受動喫煙対策

受動喫煙 小児、乳児にもリスク

受動喫煙 小児、乳児にもリスク


 医療や社会保障に関する旬のキーワードを、図解とともに分かりやすく説明する新コーナー「読み解きワード」を、今月から原則月1回掲載します。初回は対策を強化する厚生労働省案に賛否が入り乱れている「受動喫煙」がテーマです。

    健康にどのくらい悪い? 脳卒中、発症に影響

     たばこの煙が、本人だけでなく吸わされる周囲の人の健康にも影響を与える--。こうした「受動喫煙被害」の科学的な研究は、1980年代から本格化した。

     受動喫煙と肺がんとの関係を81年に世界で初めて発表したのは、日本の平山雄氏(当時の国立がんセンター研究所疫学部長)だ。たばこを吸わない女性を、夫が喫煙するグループとしないグループに分けて調べると、夫が喫煙者の集団の方が肺がんの死亡率が高かったという内容だった。

     この論文には反論も多かったが、世界で研究が進み、2004年に国際がん研究機関(IARC)が環境中のたばこの煙の発がん性を科学的に認めた。05年に発効した世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組み条約」でも「たばこの煙からの保護」が規定され、各国で受動喫煙防止の法制化が進んだ。

     現在、厚労省が「受動喫煙との因果関係が十分」と判定している病気は、肺がん、脳卒中、心筋梗塞(こうそく)など。小児ではぜんそくとの関連、赤ちゃんでは乳幼児突然死症候群のリスクを高めるとしている。乳がんや呼吸機能の低下、妊婦が受動喫煙した時の胎児の発育の遅れなどは「因果関係が示唆されるが根拠は十分ではない」と位置付ける。

    病気別の推計を積算 国内で年1.5万人死亡

     注目されているのが「受動喫煙による国内年間死亡者は約1万5000人」という数字だ。個々の死因を調べたわけではなく「根拠がない」と批判する人もいるが、どうやって算出したのだろう。

     この試算は昨年5月、厚労省研究班(研究代表者=片野田耕太・国立がん研究センターがん統計・総合解析研究部室長)が明らかにした。簡単に言うと、病気別の推計死者数の積み上げだ。

     肺がんの場合、海外の多くの研究で、たばこを吸わない人の中で受動喫煙がある人はない人に比べ肺がんになる危険性が1・3倍高いとの結果が出ている。日本人を対象にした9本の論文の分析でも、家庭内の受動喫煙で危険性が1・28倍に高まっていた。

     家庭内で受動喫煙がある女性の割合は31%。これを図解すると、受動喫煙が原因の肺がん死者数は全体の6%になることが分かる。他の病気や職場での影響、男性でも同様に計算し、足し合わせると、1万4957人になる。さらに乳幼児突然死症候群による死亡を73人とした。

     ちなみに、飲食店での客の受動喫煙は試算で考慮していない。影響は数値化できていないが、原則禁煙にすれば、そこにいる人のリスクは減ると考えられる。片野田さんは「特に煙にさらされる時間が長い従業員を守る必要がある」と話す。

    東京五輪へ対策急ぐ日本 韓国は段階的に拡大

     「途上国で完全禁煙を実施する国もあり、日本は取り残されている」。今月来日したWHOのダグラス・ベッチャー生活習慣病予防部長は、日本に発破をかけた。健康リスクへの関心が高い欧州や、受動喫煙被害を訴えて企業に巨額の損害賠償を求める訴訟が相次いだ米国などと比べ、屋内喫煙に罰則がない日本は法整備が遅れている。

     ここにきて厚労省が対策を急ぐのは、20年の東京五輪を控え、国際オリンピック委員会(IOC)が「たばこのない五輪」を求めているからだ。海外では段階的に受動喫煙対策を進めてきた国も多く、18年に冬季五輪を開く韓国は、12年に面積150平方メートル以上の大型飲食店を規制対象にし、14年に100平方メートル以上、15年に全飲食店と段階的に拡大していった。ただ、日本に残された時間は少ない上、WHOのベッチャー部長は「喫煙室を認める部分的な禁煙では、受動喫煙はなくせない」と部分規制に批判的だ。

     日本では環境美化などの観点から路上喫煙を禁じる条例が普及していることも、対応を難しくしている。厚労省の調査では、全国243市区町村に条例があり「屋内も禁煙になると、どこでも吸えなくなる」という喫煙者の不満にもつながっている。【下桐実雅子】毎日新聞

    2017年4月26日 東京朝刊

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    受動喫煙対策 五輪相に抗議 禁煙学会「IOC裏切る」

    受動喫煙対策  五輪相に抗議 禁煙学会「IOC裏切る」

    毎日新聞

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    屋内全面禁煙に署名270万人=日医など4団体

    屋内全面禁煙に署名270万人=日医など4団体

     たばこの受動喫煙防止策をめぐり、日本医師会など4団体は9日、「屋内全面禁煙」を求める署名が約270万人に達したと発表した。4団体トップがそろって厚生労働省で記者会見し、日医の横倉義武会長は「たばこは全ての年齢に影響を与えるサイレント・キラー。例外や特例を設けない受動喫煙防止法が必要だ」と訴えた。
     他の団体は日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会。福井トシ子・看護協会会長は「妊婦が直接吸っていなくても胎児の成長が止まったり、小さい赤ちゃんが生まれたりすることが懸念される」と強調。日本は出生数の1割近くを2500グラム未満の低出生体重児が占めていることについて「先進国で一番多いのは日本」と指摘した。
     署名は5月から病院などで医療従事者や患者、その家族らから集めた。4団体は安倍晋三首相や加藤勝信厚労相に要望書を提出したいとしている。 (2017/08/09-16:51)

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    受動喫煙対策で署名264万人〔読売新聞〕

    受動喫煙対策で署名264万人〔読売新聞〕

    2017年08月10日 13:20

     非喫煙者がたばこの煙を吸い込む受動喫煙について、日本医師会(横倉義武会長)など医療4団体は9日、対策の強化を求める264万人分の署名が集まったと発表した。これを踏まえ、加藤厚生労働相に対し10日、受動喫煙対策の推進を求める要望書を提出する。5月から全国の医療機関などに用紙を置き、署名を呼びかけていた。

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    受動喫煙対策強化、署名264万筆 医師会など集める

    受動喫煙対策強化、署名264万筆 医師会など集める

     日本医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会の4師会は9日、記者会見し受動喫煙の防止対策を強化するための署名が約264万筆集まったことを明らかにした。10日に加藤勝信厚生労働相に法案の早期制定を促す要望書を提出する。  4師会は今年5月から、医療機関の受付などに趣意書と用紙を置き、署名活動を開始。日本のたばこ規制が「世界最低レベル」であることや、受動喫煙で年間約1万5000人が死亡していることなどを訴えた。

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    受動喫煙“喫煙後30分は息から有害成分”

    受動喫煙“喫煙後30分は息から有害成分”

    http://www.news24.jp/articles/2017/06/08/07363747.html

    2017年6月8日 19:08

    全文

     たばこを吸わない人への健康被害、いわゆる受動喫煙をめぐる問題が社会的に大きな関心になっている。受動喫煙が周囲の人にどんな健康被害を及ぼすのか。“三次喫煙”という新しい考え方も交えて、諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。


    ■受動喫煙の定義

     まず、たばこの煙には、喫煙者が吸う側から出てくる「主流煙」、火のついたタバコの先から出ている「副流煙」、そして、喫煙者がはき出した「呼出煙」の3つがある。受動喫煙は、この副流煙や呼出煙を吸ってしまうことをいう。

     特に、この副流煙は、主流煙に比べて、発がん性物質やニコチン、一酸化炭素などといった、有害物質が、数倍も多く含まれている。空気中に副流煙が広がることで、薄まったとしても、吸わない人も危険にさらされていることになる。


    ■受動喫煙による“死のリスク”

     国立がん研究センターによると、受動喫煙が原因とされる死者数の推計は、日本では年間約1万5000人といわれている。死因別で見ると、「肺がん」や「脳卒中」、「虚血性心疾患」、そして「SIDS(=乳幼児突然死症候群)」がある。

     これらの疾患による死亡リスクが、受動喫煙によって、どれだけ高くなってしまうのだろうか。受動喫煙のない人を1とした場合、受動喫煙がある人の死亡リスクは以下のようになっている。

    ・脳卒中 1.29倍
    ・肺がん 1.28倍
    ・虚血性心疾患 1.23倍
    ・SIDS 4.67倍(※1)

     どれも受動喫煙によって、リスクが20~30%高くなっているのがわかる。そして、過去に病気もなく、何の予兆もないまま、乳幼児が死にいたるSIDSでは、両親ともにたばこを吸わない場合を1とした時、両親ともに喫煙者の場合(※1)で、4.67倍となっていて、その影響の大きさがわかる。


    ■吸って30分は“呼気から有害成分”

     近くで吸わなければいいというだけではないことにも注意が必要だ。よく、家の中で吸えないからと、ベランダや玄関先でたばこを吸う人もいるが、実はたばこを吸った後は、すぐに子供に近づいてはいけない。

     受動喫煙に詳しい、産業医科大学・大和教授は「(目に見えない)煙の成分は、たばこを吸い終わった後も20~30分は呼気から出つづけている」と話す。子供を大切に思うならば、たばこを吸い終わっても、30分は有害な成分を出し続けているわけだから、家族に近づくことは避けるべきだと言える。


    ■髪の毛や壁から…“三次喫煙”という考え方

     それだけではない。ここまでは、受動喫煙についての話だが、これは二次的な喫煙にあたる。実は、最近になって、その先の三次喫煙という考え方が出てきている。三次喫煙とは、煙の成分は、たばこを吸う人の手や髪の毛、服にも付いている。

     さらに部屋の中でたばこを吸うと、カーテン、壁などにも付着している。これらから煙の成分を吸い込んでしまうことを三次喫煙という。手や髪の毛、服、カーテンなどは洗えばいいが、壁などは困る。壁などについた、有害な成分は、ふき掃除などでは除去できないからだ。

     三次喫煙が、どのくらい健康に影響があるのか、まだ研究は進んでいないが、最も影響を受けるのは乳幼児だともいわれている。小さなお子さんがいる方は、たばこを吸ったことのある部屋には入れない、などの対策が必要だ。

    ■マナーや嗜好では済まされない

     今回の結論は「煙への意識改革を」。たばこを吸うのは個人の自由かもしれない。ただ、マナーとか嗜好といった言葉では、済まされないのが受動喫煙や三次喫煙の問題だ。喫煙という、自分の行為が家族や周囲の人の健康をも脅かすモノだということを今一度認識して、吸う人も吸わない人も一緒になって意識改革することが必要だろう。

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    「分煙では効果ない」 WHOが、日本に全面禁煙を勧める根拠とは

    「分煙では効果ない」 WHOが、日本に全面禁煙を勧める根拠とは

    http://www.huffingtonpost.jp/2017/04/07/who_n_15861022.html

    投稿日:

    2017年04月08日 09時50分 JST       

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    “スモーカーの天敵”日本の受動喫煙に苦言

    “スモーカーの天敵”日本の受動喫煙に苦言

    http://www.news24.jp/articles/2017/04/13/07358906.html

    2017年4月13日 17:17

     たばこの煙が吸わない人に流れる受動喫煙。政府が規制に乗り出す一方、強い反発もあり議論は進まない。こうした中、“スモーカーの天敵”とも呼ばれる、ある人物が日本に苦言を呈した。


    ■路上より先に「屋内を禁煙」にすべき

     サラリーマンでにぎわう街、東京・新橋に先週、現れた男性。WHO(世界保健機関)の幹部、ダグラス・ベッチャー氏だ。世界の受動喫煙対策の第一人者で、“スモーカーの天敵”とも呼ばれるベッチャー氏に、日本の状況を見てもらった。新橋がある港区は、路上での喫煙は条例で禁止されている。

     記者「見ても分かるように路上で喫煙している人はいないですよね」

     ベッチャー氏「(これまで)路上を禁煙にして屋内を禁煙にしない国はありませんでした。まずは『屋内を禁煙』にしなくてはいけません」

     日本の問題は、飲食店などの「屋内」にあるという。WHOによると、世界49か国には、全ての公共施設の「屋内を」全面禁煙とする法律がある。しかし、日本は「屋内の」喫煙を規制する法律がなく、「日本の受動喫煙対策は世界最低レベル」とされていた。


    ■「分煙は世界で失敗している」

     私たちはベッチャー氏と「分煙」を実施する飲食店を訪ねてみた。

     店主「禁煙の席があちらの部屋とカウンターが10席ほど、ここから向こうは喫煙可能です」

     ベッチャー氏「喫煙エリアと禁煙エリアを分けるというのは、世界中で行われていますが完全な失敗でした」

     席を分ける「分煙」では意味がない、と厳しい指摘。客がいる状態の店の様子も映像で見てもらったところ―

     ベッチャー氏「全く効果がありません。部屋を遮断して、換気をしたとしても有害な物質は漏れ出て、他の場所へと到達します。これでは健康を守る有効な対策とは言えません」

     扉などで遮断して「分煙」にしたとしても、煙を完全に遮ることは難しく、効果はないという。しかし、店の経営者は全面的な禁煙にするのは不安だという。

     店主「(禁煙対策で多くの店は)客が減って売り上げが落ちてしまうとか、つぶれてしまうことにもならないか一番懸念しています。ここはたばこを一切吸わない、もしくは吸っても良いというのは、お店の判断でいいと思うんです」

     日本の飲食業界団体は経営に影響が出るとして、禁煙ではなく「分煙」を求めている。別の飲食店では、フロアを分けて禁煙席と喫煙席を設けているが―

     ベッチャー氏「受動喫煙の危険性が極めて高いといえます。レストランの別の場所で漏れた煙が別の場所に到達するからです。ここで働いている人などの健康被害も心配です」


    ■自民党内部から強い反発

     WHOの指摘を受け日本の厚労省が出した受動喫煙対策の強化案では、小中高校や医療施設は敷地内を全面禁煙とし、飲食店についても、一部を除き、原則、禁煙としている。しかし、この案に自民党内から強い反発が出て今、議論はストップしている。

     自民党たばこ議連・野田毅会長「禁煙よりは分煙。目指せ分煙先進国を合言葉に。(喫煙者・非喫煙者が)両立できるような形でいこうと」

     しかし、ベッチャー氏はアメリカなどの例をあげ「レストランなどで完全禁煙にしても、売り上げに影響はないという研究結果がある」と反論している。

     ベッチャー氏「日本の政府は、女性や子どもが受動喫煙が原因で、1年間で15000人も命を落としているということにもっと目をむけるべきです。健康被害を受ける人には何の罪もありません」

     政府は東京オリンピックまでに受動喫煙対策を強化したい考えだが、議論の行方は見通せない状況だ。

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    受動喫煙には「政治的な決断が必要」 飲食店の禁煙問題、専門家が訴える

    受動喫煙には「政治的な決断が必要」 飲食店の禁煙問題、専門家が訴える

    http://www.huffingtonpost.jp/2017/04/11/passive-smoking_n_15352534.html

    投稿日:

    2017年04月12日 17時01分 JST       

    ■日本のパッケージはインパクトが小さい

    ———まず、日本人の受動喫煙に対する認識はどうなっていますか。

    わが国では、受動喫煙との関係が確実な肺がんや心筋梗塞、脳卒中、乳幼児突然死症候群に限っても、年間に1万5000人が亡くなっていると推定されています。受動喫煙に対する認識について海外と比較すると、日本人ではその認識はとても低いです。2014年の調査では、海外の約20カ国と比べて日本人は1番下ぐらいに位置し、中国と同じぐらいのレベルでした。

    それは、日本が二つの政策をやってこなかったからです。一つはメディアキャンペーン。海外では電波媒体でたばこの害を知らせてきました。教育や所得レベルに関わらず、テレビを見る多くの人の理解が進みました。もう一つは、たばこのパッケージでの警告表示です。日本は細かい文字でたばこの健康影響が書いてあるだけで、インパクトが小さいことがわかっています。

    ———お洒落な外装だったりしますよね。

    ええ。でも海外では、多くの国がパッケージにたばこの害に警鐘を鳴らす画像を載せています。見たくない人でも無意識のうちにある程度まで認識が上がるんですが、日本はそれがほぼ皆無。一方で、たばこ会社がテレビなどのメディアで「分煙が受動喫煙防止の解決策である」とする内容のコマーシャルを流していて、喫煙者と非喫煙者がマナーに基づいて住み分けて共存できるんだという誤った理解をする人も多いです。

    国として知識を伝える方策ができていないので、結果として認識がとても低い。だから日本では世論もあまり盛り上がらないでしょ。禁煙運動を起こしているのは既存の禁煙の活動団体と保健・医療団体が中心で、一般市民が問題に気付いて憤慨してデモが起こることもないです。

    ———日本では禁煙デモは起こらないです。2020年の東京オリンピックを控え、まだ道半ばですね。

    たばこの真実が伝えられてないことに問題があるんです。財務省ががっちりと予算を押さえていて、メディアキャンペーンには予算が付いて来ませんでした。パッケージの警告表示も日本は財務省が所管する「たばこ事業法」で仕切れるようになっています。つまり、「たばこ規制法」を進める厚労省ではなく、売る側とかなり密接な財務省が警告表示を担当していることが根本的な問題です。これだけの先進国でたばこの政策は非常に遅れていて、世界の人からはかなり不思議に見えると思います。

    ———フランスやイタリアは、受動喫煙への対応が進んでいます。そんなイメージは日本にはあまり伝わっていないですね。

    喫煙室の設置を認めていますが設置基準がかなり厳しくて、実質的には禁煙にせざるを得ないのが現状です。

    フランスは自由を大事にする国のイメージがありましたが、意外と早く法規制を導入しました。諸外国の多くでは、国民の健康を守る観点からたばこ政策をエビデンス(科学的証拠)に基づいて実施しています。日本はそうではなく、自民党の「たばこ議員連盟」などが厚労省の健康増進法改正案に対して「全面的に禁煙にしたら小さな飲食店が潰れる」などと反対しており、議論がかみ合いません。

    ———飲食店が屋内禁煙にしたら、店が簡単に潰れるんでしょうか。

    たばこ産業から資金が提供された研究では売り上げが減ると結論付けた報告はあります。しかし、中立的な立場で実施された科学研究ではそのような結論は得られていません。たばこが吸えること以外に魅力がなく、喫煙場所にしかなっていなかったような店は確かに厳しいかもしれません。でも他に、例えば店主との会話が楽しめるとか、食べものでなくても何か魅力があればやっていけるはずなんです。

    さらに、そこで働いている労働者の健康が大切です。健康と、経済的利益のどちらを重視するのかという話です。私たちは受動喫煙の問題を「他者危害性」という言葉を使って伝えようとしているんですが、受動喫煙というと、匂いははた迷惑だけれども害が実感として湧きにくいですよね。特に日本の場合は認識が低いので、大変な健康問題だと知ってもらうために「他者危害」という言葉を使っています。「健康影響」だと、ちょっと緩いですから。

    ———最近はレストランでもコーヒーショップでも分煙スペースを設けているところが増えていますが、中村さんの考えとしては意味がないのでしょうか。

    いや、それは自由に吸えるよりはずっとマシです。空間だけ仕切るよりは、喫煙専用室をつくって外に排気するのですから、だいぶ曝露量を減らせますよ。ただし喫煙専用室を設けても、屋内に煙が漏れるし、従業員や掃除をする人はそこに立ち入らないといけないですよね。

    厚労省案について「規制が厳しい」という業界の反発の一方で、規制が十分でないという意見が出てくるのは十分に予想されました。でも初めから、1番理想のレベルを目指すと現状よりも進まなくなってしまいます。海外でも、アメリカでは州政府によって違いがあり、規制が進んでいる州でも段階的に進んできました。例えばバーは、最後に禁煙化されていきます。だから日本では、罰則を付けて、飲食店などで喫煙室を認めるという例外があっても現在よりも進んだことになるので、いいと思ったんです。全部禁煙というのは現状ではちょっと無理でしょう。

    default
    厚生労働科学研究費補助金「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」(研究代表者 片野田耕太) 厚生労働科学研究費補助金「受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究」(研究代表者 中村正和)

    ■たばこ関連産業との付き合いは選挙の票に繋がります

    ———厚労省案に反発している議員の中には、結構有力な人もいます。

    そうなんです、まだまだ自民党の上の世代で喫煙者が多いし、献金を含めてたばこ関連産業との関係がある有力議員さんもいるからです。たばこ関連産業との付き合いは選挙の票に繋がります。一方、たばこを吸わない人の票は読めないと言われます。選挙モードになると禁煙推進議連も波風が立たないように休眠状態に入ると聞いています。

    ———さっき触れた禁煙キャンペーンについては、マスコミはまだ満足な伝え方をしていないと感じているんですね。

    それに加えて、今は格差の問題が出ています。低所得の人ほど喫煙率が高いんです。特に生活保護を受けている人は喫煙率が圧倒的に高い。また学歴をみると中卒や高卒、さらに中退した人たちがかなり高いです。国内では喫煙者の割合は2割程度にまで下がって先進国並になってきたのですが、日本は高齢化が進んでるから、年齢調整をすると、先進国と比べてやっぱり喫煙率は高いままなんですよ。

    ———若い人は、まだ結構吸っている人が少なくないということですか。

    そうです。30代や40代の特に男性が多いんです。年齢調整をすると、たばこ対策が遅れている東ヨーロッパ並の数字となり、世界的に見てだいぶ喫煙率が高いグループに属するんです。

    ———たばこの値段は近年、徐々に上げられていますが、その影響は。

    値段は上がっているけれど、先進国の中では、1箱400~450円程度という価格は所得に比べると安いです。お隣の韓国は日本より高くなりました。2015年の年明けに約2倍の値上げをし、さらに飲食店を含めた受動喫煙防止の法規制を強め、禁煙治療も保険適用するとの3点セットを断行したんです。

    ———そうなんですか。韓国の状況は日本と変わらないのかと思っていました。

    確かに韓国は、日本と同じようにこれまでアジアでは経済的にリードしている国にしては対策が遅れ気味だったんです。台湾や香港、タイ、シンガポールなどと比べると、ちょっと規制が緩かった。でも、今では韓国が対策を進めたので、日本はアジアの中でも遅れが目立つようになってきています。

    ———税金の絡みがあるから財務省が抵抗しようとするんでしょうか。

    財務省は「たばこ事業法」を所管していますが、要はたばこが財源ですから、あまり急に税収が落ちると困ります。この事業法は、たばこ産業の健全な発展と財源の確保が狙いです。たばこの値上げとなると、税収が落ちるという話がいつも出ます。そんな金絡みの話となり、大切なのは健康か、それとも経済や財源なのかという議論になります。財務省の力が厚労省よりも強いので、結局押し切られてしまう。その結果、財務省もたばこ会社も納得できるのは、比較的小幅な値上げなんです。

    今、議論となっている厚労省の健康増進法改正案は、誰も決着させられない状態です。それでも基本は健康問題だから、最後は東京オリンピック・パラリンピックの開催も視野に入れて首相官邸で議論するんじゃないですか。落としどころについては、禁煙を飲食店や居酒屋まで含めるかどうかですけれど、バーは例外となるのでしょう。それとも、30平方メートル以下の小規模な店は居酒屋も含めて例外にすることになるのか。厚労省は、居酒屋については譲らない姿勢を示しています。

    ———全面禁煙にする業態の線引きですが、どこで線を引くのか難しいですよね。居酒屋でなくても、イタリアンでも寿司屋でも、レストランは夜はお酒を出しますから。

    居酒屋については、厚労省の考え通り、喫煙室の設置は認めても原則禁煙にすべきだと思います。ただしその時、お客さんの不便や健康被害の話になるでしょう。しかし守らなくてはいけないのは、実は一番長くそこに滞在している労働者なんです。それを考えると、罰則付きの法律ができるだけでも、かなり影響力が大きいでしょう。例外はいくつか認められても仕方ないと思ってるんですが、対策を進めるために罰則付きの法案が通ることが重要です。

    ———たばこを吸える店を例外的に認めればいいんじゃないかと言う人もいます。

    たばこ産業側は、そのように「ここは吸える。昼間は禁煙か喫煙か選択できるようにしましょう」って言うんだけど、それは客目線なんです。働いてる人のことを優先して考えた対策が必要です。

    いずれにせよポリティカルイシューそのもので、いろいろな利害が対立する問題です。健康面から考えたら間違いなくたばこを無くしたらいいわけです。しかし産業側は現に存在しており、たばこは合法的に売られているので、そこから社会としてどう足を洗うのか、それは簡単ではありません。政治的な決断をしないと解決しない問題です。

    default
    厚生労働科学研究費補助金「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」(研究代表者 片野田耕太)厚生労働科学研究費補助金「受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究」(研究代表者 中村正和)

    ■外で吸えばいいんです

    ———吸う人は、室内で吸えなくなると外に追い出されるため、みんなが外で吸うようになるとも主張します。

    外で吸えばいいんですよ。外で吸って室内に戻って来ればいいと思うんです。曝露量から見ると、はるかに室内で吸われる方が多いです。居酒屋みたいに喫煙者がたくさん集まるところで働く、たばこを吸わない従業員の曝露は健康を守る観点から看過できません。

    外なら、ちょっと違う道を歩くとかして個人的に避けられるじゃないですか。でも、居酒屋の従業員はその仕事を辞めないと避けられません。いい職場に移れたらいいけど、うまくいかないかもしれません。居酒屋では大学生や高校生もバイトをしています。バイト代を稼ぎたいから煙を我慢してしまいます。

    日本では高齢化が進み、介護費用や医療費をもっと節約しないといけない時代です。その時代に喫煙は今なお一番多くの人たちが死んでるトップの要因なんです。年間13万人が、受動喫煙者も入れると14万人が亡くなっています。認知症の発症にも喫煙の影響が明らかなので、たばこは要介護を引き起こす重要な要因でもあり、健康寿命を短くする最大の要因です。そう考えると、受動喫煙対策を少しだけ進めるのではなくて、たばこも大幅に値上げするなど、喫煙率を減らす効果的なたばこ対策を組み合わる「タバコミクス」をやった方がいいんですよ。

    本当に国民の健康や医療制度を守ろうと思ったら、たばこ対策を進めないといけないんです。脳卒中と受動喫煙の関連がはっきりしており、脳卒中になると寝たきりや要介護になってしまいます。吸っていないのに、そんな悲劇もありうるわけです。それを政治家はどう考えるんでしょうか。世論では、6〜7割の国民は厚労省の改正案などの規制強化に賛成しているのです。

    ———喫煙者は「たばこ吸う人の権利はどうなるんだ」とか「マイノリティをないがしろにするのか」と主張したりします。

    喫煙権は、他人の健康に危害を及ぼさない範囲で認められる権利で、「愚行権」といわれています。どうしても吸いたい人は場所をわきまえて吸えばいいけれど、「他者危害性」のあるものを排出していることを常に考えて吸うべきです。

    たばこの健康影響や対策についての基本的な考えや常識のようなものが、まだ国民の間で十分認識されていないのが現状です。だから、多くの人たちが利害や利得を含めてそれぞれ好きなこと言って、たばこ規制枠組み条約の締約国として本来あるべき方向に議論が収斂しないのだと思います。そこの状況を大きく変えていかなければなりませんが、そのためには政治的なリーダーシップが重要だと思います。

    masakazu nakamura
    取材に答える「地域医療振興協会」の中村正和・ヘルスプロモーション研究センター長=東京都千代田区

    中村正和(なかむら・まさかず) 自治医科大学卒業。大阪府に就職し、府立病院や府立成人病センターで臨床と疫学を研修、府立健康科学センター健康生活推進部長など務めた後、現職。専門は予防医学、公衆衛生学。研究テーマはたばこ対策と生活習慣病予防対策。たばこ規制に関する厚労科研研究班代表者。公職として厚生科学審議会専門委員(健康日本21<第二次>推進専門委員)、国民健康・栄養調査企画解析検討会構成員、日本公衆衛生学会たばこ対策専門委員会委員長。

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    悪質な禁煙違反に30万円以下過料 受動喫煙防止で厚労省案

    悪質な禁煙違反に30万円以下過料 受動喫煙防止で厚労省案

    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017030202000124.html

    2017年3月2日 朝刊

     厚生労働省は一日、東京五輪・パラリンピックに向けた受動喫煙防止の強化策として、飲食店を禁煙とし、違反した悪質な喫煙者には三十万円以下の過料を科すとした案を公表した。飲食店などの施設管理者には、喫煙の禁止場所を掲示する義務を課し、違反した管理者は五十万円以下の過料とする。

     健康増進法改正案に盛り込み、今国会への提出を目指しているが、たばこ産業や飲食業界の危機感を背景に自民党などから反対の声が上がっており調整は難航が予想される。

     厚労省案は、全国の居酒屋や焼き鳥屋などを含む飲食店は、たばこを吸うためだけの喫煙室の設置を認めた上で禁煙とする。食堂やラーメン店も同様に禁煙とし、家族連れや訪日観光客の利用に配慮する。

     禁止場所で喫煙する人には、まず施設管理者が制止した上で悪質な場合に自治体職員が対応。指導や中止命令を出し、違反者に過料を科す。

     未成年が利用しないバーやスナックなどでは、小規模店を例外として喫煙を認める。小規模の目安は「大人数で入れない」広さの三十平方メートル以下を想定している。

     学校や病院は敷地内禁煙、大学や官公庁は屋内禁煙で、喫煙室の設置は認めない。ただ、これらの施設にある既存の喫煙室については、検討した結果、一定の基準を満たせば五年間存続を認めることにした。

     飲食店のテラス席は屋外でも禁煙。旅館やホテル、老人福祉施設の個室、たばこが目的のシガーバーは喫煙を認める。

     電子たばこなどの煙が出ない新型たばこは、受動喫煙の影響が不明なため、規制の対象にするか検討を続ける。

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