品そのものに応用できないか。

 ただし、単純に蒸気を通すだけでは駄目だ。たばこの香味などを引き出すためには、たばこ葉そのものに特殊な前処理が必要だった。

 しかし、何のことはない。その技術は、ゼロスタイルのものと全く同じだったのだ。ゼロスタイルは、たばこ葉を入れた容器をくわえて吸い込むたばこ。これに蒸気を通せば、確かにたばこの香味が抽出されてくるではないか。

 こうして、「たばこ葉を通して熱した蒸気を吸う」という、いままでにない加熱式たばこを実現した初代の「プルーム・テック」が誕生した。発売は16年のことだ。

 山田は「一晩でひらめいちゃったアイデア」とひょうひょうと言うが、それも長年の多岐にわたる研究があってこそだろう。

弱点を補う新製品の投入で
加熱式での巻き返しを狙う

 だが、プルーム・テックは、他社とは異なる低温加熱型と呼ばれるタイプで、小型で取り扱いが楽な半面、吸い応えが軽いという難があった。それは、プルーム・テックのコンセプトが「たばこを自由に吸えないときに、手軽に吸える」ものだからでもあるが、他社の高温加熱型と比べて消費者の不満も明らかであった。

「吸い応えを強化する原理は完璧に分かっている。ベイパーの量と、たばこ葉の量を増やせばいい」

 山田は、プルーム・テックが市場で出遅れる中で、その“弱点”を補う商品の開発に着手した。

 リキッドの量を増やしバッテリーを強化。内部の構造を調整しながら、バッテリーなどの増強で大型化するデバイスに対し、何種類ものひな型を作り、手に持ちやすい最適な形状を追求した。

 かくして、プルーム・テック・プラスが誕生する。手軽さが売りのプルーム・テックに比べて、満足感を売り出す商品だ。

 発売からまだ2カ月余り。成否の判断はこれからだが、足元でJTは反転攻勢に全社が一丸となって取り組んでいる。

 研究開発の指揮を執る山田にも力が入る。加熱式たばこは従来のたばことは違い、電気製品のような開発体制が求められる。山田は、「開発チームは社内のスタートアップ」と言うが、道はここで終わらない。まだまだ秘密のアイデアがたくさんあるという熱血部長の闘志も熱く燃え上がっている。(敬称略)

(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

【開発メモ】プルーム・テック・プラス
 JTが1月に発売した低温タイプの加熱式たばこ(4980円、税込み)。2016年に発売された「プルーム・テック」に比べて、吸い応えを強化している。JTは、同じく1月に発売された高温加熱型の「プルーム・エス」と、プルーム・テックの3本の矢で加熱式たばこ市場でのトップを狙う。4月に6都府県での拡大販売、7月には全国に拡販する予定。

 

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