加熱式たばこの“禁煙推進抑止効果”に警鐘 大阪がんC・田淵氏、日医の禁煙デー記念イベントで
加熱式たばこの“禁煙推進抑止効果”に警鐘 大阪がんC・田淵氏、日医の禁煙デー記念イベントで
レポート 2019年6月4日 (火)
https://www.m3.com/news/iryoishin/680455
日本医師会は5月31日、東京都内の日医会館で2019世界禁煙デー記念イベントを開いた。シンポジウムでは、大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部副部長の田淵貴大氏が講演し、加熱式たばこの"禁煙推進抑止効果"を解説。「受動喫煙対策を後退させている」と警鐘を鳴らした。
「東京都受動喫煙防止条例」の成立に尽力した都議会議員の岡本光樹氏が、喫煙室の設置などを支援するのではなく、禁煙外来など『禁煙推進のための施策』への支援を拡大させる重要性を訴えたほか、東京都医師会が取り組む「禁煙推進企業コンソーシアム」の活動状況の紹介や、千葉県いすみ市などが取り組む肺がん・COPD検査の精度管理の成果の紹介もあった。
都議の岡本氏は、改正健康増進法の成立に基づき今年7月1日から行政機関や学校、医療機関などの「第一種施設」が罰則付きで「敷地内禁煙(屋外に喫煙場所設置可)」になることに触れた上で、各地方行政が定める条例の周知徹底などが課題と指摘。条例ごとに少しずつ異なる内容の方向性としては下記の4つを示した。
①飲食店等への罰則導入(健康増進法を補う)
⇒東京都、千葉市、大阪府
②子どもに焦点を当てた条例
⇒東京都、福山市、大阪府
⇒兵庫県は自動車内の罰則強化を検討
③屋外の受動喫煙対策(公園や路上での喫煙強化)
⇒千代田区、豊島区、渋谷区など
④加熱式たばこ
⇒兵庫県、豊橋市が規制を加重
受動喫煙防止対策を巡る補助金の在り方に対しては、苦言を呈した。東京都では現行、喫煙室の設置や条例の例外として喫煙が可能になる飲食店が換気設備を設置する費用も補助する。岡本氏は、「条例制定に向け、補助率が5分の4から10分の9に、補助限度額も300万円から400万円に引き上がった」と紹介した上で、施設の禁煙化や禁煙拡大に向けた施策への比重を高めるべきと主張。例として禁煙外来への補助金を取り上げ、「1つの区が補助を決めると、都の負担割合は100万円が限度。喫煙室1つよりも少ない。多くの方に卒煙をしていただけるようにしていきたい」と述べた。
禁煙推進企業コンソーシアムについては、都医会長の尾崎治夫氏が紹介。社内禁煙や社員の禁煙を後押しするために企業が互いに情報交換しながら競う環境作りのため、都医と日本対がん協会がサポートする。活動目標として、現在17.7%である日本の喫煙率を2022年に12%まで引き下げることなども掲げる。参加企業・団体は24社(6月4日現在)。尾崎氏は発足後に三十数社から問い合わせがあったと明かし「50、100社と増やしていきたい」「企業の規模は問わないので、ぜひ参加していただきたい」と期待を込めた(同コンソーシアムについてはホームページ)。
集団検診におけるX線検査後のCT検査によるフォローアップや呼吸機能検査によるCOPDスクリーニングで肺がん発見率を向上させる取り組みの有用性については、公益財団法人ちば県民保健予防財団理事長の藤澤武彦氏が紹介。いすみ市の例では、2014~2016年度の3年間で検診対象になった計1万3203人のうち胸部X線検査で「肺がん疑い」となった人をCT検査でフォローアップしたところ、3年間で11人に肺がんが見つかった(胸部X線検査で肺がんが見つかった人との合計は18人)。人口10万対で136人となった。COPDスクリーニングでは、追跡対象になった321人中、5人で肺がん見つかり、年間発見率では0.78%。藤澤氏は、「肺がんは検診で見つかることが少ないのが問題点に挙がっているので、精度管理をしっかりすると、肺がんの発見率は非常に良くなる」と有用性を強調した。
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