来春実現、東海道新幹線「全席禁煙」までの変遷
来春実現、東海道新幹線「全席禁煙」までの変遷
1977年に1両からスタート、「のぞみ」が転換点
https://toyokeizai.net/articles/-/281673
JR東海が、来春に行う予定のダイヤ改正で、東海道新幹線の全列車の最高速度を時速285kmで統一することを明らかにした。
東京―新大阪間を時速285kmで走行することが可能な営業車両は、現在のところN700系をアップグレードしたものを含む、N700Aタイプの車両だけ。そのため、来春からは東海道新幹線のすべての座席で喫煙ができなくなる(3、7、10、15号車の喫煙ルームで喫煙可能)。2020年7月初旬にデビューする予定の新型車両N700Sも、喫煙ルームが設置されていることから「新型車両の登場で、喫煙車が復活」とはならないだろう。
N700SもN700Aタイプも16両すべてが禁煙席の電車。もし、予定どおりにコトが運ぶと、東海道新幹線のすべての座席で喫煙ができなくなる(3、7、10、15号車の喫煙ルームで喫煙可能)。
東海道新幹線が開業した1964年は、喫煙マナーという概念がなく、公共の場所や特急、急行列車の車内でもタバコが吸えるのが当たり前だった時代。開業から56年で、東海道新幹線はどのように禁煙化が進んでいったのか。時刻表の巻末に掲載されている「列車編成のご案内」からひもといてみた。
「禁煙」初登場は1977年
調査したのは1965年から2019年までの毎年3月号の時刻表。列車の編成表から、東海道新幹線(東京―新大阪間)を走る列車をピックアップ。
2階建て新幹線の場合、食堂車は禁煙、喫煙の明記がないのでノーカウント。1階がカフェテリア、2階が全席禁煙のグリーン車の場合、1階がノーカウントとなるので、1両まるまる禁煙車としてカウントするなど、独自の基準で計算したものなので「その数は違うのでは?」と思う箇所もあるかもしれないが、これぐらいの時代から禁煙車が増えて、あの年にこんなに増加したということを「ふーん」という感じに読み流していただけたら幸いである。
開業時から10年以上、禁煙車がなかった東海道新幹線。調査した時刻表の「列車編成のご案内」に禁煙に関する記述が初めて登場したのは1977年3月号だ。こだま号の編成表の下に「※こだま号の16号車は禁煙です」という注意書きが記されたのが最初だった(16号車は自由席)。
当時も現在と同様に、東京行きのひかり号が車内清掃後、こだま号の新大阪行になるということはあると思われるので、禁煙車でも車内にタバコのにおいは残っていただろう。
1981年になると、ひかり号、こだま号とも、1号車が禁煙車となる。ひかり号の16号車は指定席、こだま号は自由席なので、両列車とも自由席である1号車に統一したのだろう。ちなみに、この年の時刻表から「禁煙車のマーク」が登場し、在来線の特急にも禁煙車が登場したが、どの列車も自由席の一部車両が禁煙車で、指定席の禁煙車はなかった。
指定席やグリーン車に禁煙車が登場したのは1985年。この年からひかり号の1、2号車(自由席)と、10号車(指定席)、そして12号車(グリーン車)の半分が禁煙に。こだま号は1、2号車(自由席)と、10号車(指定席)、そして8号車(グリーン車)の3分の1が禁煙となった。グリーン車の号車番号が異なるのは、この年より、ひかり号は16両編成、こだま号のほとんどの列車は12両編成となったためである。
この頃は、グリーン車に仕切り板などがなく、喫煙ゾーンと禁煙ゾーンの境目の禁煙席に当たると、すぐ後ろ(もしくは前)の席のタバコの煙がガンガン流れ込んでいた。
1986年、2階建て新幹線がデビューするが、禁煙車は0系新幹線と同じく3.5両だった。東海道新幹線の運行が1987年、国鉄からJR東海へ引き継がれると、禁煙車両は徐々に増えていく。
「のぞみ」登場で禁煙車が一気に増加
1988年に導入された、1階がカフェテリアタイプの2階建て新幹線は従来型より禁煙車が微増。さらに1989年には、ひかり号の指定席が1両禁煙化。12両のこだま号が廃止となった1991年には、ひかり号よりも禁煙車が少なかったこだま号の禁煙車両が増加する。
1992年、のぞみ号が登場すると、その翌年から禁煙車の増加の幅が一気に増える。1993年には、のぞみ号が7両、ひかり号が6.5〜7両、こだま号が7〜7.3両と、16両編成のおよそ半分の車両の禁煙化に踏み切り、1996年には、のぞみ号10両、ひかり号・こだま号9〜10両と半数を突破する。さらに、のぞみ型車両の300系、500系、700系の導入と、旧式の0系、100系の引退により禁煙車両が増加する。
このあたりから、タバコのポイ捨てや受動喫煙の問題が社会でクローズアップされる。2002年、千代田区が路上での喫煙を禁止する条例を制定した年、のぞみ型車両の禁煙車両が1両増えて11両に。2004年に東海道新幹線が、のぞみ型に統一されると、ひかり号、こだま号も禁煙車が11両となる。さらに2007年に禁煙車が1両増加。喫煙車両は3号車(自由席)、10号車(グリーン車)、15・16号車(指定席)の4両となる。
2008年になると、のぞみ号に全席禁煙(喫煙ルームあり)のN700系が登場。2009年以降はひかり号、こだま号の一部もN700系が使われ、全席禁煙の新幹線が広まる。
2011年、東海道新幹線から500系が引退し、700系、N700系に統一されると、そのタイミングで3号車も禁煙化。この年から、700系の10号車(グリーン車)、15号車(指定席、こだま号は自由席)、16号車(指定席)以外は禁煙となる。
2011年以降、700系の禁煙車に増減はないが、700系を全席禁煙のN700系や、同じく全席禁煙のN700Aに置き換えていったため、定期列車の禁煙車は増加を続け、2017年には、のぞみ号、ひかり号の定期列車がすべて禁煙化された。
2020年「多くの人が利用する施設を禁煙にし、喫煙専用の室内でのみ喫煙できるようにする」という趣旨の改正健康増進法が施行される年に、こだま号や臨時ののぞみ号も禁煙化され、東海道新幹線のすべての座席が禁煙となる。
現在でも禁煙車率はほぼ100%
そんなわけで、あと1年弱で消える東海道新幹線の喫煙車両だが、現在はどの程度残っているのか。2019年3月号の時刻表を見ると、定期運行されているのは
●こだま683号(東京19:26発新大阪行)
●こだま636号(名古屋8:34発東京行)
●こだま652号(名古屋12:34発東京行)
●こだま696号(新大阪21:33発名古屋行)
の5本のみ。しかも、どの列車も一部の日は全席禁煙のN700系で運転との注意書きがされていた。
また、山陽新幹線の「列車編成のご案内」を見ると、N700系やN700Aだけではなく、8両編成の700系や500系も全席禁煙化。喫煙可能な車両は16両編成で運転されている700系のみ。この編成で定期運行されているのは
●ひかり444号(博多20:51発新大阪行)
のみと、現在の時点ですでに、東海道・山陽新幹線の定期列車の禁煙車率はほぼ100%に近い状況だった。
ここに挙げた列車以外で喫煙可能な車両を使っているのは、東京駅を発着する臨時ののぞみ号のみ。東京駅を発着するのぞみ号、こだま号は来春よりすべての列車が全席禁煙となると、残るは、山陽新幹線のひかり号2本のみとなるが、わざわざこれだけを残すというのも合理的ではない。
なので、来春のダイヤ改正で、東海道・山陽新幹線の座席は、定期列車、臨時列車のすべてで禁煙となる可能性は、100%と言ってもいいだろう。
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