加熱式でも受動喫煙防止 改正健康増進法、紙巻きに比べ緩い規制
加熱式でも受動喫煙防止 改正健康増進法、紙巻きに比べ緩い規制
https://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2019053102000007.html
2019年5月31日
近年、喫煙者に広がる加熱式たばこ。受動喫煙対策を強化しようと、来年四月に全面施行される改正健康増進法では紙巻きたばこ同様、大規模な飲食店などでは原則禁煙となる。半面、専用の喫煙室内では吸いながら飲食もできるとされ、紙巻きたばこに比べて規制は緩い。受動喫煙による健康への影響が不確かなためだが、独自に紙巻きと同等の規制を課す自治体もある。三十一日は世界禁煙デー。
加熱式たばこは携帯型の専用機器を使い、たばこの葉を加熱。発生した蒸気を吸い込む。葉に直接火をつけ、ニコチンなどを含む煙を吸い込む紙巻きたばこと異なり、燃やさず温めるだけ。燃焼による煙が出ず、においも少ないとして人気で、今では国内たばこ市場の二割ほどを占める。二年前に紙巻きから加熱式に切り替えたという名古屋市内の男性(35)は「周囲の受動喫煙の心配が少ないと思った」と理由を話す。
一方、改正健康増進法では、加熱式たばこも「受動喫煙の恐れがある」(厚生労働省)として規制の対象に。一定の規模以上の店舗で加熱式たばこが吸えるのは、煙が漏れないように作られた紙巻きたばこの喫煙室、または加熱式専用の喫煙室に限るとしている。ただ、紙巻きたばこと違い、加熱式専用の部屋では飲食やパチンコなどはできるとした。
理由は、加熱式たばこの受動喫煙による健康への影響が明らかでないこと。紙巻きたばこの受動喫煙は長年の研究で、肺がんなどの危険を高めることが科学的に証明されている。だが、加熱式たばこが国内で本格的に出回り始めたのは二〇〇一四年以降。長期的な影響に関する研究は途上だ。厚労省の平野公康たばこ対策専門官(49)は「影響が明らかになるまでの経過措置として、紙巻きたばことは扱いを分けた」とする。一方で「加熱式たばこの蒸気にもニコチンや発がん性のある有害物質は含まれる。健康へのリスクは否定できない」とも言う。
愛知県豊橋市は三月、全国の市町村で初めて、加熱式たばこの喫煙室には飲食などを提供しないことを店側に努力義務として求める条例を可決した。飲食を認めれば、料理などを運ぶ従業員らの受動喫煙につながる可能性があるためだ。市健康政策課の大谷竜司主査(42)は「人への影響は未知数。少しでもリスクを減らしたい」と話す。
加熱式たばこの受動喫煙については、たばこ会社も研究している。「プルーム・テック」を販売する日本たばこ産業(JT)は「加熱式たばこは燃焼による煙や副流煙が出ないので周囲の空気環境に影響を与えない」と説明。「アイコス」を出すフィリップモリスジャパンも、約四百人を対象に約二週間行った受動喫煙の臨床試験結果では「周りへの悪影響は認められなかった」としている。
たばこ対策に詳しい大阪国際がんセンターの田淵貴大医師(公衆衛生学)は、原則屋内禁煙を定めた改正健康増進法について「意義は大きい」と評価。ただ、加熱式を例外扱いにしたことについては「紙巻きとは別物と受け取られ、これまで禁煙だった場所で『加熱式ならいい』と容認する例が増えている」と懸念。「公衆衛生の予防原則からすると、リスクがないと分かるまで紙巻きと同様に規制するべきだ」と話す。
(山本真嗣)
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