たばこの害

たばこと病気の関係について

タバコ原因?で憩いの池の金魚ほぼ死滅 関係者落胆も復活の動き

タバコ原因?で憩いの池の金魚ほぼ死滅 関係者落胆も復活の動き

https://news.biglobe.ne.jp/topics/domestic/0819/68022.html

2019/8/19 07:30 (JST)

 JR加古川駅(兵庫県加古川市)南側の「ベルデモール商店街」に40匹以上の金魚が泳いでいた池がある。子どもたちがのぞき込むなど憩いの場所として親しまれてきたが、今月上旬、ほとんどが死滅してしまった。原因ははっきりせず、世話を続けてきた商店主の男性(78)は落胆するが、「復活させたい」との願いに応えて金魚を持ってきてくれる人もおり、少しずつ以前の光景が戻ってきている。(小森有喜)

 池は横約3メートル、縦約2メートル。商店街が改装された1989年に設置され、池の前で履物店を営む男性が金魚の飼育を始めた。水草を植えてニシキゴイも放し、餌やりも欠かさなかった。多い時は70匹以上が泳ぎ回り、買い物客や子どもたちがのぞきこんで見守る、そんな地域の憩いの場だった。

 異変は今月初旬。男性が午前9時ごろに店を開けようとして、2匹を残してほかの魚が浮かんでいるのに気付いた。水は地下水を使い、循環させているため水温は低めに保たれているという。男性は「去年の夏も無事だった。暑さが原因とは考えられない。大事に育ててきたから本当にショック」と肩を落とした。

 ただ、池の中や周りにはタバコの吸い殻が散乱していた。原因かどうかはわからないが、男性は「タバコ・クスリなど入れたのはどこのだれだ」と書いた張り紙を池のオブジェに貼り付けた。すると池周辺のごみは激減。13日には協力に感謝する内容に書き換えた。

 騒動後、自宅から金魚やニシキゴイを持って来てくれる人もおり、今は成魚十数匹が泳いでいる。長男(2)と池の様子を見に来た女性(29)=同市=は「子どもも楽しみにしているから、また魚がたくさん泳ぐ池に戻ってほしい」。

 男性はさらに魚を増やすことを考えており、水草も植え替えるという。「魚を持ってきてくれる人には感謝の気持ちでいっぱい。大切に育てていきたい」と語った。

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「ポイ捨てタバコ」から出る「ニコチン」の凶悪さ

「ポイ捨てタバコ」から出る「ニコチン」の凶悪さ

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20190813-00138181/

石田雅彦 | ライター、編集者
8/13(火) 9:18

 受動喫煙対策が厳しくなれば屋外で喫煙するケースが増え、ポイ捨てタバコも増えていく危険性がある。加熱式を含めたポイ捨てタバコは、環境中で長く残り、そこから出る有害物質が環境を汚染する。

ポイ捨てタバコが引き起こす問題

 先日、海外メディアにショッキングな映像が掲載された。米国フロリダのビーチで、クロハサミアジサシという海鳥の親がヒナにタバコの吸い殻を与えているというものだ。また、兵庫県の商店街で池に飼っていた金魚などが、ほぼ全滅するというニュースが話題になった。この被害の原因は特定できていないが、この金魚はポイ捨てタバコを防ぐ目的で飼われていたという。

 毎年、世界で約6兆個のタバコの吸い殻が生まれ、そのうちの4兆5000億個がポイ捨てされ、タバコの吸い殻やタバコ由来の廃棄物は世界の海岸で清掃された総廃棄物の19~38%と見積もられている(※1)。1年のタバコ生産量の3/4が吸い殻としてポイ捨てされると換算すれば、日本の場合は年間約1091億本(2017年の販売数量1455億本)がポイ捨てされていることになる。

 加熱式タバコの多くを含むタバコの吸い殻は、主にタバコ葉の部分とフィルター部分に分けられる。ポイ捨てされると、雨水で濡れたり河川へ流される間にタバコ葉の部分は拡散し、フィルター部分だけが切り離されて残る。このタバコ・フィルターはそのままの形で環境中に存在し続け、2年経っても38%ほどしか分解されず、完全に分解されるまでには2.3~13年ほどかかるという研究がある(※2)。

 軽くて小さなタバコの吸い殻は、ポイ捨てされると雨水で流されたり風で吹き寄せられるなどして排水溝のスリットから下水へ流れ込み、河川へ流れていく。そして海へいたり離岸流で沖合へ漂流していったり海岸へ打ち上げられる。つまり、我々が海岸で見かける吸い殻のほとんどは、街でポイ捨てられ、下水から河川を通ってやってきたものだ。

 タバコ自体に健康への害があるように、廃棄物である吸い殻には当然だがニコチンのほか、ヒ素、鉛、銅、クロム、カドミウム、発がん性物質を含む多環芳香族炭化水素などのひじょうに毒性の高い物質が濃縮されている。

ニコチンの高い毒性

 ニコチンといえばタバコにつきものの依存性薬物だが、殺虫剤に使われるように毒性も強い。ヒトの大人の経口致死量は40~60mgであり、環境中に大量に存在すれば生態系に大きな悪影響を及ぼす。

 ニコチンの生物への影響を調べた研究(※3)によれば、1リットル当たり10~100μgの濃度でオオミジンコ(Daphnia magna)の繁殖や生育に影響を及ぼし、性決定などに作用する内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)であることがわかったという。

 ニコチンは揮発性が低く水中で安定的なため、そのほとんどは水中に存在する。いくつかの研究では、1リットル当たり0.6~32μgのニコチンが環境中に存在すると見積もられている(※4)。また、ニコチンは喫煙者や受動喫煙者の体内で代謝されるとコチニンや3-ヒドロキシコチニンなどに変わり、こうした物質も尿などから環境中へ大量に放出されていると考えられる。

 ドイツのベルリンでタバコの吸い殻を採取し、ニコチンの濃度と毒性を調べた研究(※5)によれば、降雨による水たまりにタバコの吸い殻をポイ捨てするとニコチンが27分で半分の量という具合に急速に溶出し、1リットル当たり2.5mgの濃度となったという。これは生態系への影響がないとされる濃度(予測無影響濃度、Predicted No Effect Concentration、PNEC)を超える値だ。つまり、たった1本のタバコの吸い殻でも1000リットルの水を危険な数値まで汚染するということになる。

 日本でもポイ捨てタバコから出る有害物質を調べた研究がある。これは信州大学の研究グループによる調査(※6)で、大学周辺の道路(3.2kmの周回)を歩き、ポイ捨てゴミの分布地図を作成して1ヶ月間の1km当たりに採取されたポイ捨てタバコのゴミから何mgの汚染物質が検出されるかを調べた。

 すると、ヒ素、ニコチン、重金属類、多環芳香族炭化水素といった有害物質が検出された。中でもヒ素が出たことが重要で、環境基準(1リットル当たり0.01mg以下であること)以上の1リットル当たり0.041mgという量のヒ素が出ている。また、重金属類の含有量としては、1ヶ月間の1km当たりカドミウム0.02mg、銅1.7mg、鉛0.59mg、クロム0.15mgが検出されたという。

タバコ会社の責任

 そもそも、タバコのフィルター自体にも毒性があるようだ。米国のサンディエゴ州立大学などの研究グループが、タバコを吸っていないフィルター単独、タバコを吸った後のフィルター単独、タバコを吸った後のタバコ葉とフィルターで魚に対する毒性を調べてみたところ(※7)、いずれでも毒性が表れ、1リットル当たりの吸い殻の数が増えるほど生存率が悪くなり、未使用のフィルターでも毒性があった。

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神奈川県鎌倉市の海岸で拾ったタバコの吸い殻。加熱式タバコのものが混じっているが、左の黒いプラスチックはプルーム・テックのカプセルだ:写真撮影筆者

 最近は加熱式タバコのポイ捨てが増えているが、その悪影響も無視できなくなっている。加熱式タバコからも、ニコチン、アクロレイン、ホルムアルデヒド、アセナフテンといった発がん性を含む有害物質が検出されているからだ。また、加熱式タバコの中には、プルーム・テックなどプラスチック製のカプセルを使うものもあり、海岸でゴミ拾いをしていると特徴的な黒いカプセルをよく見かけるようになった。

 タバコ会社やタバコ販売組合などは街の環境美化の名目でポイ捨てタバコを拾ったりポイ捨てを防ぐ運動をすることもあるが、タバコ会社の拡販PRに利用されている側面が大きい。環境汚染物質を製造販売している企業がポイ捨ての責任を喫煙者に転嫁し、あたかも社会貢献活動をしているかのように振る舞う欺まん性は昔からのものだ。

 やはり、タバコ会社に対し、使い捨てフィルターが付いたタバコ製品の製造販売を規制し、環境汚染の責任を取らせるために環境税のような名目でタバコの価格に負荷をかける必要がありそうだ。

※1:Thomas E. Novotny, et al., "Tobacco Product Waste: An Environmental Approach to Reduce Tobacco Consumption." Current Environmental Health Reports, Vol.1, Issue3, 208-216, 2014

※2-1:Giuliano Bonanomi, et al., "Cigarette Butt Decomposition and Associated Chemical Changes Assessed by 13C CPMAS NMR." PLOS ONE, doi.org/10.1371/journal.pone.0117393, 2015

※2-2:Francois-Xavier Joly, et al., "Comparison of cellulose vs. plastic cigarette filter decomposition under distinct disposal environments." Waste Management, Vol.72, 349-353, 2018

※3:Ana Lourdes Oropesa, et al., "Toxic potential of the emerging contaminant nicotine to the aquatic ecosystem." Environmental Science and Pollution Research, Vol.24, Issue20, 16605-16616, 2017

※4-1:Marianne Stuart, et al., "Review of risk from potential emerging contaminants in UK groundwater." Science of The Total Environment, Vol.416, 1-21, 2012

※4-2:Ivan Senta, et al., "Wastewater analysis to monitor use of caffeine and nicotine and evaluation of their metabolites as biomarkers for population size assessment." Water Research, Vol.74, 23-33, 2015

※5:Amy L. Roder Green, et al., "Littered cigarette butts as a source of nicotine in urban waters." Journal of Hydrology, Vol.519, 3466-3474, 2014

※6:Hiroshi Moriwaki, et al., "Waste on the roadside, ‘poi-sute’ waste: Its distribution and elution potential of pollutants into environment." Waste Management, Vol.29, Issue3, 1192-1197, 2009

※7:Elli Slaughter, et al., "Toxicity of cigarette butts, and their chemical components, to marine and freshwater fish." Tobacco Control, Vol.20, Suppl1, i25-i29, 2011

 

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「手術直前までタバコ楽しむ」実は危険行為 絶対に禁煙してほしい理由

「手術直前までタバコ楽しむ」実は危険行為 絶対に禁煙してほしい理由

https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamototakehito/20190809-00137161/

山本健人 | 消化器外科専門医
8/9(金) 8:30

手術を受けることが決まった患者さんの中には、

「入院するとタバコがしばらく吸えなくなるから、手術の直前までたっぷりタバコを楽しんでおきたい」

と考える方がいます。

こうした患者さんに出会った時、私たち外科医は慌ててこう言います。

「あまりに危険な行為です。手術が決まった以上、すぐに禁煙してください」

喫煙者の場合、術前4週間以上前からの禁煙が理想的です。

病院によっては、手術直前の喫煙が発覚した場合、一旦退院、手術は延期、としているところもあります(もちろん患者さんに事前にそのように説明し同意を得た上で、です)。

なぜ、これほどまで喫煙は危険なのでしょうか?

喫煙は、術中・術後に多くの問題を引き起こすリスクがあるからです。

喫煙がもたらす危険性

日本麻酔科学会が発行する「周術期禁煙ガイドライン」では、多くの研究結果が取りまとめられ、喫煙が術中・術後にさまざまな問題を引き起こすことが報告されています

「喫煙者では禁煙者や非喫煙者に比べ、呼吸器系、循環器系、創関連、感染などの合併症が多く、死亡率が高い」といった報告もあります。

これを分かりやすく言い換えると、

「タバコを吸っている人はそうでない人より、術後に肺や気管、心臓や全身の血管にトラブルを起こしやすく、傷口が膿むなどの問題を起こしやすい上、死亡する確率も高い」

ということです。

こうした、術後に起こる問題のことを「術後合併症」と呼びます。

喫煙していない人でも合併症は起こり得ますが、喫煙しているというだけでこの確率が高まってしまう、ということが分かっているのです。

また、喫煙者は痰が多いため、術後に苦労されるケースがよくあります。

痰が絡んで咳が出ると、ただでさえ痛いお腹や胸の傷に響き、辛い思いをすることになってしまうのです。

禁煙は必須

さまざまな研究から、こうした合併症の確率は禁煙によって低下することが分かっています。

禁煙は、手術を受ける方にとって、自らの身を守るための必須の準備だと言えます。

術前の禁煙は長ければ長いほどいいのですが、「いつから始めても意義はある」とされています。

くれぐれも、「しばらく吸えなくなるから直前までタバコを楽しむ」といった危険な行為は避けてください。

どうしても自力で禁煙が難しいと感じる方は、一人で悩まず医師に相談してください。

必要な場合は、専門の外来を紹介することもあります。

手術は外科治療の「入り口」

医療ドラマでは、手術が終わった後に医師が「手術は成功しました」と話す場面をよく見ますね。

人気ドラマの決め台詞には「私、失敗しないので」というものもあります。

しかし実際は、手術が終わった時点で「成功か失敗か」を患者さんやご家族に伝えることはできません。

患者さんにどんな術後合併症が起こるか分からないためです。

外科医がどれほど腕を磨いても、合併症をゼロにすることはできません。

術後は、合併症の兆しがあればすぐに対処できるよう、患者さんを慎重に診療しなければならないのです。

その点で、手術そのものは「長い外科治療の始まりに過ぎない」と言っても過言ではありません。

私たち外科医はいつも、

「患者さんにベストな医療を提供できるよう最大限努力したい、だから患者さんもベストなコンディションで手術を受けられるよう意欲的になってほしい」

と強く願っています。

どれほど外科医が努力しても、患者さんの協力なしでは手術はうまくいかないからです。

喫煙者にとって禁煙は、こうした協力の一つだと考えていただきたいと思っています。

なお、医療ドラマの手術は実際の手術とどんな風に違うのか、詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。

>>医療ドラマの手術と実際の手術とはどこが違うのか?

(参考文献)

周術期禁煙ガイドライン/公益財団法人 日本麻酔科学会

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商店街の金魚が大量死 「どこのだれだ。恥を知れ」と怒りの声 兵庫・加古川市

商店街の金魚が大量死 「どこのだれだ。恥を知れ」と怒りの声 兵庫・加古川市

https://www.mbs.jp/news/kansainews/20190813/GE000000000000029121.shtml

更新:2019/08/13 17:17

 兵庫県加古川市の商店街の噴水池で飼育されていた金魚が、一晩のうちに大量に死んでいるのが見つかりました。

 8月10日、ツイッターに投稿された1枚の写真。張り紙に「せっかく育ってきた金魚、全部死に絶えてしまいました。…どこのだれだ。恥を知れ」と書かれ、突然の金魚の死に怒りを隠せません。

 JR加古川駅前の商店街にある噴水池で30年前から金魚の世話をしている男性によりますと、池には金魚約40匹などがいましたが、8月初め、ほぼ全てが死んでいるのが見つかりました。

 「たばこの吸い殻をほかした人、薬、その他、何かあったんやろうと、そういうことをする人は恥を知りなさいと、紙を書いて張った。」(金魚の世話をしていた男性)

 男性が張った張り紙を見た女性がツイッターに投稿しました。
 
 「大事に育ててはる店の人を知ってるんで、その人がこんなに怒るなんてというのが大きかった。」(投稿した女性)

 そもそも、この池は商店街が改装した際に憩いの場としてつくられたもので、男性はゴミのポイ捨てなどの抑止になればと金魚を放したといいます。

 「魚でも放せば悪い事しにくくなるやろうと、放して飼いだした。」(金魚の世話をしていた男性)

 金魚が死んだ原因はいまだ分かっていません。男性の怒りの張り紙の効果もあってか、ここ数日はポイ捨てが無いといいます。

 「紙に書いたら、とたんになくなった。それは良心の呵責に耐えかねて、たばこをほかすの止めたから。逆に言うたらいい方向になった。(金魚は)また買ってきて放すつもり。」(金魚の世話をしていた男性)

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黄色ブドウ球菌はタバコの煙で“進化”し、薬剤への耐性を強める:研究結果

黄色ブドウ球菌はタバコの煙で“進化”し、薬剤への耐性を強める:研究結果

https://wired.jp/2019/08/14/cigarette-smoke-exposure/

2019.08.14 WED 18:00

感染症の原因のひとつである黄色ブドウ球菌は、タバコの煙に晒されることで抗生物質などの薬剤に耐性をもつ可能性が高まる──。そんな研究結果を、このほど英国の研究チームが発表した。つまりタバコの煙はヒトの免疫システムの働きを低下させるだけではなく、その過酷な環境に細菌を適応させて薬剤への耐性を強める“進化”をもたらすことが明らかになったのだ。

タバコは世界的に「予防可能な死因」のナンバーワンだと言われている。タバコには4,800以上の化合物が含まれ、さまざまな害を引き起こすことが知られているからだ。このほど英国で行われた最新研究によると、その“害悪”のリストをさらに更新せざるをえない結果が報告された。

このほどオンライン科学学術誌「Scientific Report」で発表された研究は、タバコの煙が引き起こす「黄色ブドウ球菌」への影響を調べたものだ。

研究結果によると、黄色ブドウ球菌はタバコの煙に晒されると、その厳しい環境に適応すべく突然変異率を上昇させることが明らかになった。結果として抗生物質に耐性のある、より丈夫で持続性のあるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの変異体を生じさせる率が高くなるという。

たばこの煙はヒト常在菌にどう影響するのか?

タバコの煙が免疫システムに及ぼす有害な影響については、盛んに研究されている分野である。免疫システムの低下による感染症、例えば肺炎球菌による侵襲性感染症や歯周病は、喫煙と強く関連することが明らかになっている。しかし、喫煙の結果として人体の感染に対する感度が高まるメカニズムは、完全には解明されていないのだという。 

はっきりしないもののひとつは、タバコの煙が免疫システムに及ぼす影響と並行してヒトの微生物叢、特に一般的な感染の原因となる細菌にどのように影響するかである。実際に以前の研究では、凝縮されたタバコの煙が肺炎球菌がつくり出すネバネバの粘液(バイオフィルム)の形成能力を大きく増加させ、肺炎球菌の持続的な生存と抗生物質に対する耐性を潜在的に増大させることがわかっている。

今回の研究は、ヒトの感染症に多くみられる「黄色ブドウ球菌」が、タバコの煙にどう反応するかを実験したものだ。

「研究室での煙への曝露は、長期間のタバコ吸引とは異なることは認識しています。しかし、喫煙などで誘発される身体へのストレスが、過酷な環境へと適応しようとする微生物細胞の反応を促す、という過去の研究に基づいて仮説を立てるのは理にかなっています」と、今回の研究を率いたバース大学生物学および生化学科のマイセム・ラーベイ博士は説明している

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、人や動物の傷口(特に化膿したもの)や、皮膚、口内、腸内などに広く生息している常在菌である。実験に使用されたのは6株の黄色ブドウ球菌で、これらは皮膚の感染、肺炎や、歯周病、心内膜炎などを引き起こすことが知られている。

「黄色ブドウ球菌は人間にとって非常に一般的であり、さまざまな疾患を引き起こす可能性があります。このため黄色ブドウ球菌がタバコの煙に晒されたときに何が起きるのかを確認したかったのです」と、ラーベイ博士は言う。タバコの煙のなかでも注目すべき要素は「活性酸素」だといい、これが高濃度になると殺菌作用をもつという。つまり細菌は、この厳しい条件に適応するため、タバコの煙に何らかの耐性をもつと考えられるのだ。

黄色ブドウ球菌は有害なタバコの煙にこうして適応する

研究者らは、黄色ブドウ球菌において毒素やバイオフィルム生成をコントロールしている「機能的アクセサリー遺伝子調整因子(Agr)」が、タバコの煙に対して重要な反応を示すことを発見した。煙への曝露の結果、6株すべての黄色ブドウ球菌が同じ反応を示したわけではないが、いくつかの株の遺伝子調整因子が下方制御され、より強化されたバイオフィルムの生成と毒性の低下を確認した。

毒性の低下は宿主細胞内での持続性を増大させ、通常は無菌の部位に細菌が侵入して感染する「侵襲性疾患」の進行に有益である可能性が示唆されている。またこれらの株は、抗生物質リファンピシンに対する耐性が増加し、侵襲性や持続性が増加することがわかった。

なおこの実験では、タバコの煙が黄色ブドウ球菌の突然変異の頻度を加速させることや、抗生物質の一種であるゲンタマイシンに耐性をもつ小コロニー(細菌の集落)の増加が報告されている。これらの小コロニーは、厳しい条件に適応する丈夫な亜集団であり、これが喫煙者の慢性感染症に関連することがこれまでの研究で明らかになっている。

「ある程度の効果は予測していましたが、タバコの煙がこれほどまで薬剤耐性に影響するとは予想していませんでした」と、ラーベイ博士は言う。「これらの小コロニーは粘着性が強く、侵襲性や持続性があります。それらは長い間感染することができ、撃退が難しく、慢性感染症に関連しています。この知見が人々がタバコを吸わないようにし、現在の喫煙者が禁煙するひとつの理由になることを願っています」

タバコの煙はヒトの免疫システムを低下させるだけではなく、より薬剤に耐性がある細菌を生存させることがわかった。研究チームによると、多くの汚染化合物はタバコの煙と同じ成分で構成されているという。彼らはこれから、排気ガスを含む多くの大気汚染が、鼻道の微生物にどう影響するかを調査する予定だという。

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ポイ捨てたばこ、プラごみ問題で厳しい目 路上に捨てる喫煙者の習慣がネック

ポイ捨てたばこ、プラごみ問題で厳しい目 路上に捨てる喫煙者の習慣がネック

https://jp.wsj.com/articles/SB10165676319844024423304585462682154118818

By Saabira Chaudhuri
2019 年 8 月 2 日 10:59 JST

 世界で最も多く捨てられている物は何か。それは、たばこの吸い殻だ。その吸い殻が今、規制当局やたばこメーカーに頭の痛い問題をもたらしている。路上のポイ捨てが長年染みついた喫煙者の習慣となっていることだ。

 使い捨てプラスチックの環境への影響が懸念される中、規制当局はたばこフィルターによる汚染にも一層厳しい目を向けている。吸い殻にはプラスチックの一種である酢酸セルロースが含まれ、生分解するのに何年もの歳月がかかる。吸い殻はポイ捨てされた歩道から下水管に流れ込み、河川に行き着くことが多い。研究によると、これらは魚にとって有害となり得る。

 非営利団体(NPO)「キープ・アメリカ・ビューティフル」によると、米国では喫煙後の吸い殻の約65%が路上に捨てられる。同団体はたばこ業界の支援を受け、ポイ捨て防止プログラムに取り組んでいる。

 「たばこを箱から取り出し、火をつけ、くゆらせ、路上に捨てるまでが一連の儀式のような習慣として染み込んでいる」。ケントやキャメルなどのたばこブランドをもつ英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の最高科学責任者、クリストファー・プロクター氏はこう話す。

 欧州連合(EU)は5月、廃プラスチック規制の一環で、たばこ会社がフィルターごみの清掃作業に資金を出すことを義務づける法律を加盟国が2年以内に成立させる新ルールを導入した。また、米カリフォルニア州ではフィルター禁止法案が州上院を通過し、来年には州下院で公聴会が開かれる予定だ。

 メーカー側も動き始めた。BATや日本たばこ産業(JT)は生分解可能なフィルターの実験を行い、米フィリップ・モリス・インターナショナルは携帯式灰皿の需要を探ろうとしている。また各社は喫煙者がなぜポイ捨てするのか理解するため、行動心理学者を起用し、規制強化の流れに先手を打ちたいと考えている。

 「プラスチックやその環境への影響が問題になり始めたのはここ10年だと思う」とプロクター氏は話す。「この圧力が消えることはなく(BATの)研究プログラムは成果を求められている」

 これまで、環境に優しいフィルターの取り組みはうまく行かなかった。BATは2013年、麻などの天然繊維で作られたフィルターを試作したが、煙に残る有害物質のレベルが高すぎると判明。同業のインペリアル・ブランズも同年、自社の仏ブランドに紙製フィルターを導入したが、消費者がたばこの味に不満を示したため中止した。世界保健機関(WHO)は、吸い殻のフィルター部分からは、たばこに含まれる7000種類の化学物質の一部が浸出すると指摘。その多くは環境に有害なものだという。

 BATは再び実験を始めている。米新興企業グリーンバッツが開発した生分解するフィルターの毒性をテストし、どのくらい早く分解するのかを調べ、第三者認証機関の基準を満たすかどうかを見極めようとしている。

 たばこメーカーの対応が遅すぎるという批判の声もある。紙巻きたばこの売り上げが落ちる中で、電子たばこや加熱式たばこの開発にばかり注力しているというのだ。また、フィルターがプラスチックを含んでいることや吸い殻の毒性について知らせるラベルが箱に表示されていないことにも不満が上がっている。一方、たばこ業界の幹部らは、環境に配慮したフィルターに投資してこなかったのは、既存のフィルターがタールの水準を減らすのに効果的だからだと説明している。

 一方、心理学者の力を借り、喫煙者がポイ捨てする理由や彼らの行動を変えられるかどうかを知ろうとする動きもある。

 キープ・アメリカ・ビューティフルと連携するカリフォルニア州立大学サンマルコス校のウェズリー・シュルツ教授(心理学)は、吸い殻入れの数や設置場所、それに周辺の清掃が行き届いていることが重要だと話す。同教授の2013年の調査では、基本的なポイ捨て率を65%として、吸い殻入れを1つ増やすごとにポイ捨て率が9ポイント低下したという。

 WHOによるとフィルターは世界最大のごみの発生源であり、キープ・アメリカ・ビューティフルは米国にもそれが当てはまると話す。

 英国ではフィリップ・モリスがNPO「クリーンアップ・ブリテン」と協力し、携帯式灰皿の需要を探るためにフォーカスグループの聞き取り調査を行っている。携帯式灰皿は数十年前から販売されてはいるが、一向に人気が出ないからだ。

 同NPO代表のジョン・リード氏によれば、参加者からは臭いや灰の漏れ出しに懸念が出たようだ。同氏は携帯式灰皿のファッション性が向上すれば、喫煙者の利用に弾みがつくのではないかとみている。

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格好いいたばこ 今は昔

格好いいたばこ 今は昔

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/527198/

2019/7/15 13:24

 昔の映画やドラマでは、たばこは大事な小道具のひとつ。ハードボイルドな「探偵物語」の松田優作さんは今でも私の憧れです。けれどもたばこを吸うのをまねようとは思わなかったのです。なので年齢だけはもう十分すぎるくらいの大人ですが、〈♪折れた煙草(たばこ)の吸いがらで/あなたの嘘がわかるのよ〉と言われても、その深い意味を理解できないやぼ天です。

 たばこは口腔(こうくう)内、食道、肺などのがんや脳卒中、虚血性心疾患、呼吸機能低下、糖尿病など多くの病気の原因になることが知られています。煙に含まれる一酸化炭素やニコチンなどの有害物質は、喫煙者だけではなく、たばこから立ち上る煙(副流煙)と喫煙者が吐き出す煙(呼出煙)を吸い込んでしまう受動喫煙で、非喫煙者にも悪影響を及ぼします。喫煙者が吸い込む煙より、副流煙の方が有害物質の濃度が高いのです。

 吸い込まれた発がん物質を含む有害物質は、体内に吸収された後、腎臓から尿と一緒に体の外へ出ていきます。そのため尿の通り道にも悪影響を与え、腎臓がん、尿管がん、膀胱(ぼうこう)がんのリスクが高くなります。喫煙者がいる家庭の子どもの尿中発がん物質を測定すると、喫煙者がいない家庭の子どもと比べ、たとえベランダで吸っても2倍、換気扇下で吸っても10倍多くなっていました。服や壁に有害物質が付着するので、屋外で吸っても受動喫煙は防止できません。喫煙30分後に吐き出す息にも有害物質が含まれています。

 さらに男性の喫煙は、血管を収縮させて勃起障害(ED)、精子数の減少や運動性の低下を引き起こして不妊の原因にもなります。女性の喫煙や受動喫煙も、卵子の老化を早めて不妊の原因になり、妊娠中に流産、早産を引き起こす恐れも。だから泌尿器科医は大きな声で禁煙を勧めています。

 沢たまきさんの〈♪ベッドで煙草を吸わないで〉。もしかしたら、こんなことを伝えたかったのかも。「EDにならないで」「早く子どもがほしいの」「たばこは赤ちゃんに悪いから」…。女心をたばこに込めて。やっぱり大人の歌だなあ。 

 (泌尿器科医・池田稔)

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たばこで労災が増加も=分煙では防げぬ「受動喫煙」

たばこで労災が増加も=分煙では防げぬ「受動喫煙」

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190716-00010000-jij-sctch

7/16(火) 17:13配信

 「どのように進める?企業におけるたばこ対策」と題した、企業のたばこ対策担当者らを対象にしたシンポジウムが都内で開かれた。改正健康増進法が施行され、来年4月には事務所や工場の屋内が原則禁煙になる。喫煙室を設置すれば施設内でもたばこを吸えるが、受動喫煙の健康被害などに詳しい産業医科大学の大和浩教授はシンポジウムで「分煙で受動喫煙を完全に防ぐのは不可能」と断言。喫煙者は労働災害にあう割合が高いとの調査結果も示されている中で、法的な裏付けを含めたより厳しい職場での喫煙対策などが議論された。

 ◇公園に「たばこ難民」殺到
 
 改正法は望まない受動喫煙の防止を目的に掲げ、従来は努力義務だった受動喫煙の防止を義務化。同法の施行を受けて7月1日から学校や病院、行政機関は敷地内が原則禁煙(屋外喫煙場所は例外)になった。

  これを機に東京都庁は屋外にも喫煙所を設けなかったため、都庁近隣の公園に「たばこ難民」が殺到。公園利用者から文字通り煙たがられる事態になった。受動喫煙が、禁煙施設の外に広がった形で、新たな対策を求める声も挙がっている。

 ◇労災ゼロは喫煙者ゼロから
 
 企業の事務所や工場は、東京都庁のような行政機関や学校・病院ほどには規制が厳しくない。屋内喫煙所の設置が許されているが、大和浩教授は、喫煙室のドア開閉や人の出入り時に煙が出るほか、喫煙者の肺に残っている煙は約2分半の間、はき出され続けるとした。「喫煙室で受動喫煙を防止できない。不適切」と強調する。

  大和教授は、埼玉県八潮市の工業団地で行われた調査から、喫煙者は労働災害のリスクが非喫煙者に比べて1.6倍高くなると紹介した。要因としては(1)ニコチン濃度が下がって集中力が途切れる(2)一酸化炭素による酸素不足-などが複合的に重なったと思われると語った。

  「3000人が働いている製鉄所の調査でも、1日10本以下の低依存者で1.52倍、10~20本の中等度依存者で1.98倍、労災リスクが高いとの結果が出た」。大和教授は「製鉄業の労働災害ゼロの入り口は喫煙者ゼロ」と言い、禁煙は重要な経営課題の一つだとした。

◇敷地内、就業時は完全禁煙
 
 受動喫煙で年間1万5000人が死亡するとも言われる中、東京都受動喫煙防止条例の策定に深く関わった弁護士・東京都議会議員の岡本光樹氏はシンポジウムで、分煙職場で働く非喫煙者が職場を相手取った裁判で勝訴するケースが相次いでいると指摘。「受動喫煙からの保護が労働契約法の安全配慮義務違反に該当する」ためで、使用者がこうした訴訟が起きるのを未然に防ぐよう求めた。

  そのための抜本的な対策として、岡本氏は屋外を含む企業敷地内や就業時の完全禁煙が今後の課題となるとした。

 ◇「喫煙の自由」に制限
 
 事業所施設内の完全禁煙について岡本氏は「企業秩序定立権限の一環である施設管理権に基づいて定めることができる」と指摘。就業時間中の禁煙については「(経営者の)労務指揮権、企業秩序定立権限および、(従業員の)職務専念義務、企業秩序遵守義務に基づいた禁止措置が考えられる」としている。

  禁煙の社会的な広がりに対抗して喫煙者が求める、いわゆる「喫煙の自由」に関して岡本氏は「『権利』と呼べるか疑問。判例からも制限に服しやすいと理解される。受動喫煙は『他者危害』で喫煙の自由は制限される」との見解を示した。

  また、喫煙者を新規採用しないとの施策については、「始めている企業は増えている。原則として(企業に従業員)採用の自由がある。(喫煙の)申告を求めることも違法ではない。最高裁判例に基づいて認められている」と語った。

  2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、東京都の受動喫煙防止条例に類似した厳しい条例を制定する自治体が増えるのは確実。公共スペースに加え、職場においても禁煙が広がる流れは止められない。(解説委員・舟橋良治)

 

 

 

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たばこパッケージに「足の切断写真を勝手に使われた」 仏男性が憤慨するも……

たばこパッケージに「足の切断写真を勝手に使われた」 仏男性が憤慨するも……

https://www.bbc.com/japanese/49041699

2019年07月19日

Cigarette packet showing man's amputated legImage copyright Antoine Barège, Radio France
Image caption たばこのパッケージに出ている左足を切断した人物は自分だと、男性は主張している

左足を事故で切断したフランスの男性が、たばこの害を警告するパッケージ広告に、自分の足の写真を無断で使われ憤慨している。

一方、写真の使用を管理する立場の欧州委員会(EC)は、写っているのはこの男性ではないと反論している。

問題となっているのは、「喫煙は動脈を詰まらせます」というメッセージとともに表示されている、腰から膝までの写真。左足の切断部分がはっきり確認できる。

たばことは無関係

フランス東部メスに住むアルバニア出身の男性(60)は、写真の使用を許可したことはないと主張している。

また、そもそも左足の切断とたばこは無関係で、1997年に出身国アルバニアで射撃事故に遭ったのが、左足切断の原因だとしている。

パッケージに使われた写真は、2018年に地元の病院で、歩行補助具が合うか確認したときに撮影されたものとみられるという。

息子が最初に気づいた

フランスのメディアによると、写真を最初に発見したのは、男性の息子だった。息子が昨年、ルクセンブルクでたばこを買った際、パッケージに出ていた写真が父親だと気づいた。

息子は、父親の左足のやけどと傷が特徴的なことから、すぐに認識したという。

息子はたばこをフランスの家に持ち帰り、だまってテーブルに置いた。それを見た父親の娘もすぐ、父親の足だとわかった。

娘は地元紙に、「びっくりした。信じられなかった。でも私たちのお父さんだった。傷に同じ特徴があった」と話した。

尊厳を傷つけられた

男性の弁護士は、「傷の一つひとつが特徴的で違いがある。男性はもう片方の足にはやけどの跡があり、非常にくっきりしている。専門家であれば、写真を見て男性だとすぐ気づくだろう」と話す。

また、「誰かの写真がその人の同意なしに、欧州連合(EU)で出回っているたばこのパッケージに使われるなんて驚きだ。男性は裏切られたと感じており、自分の障害がたばこのパッケージでさらされているのを見て、尊厳を傷つけられている」と訴えている。

弁護士は、写真がどのような経緯で使われたのか、病院に文書で質問したという。

ECは男性の間違いと主張

一方で仏紙ル・パリジャンは、問題の写真は2017年のEUの反たばこキャンペーンで使用されたものだと指摘。写真は2018年に撮影されたという男性の主張に、疑問を投げかけている。

また、同じ写真は2014年から、EUの画像データベースにあったと報じている。

同紙はさらに、病院にも取材したが、男性の話を裏付けることはできなかったとしている。

ECの報道官は同紙に、「このキャンペーンで撮影した全員について、身元確認をし、合意と権利を取っている。すでに得ている情報から判断すると、今回の人物(男性)は該当しないと、断言できる」と話している。

(英語記事 Man spots 'own amputation' on cigarette packets

 

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「喫煙で病気」になるのは「自己責任」か

「喫煙で病気」になるのは「自己責任」か

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20190703-00132631/

石田雅彦 | ライター、編集者
7/3(水) 8:00

 タバコを吸ったり受動喫煙をすると病気になるリスクが高まる。受け身で自分ではどうしようもできない受動喫煙はともかく、リスクを承知の上でタバコを吸い、その結果、病気になるのは自己責任といえるのだろうか。

喫煙は愚行権の行使か

 自己責任という言葉が一人歩きしている。貧乏になる自由もあるなどとうそぶく人もいるが、生活が苦しくなり経済格差が固定化する理由のほとんどは個人の怠惰や能力に帰するのではなく政治や行政の無策にある。

 ところで、自由主義(リベラリズム)の考え方では、近代社会に生きる個々人にはかなり広い自由が与えられているとする。個人的自由の中で議論になるのは、いわゆる愚行権だ。

 自由主義では、他者へ危害を与えない限り、個人は何をするのも自由であり、仮にそれが愚かなことでも禁止するのは正当ではないとする。つまり、個人が自分を傷つけてしまうような愚かな行為でも、それは自己決定なのだから個人の判断にゆだねられるべきということになる。

 タバコの問題に関して言えば、この他者危害が受動喫煙にあてはまる。有害物質が含まれているタバコ煙は、タバコを吸わない人に危害を与えるのでタバコの使用を規制すべき、というのが受動喫煙防止の考え方だ。

 では、他者へ危害を及ぼさないのなら、有害であるタバコを吸った結果、喫煙者が病気になってもそれは愚行権の範疇だから正当なのだろうか。喫煙者が病気になって苦しんでも、身体に悪いことを承知の上で行った自己責任だから仕方ないのだろうか。

 日本を含む、ほとんどの国ではそうは考えていない。そもそも自由主義における個人の自由は、倫理的道徳的社会的な観点からパターナル(父権的、温情的)に制限され得るという考え方もある。

 タバコに課せられる税には一種の罰金的な課税根拠があり、これはパターナルな考え方が基礎だ。また、たばこ税や酒税の課税根拠には、奢侈嗜好品だから課税する側面、そして過度な消費が国民の保健衛生上、好ましからぬ害悪を及ぼし、社会的なコスト増につながるからという側面もある。

 ところで、加熱式タバコのアイコス(IQOS)の説明書にはこう書いてある。「IQOSとたばこスティックは、禁煙の代替手段ではありません。健康への懸念があれば、紙巻たばこもIQOSも両方やめることが一番です」「習慣性があり、リスクがないわけではありません」。

画像

アイコスの説明書には虫眼鏡で見なければ判読できないほどのサイズの文字で「たばこ関連の健康リスクを軽減させる一番の方法は、たばこもニコチン使用も両方やめることです」と書かれ、「ニコチンは、たばこスティックに使用されているたばこに自然に含まれています」とある。そして「ニコチンには習慣性があり」と続く。写真撮影筆者

 日本で売られているタバコのパッケージには、同じように健康に害がある製品であることが明確に示されている。「これを飲むと病気になる」とボトルに書かれている清涼飲料がないように、こんな製品はタバコ以外にはあり得ない。

 なぜ、こんな文言が示されているのだろうか。たばこ規制枠組条約(FCTC)の手前という理由もありそうだが、パターナルな警告表示などでリスクを喫煙者に知らしめ、消費を抑制することで国民の健康を守る必要があると政府が考えているからだ。

ニコチン依存と自己責任

 一方で、政府(財務大臣)はJT(日本たばこ産業)株の1/3以上を持っていて大いなる矛盾があるが、こうした注意書き、警告文は、喫煙者がリスクを承知の上でタバコを吸っているのだから病気になっても当社は関知しない、というタバコ会社の訴訟リスク回避、責任回避に利用されてきたのも事実だ。

 タバコ会社の論理では、ニコチンには強い依存性はなく、いつでも自由にタバコを止めることができることになっている。だからこそ、喫煙者は自分の判断と責任でタバコを吸っているのだし、タバコ会社に責任はないというストーリーだ。

 つまり、タバコ会社は本心では、ニコチンの依存性を否定したがっていると考えることができる。

 これまで何度かタバコ病にかかった元喫煙者が原告になり、国とJTを相手取った裁判が起こされてきた。だが、日本の司法はずっとJT(日本たばこ産業)の主張を鵜呑みにし、ニコチンにはコカインに匹敵するほどの強い依存性があるという疫学的・科学的・医学的なエビデンスを軽視する判決を続けてきた。

 2010年の「タバコ病をなくす横浜裁判」(横浜地裁)の判決でようやく裁判所は、限定的ながらニコチンの依存性の影響を初めて認めたのだ。

 タバコを止められなくなるのはニコチンの依存性のせいだ。タバコや加熱式タバコによる急速なニコチン摂取は、脳の報酬系に刺激を与え、タバコの恒常的な反復使用と長期使用を喫煙者に強いる。

 加熱式タバコを含めたタバコ製品(ニコチン・デリバリー・システム)には有害物質が含まれているが、それを朝起きてから寝るまで間欠的に身体へ入れ、数年から数十年という長期にわたって習慣的に継続してしまうことになる。

 その結果、肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息などの呼吸器疾患、歯周病などの口腔疾患、乳がん、心血管疾患、脳神経疾患などのタバコ病にかかるリスクが格段に上がる。

 こうした「愚行」を喫煙者に行わせているのがニコチンであり、そこには薬物依存はあっても喫煙者の自由な判断などはほとんどない。タバコ製品によって供給されるニコチンの強い依存性のため、自分で止めようとしてもなかなか禁煙できない喫煙者が病気になった場合、それを自己責任といえるだろうか。

 そして、こうした喫煙者のために灰皿や喫煙所を設置する行為は、受動喫煙のリスクを高めるばかりか、喫煙者にニコチン依存の状態を継続させ、タバコ病にかかるリスクをさらに上げる、まさに「愚行」といわざるを得ない。なぜ、タバコを吸わない多くの国民に受動喫煙のリスクを忍従させ、税金を使って喫煙施設を作らなければならないのだろうか。

 政府がタバコ会社の株の1/3以上を持ち、依然として喫煙所があちこちにあったりコンビニで手軽にタバコを買えるという政治や社会環境が変わらない限り、喫煙者がタバコ病になっても自業自得と言い切ることはできないだろう。加熱式タバコを含む喫煙習慣は、まさに国の政策によってタバコを吸う人も吸わない人も人権をないがしろにされている問題といっていい。

 若い世代の賃金が実質的に目減りし、貧困化する人が増えているのは自己責任ではない。それは大企業や富裕層のための意図的な失政と弱者を切り捨ててきた政策の結果なのだ。

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