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ポイ捨てたばこ、プラごみ問題で厳しい目 路上に捨てる喫煙者の習慣がネック

ポイ捨てたばこ、プラごみ問題で厳しい目 路上に捨てる喫煙者の習慣がネック

https://jp.wsj.com/articles/SB10165676319844024423304585462682154118818

By Saabira Chaudhuri
2019 年 8 月 2 日 10:59 JST

 世界で最も多く捨てられている物は何か。それは、たばこの吸い殻だ。その吸い殻が今、規制当局やたばこメーカーに頭の痛い問題をもたらしている。路上のポイ捨てが長年染みついた喫煙者の習慣となっていることだ。

 使い捨てプラスチックの環境への影響が懸念される中、規制当局はたばこフィルターによる汚染にも一層厳しい目を向けている。吸い殻にはプラスチックの一種である酢酸セルロースが含まれ、生分解するのに何年もの歳月がかかる。吸い殻はポイ捨てされた歩道から下水管に流れ込み、河川に行き着くことが多い。研究によると、これらは魚にとって有害となり得る。

 非営利団体(NPO)「キープ・アメリカ・ビューティフル」によると、米国では喫煙後の吸い殻の約65%が路上に捨てられる。同団体はたばこ業界の支援を受け、ポイ捨て防止プログラムに取り組んでいる。

 「たばこを箱から取り出し、火をつけ、くゆらせ、路上に捨てるまでが一連の儀式のような習慣として染み込んでいる」。ケントやキャメルなどのたばこブランドをもつ英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の最高科学責任者、クリストファー・プロクター氏はこう話す。

 欧州連合(EU)は5月、廃プラスチック規制の一環で、たばこ会社がフィルターごみの清掃作業に資金を出すことを義務づける法律を加盟国が2年以内に成立させる新ルールを導入した。また、米カリフォルニア州ではフィルター禁止法案が州上院を通過し、来年には州下院で公聴会が開かれる予定だ。

 メーカー側も動き始めた。BATや日本たばこ産業(JT)は生分解可能なフィルターの実験を行い、米フィリップ・モリス・インターナショナルは携帯式灰皿の需要を探ろうとしている。また各社は喫煙者がなぜポイ捨てするのか理解するため、行動心理学者を起用し、規制強化の流れに先手を打ちたいと考えている。

 「プラスチックやその環境への影響が問題になり始めたのはここ10年だと思う」とプロクター氏は話す。「この圧力が消えることはなく(BATの)研究プログラムは成果を求められている」

 これまで、環境に優しいフィルターの取り組みはうまく行かなかった。BATは2013年、麻などの天然繊維で作られたフィルターを試作したが、煙に残る有害物質のレベルが高すぎると判明。同業のインペリアル・ブランズも同年、自社の仏ブランドに紙製フィルターを導入したが、消費者がたばこの味に不満を示したため中止した。世界保健機関(WHO)は、吸い殻のフィルター部分からは、たばこに含まれる7000種類の化学物質の一部が浸出すると指摘。その多くは環境に有害なものだという。

 BATは再び実験を始めている。米新興企業グリーンバッツが開発した生分解するフィルターの毒性をテストし、どのくらい早く分解するのかを調べ、第三者認証機関の基準を満たすかどうかを見極めようとしている。

 たばこメーカーの対応が遅すぎるという批判の声もある。紙巻きたばこの売り上げが落ちる中で、電子たばこや加熱式たばこの開発にばかり注力しているというのだ。また、フィルターがプラスチックを含んでいることや吸い殻の毒性について知らせるラベルが箱に表示されていないことにも不満が上がっている。一方、たばこ業界の幹部らは、環境に配慮したフィルターに投資してこなかったのは、既存のフィルターがタールの水準を減らすのに効果的だからだと説明している。

 一方、心理学者の力を借り、喫煙者がポイ捨てする理由や彼らの行動を変えられるかどうかを知ろうとする動きもある。

 キープ・アメリカ・ビューティフルと連携するカリフォルニア州立大学サンマルコス校のウェズリー・シュルツ教授(心理学)は、吸い殻入れの数や設置場所、それに周辺の清掃が行き届いていることが重要だと話す。同教授の2013年の調査では、基本的なポイ捨て率を65%として、吸い殻入れを1つ増やすごとにポイ捨て率が9ポイント低下したという。

 WHOによるとフィルターは世界最大のごみの発生源であり、キープ・アメリカ・ビューティフルは米国にもそれが当てはまると話す。

 英国ではフィリップ・モリスがNPO「クリーンアップ・ブリテン」と協力し、携帯式灰皿の需要を探るためにフォーカスグループの聞き取り調査を行っている。携帯式灰皿は数十年前から販売されてはいるが、一向に人気が出ないからだ。

 同NPO代表のジョン・リード氏によれば、参加者からは臭いや灰の漏れ出しに懸念が出たようだ。同氏は携帯式灰皿のファッション性が向上すれば、喫煙者の利用に弾みがつくのではないかとみている。

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