電子たばこはニコチンを含んでいなくても血管に悪影響を与えるかもしれない
電子たばこはニコチンを含んでいなくても血管に悪影響を与えるかもしれない
https://gigazine.net/news/20190828-vaping-without-nicotine-toxic/
2019年08月28日 14時00分
乾燥させたタバコの葉に火をつけて吸う従来の紙巻きたばこには、体に有毒なニコチンやタールが含まれていて、発がん性が指摘されています。近年は紙巻きたばこの代用品として、リキッドと呼ばれる液体を加熱してその蒸気を吸う電子たばこ(Vaping)が注目されていて、ニコチンを含まないリキッドも多く存在しています。しかし、そんな電子たばこが、たとえニコチンを含んでいなくても体に有害である可能性を示す研究結果が発表されています。
Acute Effects of Electronic Cigarette Aerosol Inhalation on Vascular Function Detected at Quantitative MRI | Radiology
https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2019190562
Vaping May Harm Your Blood Flow—Even Without Nicotine | WIRED
https://www.wired.com/story/vaping-may-harm-your-blood-flow-even-without-nicotine/
Vaping Just Once Could Immediately Change Your Blood Vessels, Even Without Nicotine
https://www.sciencealert.com/a-single-vape-could-mess-with-your-blood-vessels-even-without-any-nicotine
電子たばこは紙巻きたばこと違い、調合したリキッドを加熱して吸引します。ニコチンを加えなければ従来の紙巻きたばこよりも健康リスクが低く、ミントやコーラ、エナジードリンクなどさまざまな香りも調合できるということもあって、減煙や禁煙への効果が期待されています。
ただし、2019年にアメリカで突然の肺疾患を訴える若者が急増。患者には電子たばこの吸引歴が共通してあったことから、「電子たばこにも健康リスクが存在するのではないか?」という議論が起こっています。また、リキッドの中には違法な薬物を含むものも横行していて、急増する肺疾患の多くはこの違法な薬物が原因である可能性も指摘されています。
市販の電子たばこで用いられるリキッドには水や香料の他に、プロピレングリコールやグリセリンが含まれています。この2つは食用でも問題ないものとして、食品や医薬品にも使用が認められています。しかし、ペンシルベニア大学の放射線科医であるアレクサンドラ・カポラーレ氏は「プロピレングリコールやグリセリンは食用として認められていても、吸引して安全かどうかはわかりません」と述べています。
カポラーレ氏らの研究チームは、血管・呼吸器・神経に問題がなくて喫煙経験もない19歳から33歳までの被験者31人を対象に実験を行いました。さらに研究者は、水とプロピレングリコール、もしくはグリセリンを含んだカートリッジを装着した電子たばこを用意。いずれのカートリッジにもニコチンは含まれておらず、被験者に「3秒かけて電子たばこを吸ってエアロゾルを吐く」を16セット行わせ、核磁気共鳴画像法(MRI)を使って血管の変化を観測しました。
足・心臓・脳の3つの動脈に注目した時、研究者はそれぞれの動脈で30%以上の収縮力の欠如が認められたそうで、被験者の血管は電子たばこの吸引前と比較すると平均で34%膨張しなかったとのこと。
さらに足を固定してから解放して血流を測定したところ、電子たばこを吸引した後の血液加速が25%低下し、ピーク時の血流が17.5%低下したことにも研究チームは気づきました。また、血液中の酸素レベルも20%低下していたそうです。
放射線科医のフェリックス・ウェーリ氏は「私たちは電子たばこの影響があると考えてはいましたが、ここまで大きな変化があるとは思っていませんでした。これは小さな変化を検出したのではありません、大きな影響が現れたのです」と語っています。
科学系メディアのScience Alertは、実験のサンプルサイズが小さいことに注意しながらも、電子たばこの吸引が血管の内層を傷つけているのかもしれないと予想しています。また、2017年に行われた研究では、わずか5分間の蒸気を吸っただけでマウスの血管が損傷し、血管硬化や狭窄(きょうさく)が生じたという結果が得られたことも紹介し、電子たばこの吸引によって血管の内皮細胞の機能が失われる可能性を示唆しました。
ただし、ボストン大学公衆衛生学部のマイケル・シーゲル教授は、ニコチンがなくても電子たばこが血管の機能障害を引き起こす可能性を認めながらも、「この研究から、電子たばこが心臓病や長期的な血管損傷の原因であると想定すべきではありません。今回の実験で確認できたネガティブな効果はあくまでも一時的かつ可逆的なものであるため、電子たばこが不可逆な血管損傷のリスクをもたらすかどうかを調べるにはさらなる研究が必要です」と語っています。
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